ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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小説-短編

第1話「鳩時計」- 昨日の神話

全国にフランチャイズ展開する街でよく見掛ける喫茶店でアイスコーヒーをすすりながら、その人は唐突に時計の話をはじめた。 世の中にはたくさんの時計がある。そのすべての時計の役割というのは、基本的に言えば“時を刻むこと”だということはおそらく変わら…

バジリスク

Thine eyes, sweet lady, have infected mine. - William Shakespeare - 月曜日の朝、関節に走る激痛で目を覚ました私は、39度の熱を出していた。妻の運転する車で近所の内科に行き診察を受けると、インフルエンザだと診断され即効性のあるという吸引型の薬…

あなたの街にもあるかもしれない、黒い魚が建てた本当はコワい教会の話。

「1531年、エルパッハ近くの北海でひとりのメーアマンが捕らえられた。その男はローマ教会の司教のような姿をしていた。」 - ハインリッヒ・ハイネ - 妻と激しい喧嘩をした土曜日が明けて、ソファーで一夜を過ごした私が目を覚ましたのはもう正午をまわった…

雨と花の苦痛

恐怖や不安は唐突に心に芽を出し、凄まじいスピードで成長して、花を咲かせる。 些細な日常には恐怖や不安の種が、空中に舞う禍々しいダニのように溢れていて、なんてことのない微塵な切っ掛けで心の隙間に入り込んで、そのどこかにしがみ付く。 恐怖や不安…

空間の温度変化で、そこに何かがいることを知る。

風呂場から聞こえてきた奇妙な音の正体を確かめるためにビデオカメラを持って風呂場に向かうと、そこには寝室から消えたクマのぬいぐるみが横たわっていた。 関連動画:風呂場から聞こえる不可思議な音が、本当は恐いヤミゴラの入り口な可能性。 厳密に言え…

風呂場から聞こえる不可思議な音が、本当は恐いヤミゴラの入り口な可能性。

2016年11月2日、現在は午前中だが、居間での何かが焼けるような臭いが今日は漂っていない。けれど先ほどから、風呂場の方で何かバチバチという壁がきしむような音が何度か響いているのが耳に届いた。冬場の冷え切った風呂場の壁にシャワーで熱湯をかけると、…

クローゼットにはヒトオトシサマがいる、本当は恐い忘れられたフォークロア。

「ビデオカメラが居間のテーブルに置いてあるけど、まさか本当に撮影したの?」 「いや、まあ、ちょっと試しに・・・、昼間に原稿を届けにいったから、その時に録画にして、小一時間ほどだけね、きみへの話のネタにと思ってさ・・・。」 「へ〜、で、何か映…

パラノーマルなニオイの謎と、本当は恐いパラノイア臭の関係性。

数日前から部屋の中におかしな臭いが漂っていることに気が付く。 午前中は田畑などで野焼きをしている際のような何かが焼ける臭いがし、午後になると次第に魚の腐ったような臭いに変わり、さらには夜になると煙草の煙のような臭いが部屋の中を漂っている。 …

本当は恐い牛蛙の都市伝説と、古代の伝説を狩る者。

夏が終わった頃からだと記憶している。 家の台所に面した窓の外から、牛蛙の鳴くような声が毎夜聞こえてくる。 時間にすると大抵は真夜中の十二時を過ぎた頃から、おそらくは明け方までのずいぶん長い時間、「モーモー」だか「ウォーウォー」だかいう低い声…

10月31日のハロウィンに、私がひとりぽっちにならない理由。

「ねえパパ、今日ね、学校休んでもいい?」 「えっ、どうして、具合でも悪いの?」 「ちがうよ、だって、だってパパね、今日何の日か知ってる?」 「今日は、ハロウィンだね・・・。」 妻のミキが死んだのは、ちょうど二年前の10月31日、ハロウィンの日の夜…

それではみなさん、おやすみなさい。

時々思い出す情景がある。 エンターテイメント系のインターネット・ポータルを運営する会社に勤めていた頃のこと、毎日毎日仕事が忙し過ぎて、気が付けばいつも終電がなくなる時間、もう家には帰れないからと、仲のよい会社の同僚とその時間から毎晩のように…

黒い儀式と白い儀式は、公衆便所を夢幻の楽園へと誘う為の魔術。

土曜日の夕暮れ時に、ぼくは必ず近所の寂れた公園に赴く。 晴れた日でも雨の日でも大風の日でも、雪や雹が降り注ごうともとまではいかないが、それでも大雨くらいならば耐え忍んで、ちらりとのひと目だけでもその公園を眺めにゆく。 それは薄暗い雑木林の中…

ぼくは羊の群れの中で、狼が来たぞと嘘をつく。

ぼくは嘘をつく。 自分を防御するために嘘をつくし、誰かを楽しませるために嘘をつく。時々は自分の密かな欲求のためにつく嘘もある。 そういう嘘の息遣いには慣れているし、そういう嘘の味は案外好物でもある。そして、嘘も方便、自分を満たすためだけでは…

見知らぬ黒い神の塒と、百人が眠る淵底の話。

これは私が数年前に住んでいた、とある山間部の小さな集落での話である。 私はその町の地域活性のための臨時要員として、埋没した地域資源の発掘、という名目でその地の温泉宿で一年間働きながら、地域に残る風俗や史跡の調査と発掘、そしてそれを如何にして…

図鑑で読んだことあるし、知ってるし、っていう話。

近所でまたひとり、行方不明者が出たって、近所の交番に張り紙がしてあったって、夕飯の時に母さんが父さんとヒソヒソ話しているのを聞いた。 たぶん、雨の日にあの公園にいったんじゃないかと、母さんはそう言っているようだった。 ぼくが箸を止めて、じっ…

夏休みの自由研究は、本当はコワい百物語ごっこ。

2016年の夏が、唐突に終わったような気がした。 朝起きるとまだ空気は薄暗く、鳥は寝ぼけてあまり鳴かず、セミはもちろん死に絶えたようで、聞こえるのはカンタンやクツワムシやカネタタキのひとりふたりごとだけだった。 夏はいつだって終わるけれど、来年…

サルにも目撃されている、本当はコワい道化師のような男の話。

それは、もう何年も前のある土曜日のことだったと記憶している。 私が自宅の庭に面した八畳の部屋で胡座をかいて、珈琲をすすりながら文庫本の古い推理小説を読んでいると、妻のトモコが娘のミサキの手を引いて部屋に入ってきた。私はその気配に気付いて二人…

リアルとバーチャルの混沌、あるいは暗桃色に沈む怪物。

久しぶりに実家に帰省すると、いままでは一切そんなことはしなかった祖父が、玄関でぼくを出迎えてくれた。 「ああ、どうぞどうぞ、いらっしゃいませ。いま、家のものを呼びますから。」 異常なくらいに厳格で、まるで世界の悪とでも戦っているかのように壮…

もし怖い夢をみたら、誰かに話せば忘れるという魔法。

「ねえ、ユウ。」 ぼくの座っている椅子のすぐ横の床に仰向けに寝転んで、ナツミはぼくの足首を静かに握っていた。朝の六時を過ぎた世界が、夏の頃とは打って変わって、それが朝なのか夜なのかわからないような顔をして、くすんだ青か灰色の息を吐きながら立…

サルでもすぐ出来る、つおい霊能力者の見分け方。

小学生の頃、ずいぶんと登校拒否がちだったぼくには、学校の中で友だちと呼べるような存在はほぼゼロに等しかった。 ただ唯一ひとりだけ、近所に住むナツミとだけは親交があり、それは小学校にあがる前からの幼なじみだということもあったが、小学校に進学し…

真夜中の台所に、あのイヤな虫が出た時の対処法。

「ねえ浅野さん、先週、ネットで見たっていう神社の話、したじゃないですか。」 「ああ、言ってたね、なんかあの、絵馬が云々ってやつでしょ。」 「はいはい、それです、実は、ぼく週末に、あそこ行ってきたんですよっ!」 職場の、特に後輩というわけではな…

本当はオゾい、かくれんぼってしたことありますか?

閉めきった窓の外からでもなお、リリリリリという虫の声が部屋の中まで、まるで部屋の中の本棚の脇や冷蔵庫の陰からでも囁いているように、鮮明にぼくの耳の中に響いてくる。もしかすると、それは外からではなくやはり、どこかの隙間から部屋の中にこっそり…

二度も三度も通りたくなる、ありふれたトンネルの話。

久しく連絡を取っていなかった田崎から「いろいろなことに疲れてしまった。」という内容のメールが送られてきたのは、まだ緩やかな暑さの残る九月のはじめだった。 私がそのメールに対して、「久しぶりに山でも歩きにいかないか。」と返信をすると、すぐにい…

夢の中に描かれる未来と、血筋に忍び寄るサルのような人形の話。

毎夜毎夜、あの夢に出てくる同じ場所はどこなのかということを、朝食を終えたばかりのテーブルに肘をついてしばらく考えてみる。 娘のチエが、テーブルの上の茶碗や汁椀や皿を、妻のアヤカが洗い物をしている流し台へと、少しずつ少しずつ運んでいっている。…

人間が理解出来ることと出来ないこと、あるいは望む夢幻と望まない現実の話。

「まずねえ、細かいことをどうこう説明する前にだよ、まず一番目の話だけれど、私が何をしにここまでわざわざ来たのかを言うよ、いいかい、あの裏山の穴を、閉じにいく。たったそれだけのことだよ、シンプルでいいだろ。そしてねえ、そんなことはセコさん、…

失われた六年間の記憶と、あとに残された本当はコワい足跡の話。

ぼくがかつて通っていた山間部にある小学校は、当時でも全校生徒数がわずか三十人足らずの、全国的にみてもごく小規模なものだった。 その小学校は、当時はずいぶんと年季の入った古い木造の校舎で、ぼくの父の頃から、なんだったら祖父の頃から、すでにその…

イヌも人間も食べちゃダメ、本当にあったコワいつまみ食いの話。

毎日の日課である犬の散歩の途中、近所の神社の裏手にある鎮守の森と呼ばれている場所の遊歩道を歩いていると、いつも通りかかる一本の大きなスダジイの根元の少し上の窪んで穴のようになった辺りの奥に、何か真っ赤な塊がひっそりと隠れるようにして張り付…

誰も知らないインターネットの特別な使い方

「じゃあ、ユウ、もう行くけど、何か帰りに買ってくるものあるかな?」 「あっ・・・、いってらっしゃい、えっと、買ってくるものは・・・、えっとねえ。」 「斧とかそういう重いものは、持てないから無理。」 「えっ、斧なんかいりませんよ・・・、いや、お…

ぼくがスーパーマーケットのアルバイトを一ヶ月で辞めた理由

「・・・というのが、まあ簡単な就業規則です。で〜、あとはね、具体的な仕事のやり方は、その場その場でね、覚えてもらいますから、まあ難しいことはあまりないし、大丈夫でしょう。」 ぼくがその大型スーパーマーケットのホームインテリア売り場でアルバイ…

普遍能力者の日記、あるいは世界の夢幻と現実。

私は数年前に、臨時に引き受けた仕事の都合で、人口約四百人ほどの山間の小さな町に住んでいた。 人口四百人といえば、日本の中でも過疎と呼ばれる部類に入るレベルだと思うのだが、実際に住んでみるとおそらくは四百人という数でさえ多く見積もられているよ…