ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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小説-階段の怪談

第十六話『魔術』- 午前二時に何かが降りてくる、階段の怪談 -

この話は、午前二時になると何かが降りてくる、どこにでもある普通の階段にまつわる怪談の十六話目です。前の話を読みたい方は、以下のリンクから、どうぞご自由に。 ユカさんは、ぼくとダイキさんの顔を交互に何度か見て、それから目を瞑ってソファーの背も…

第十五話『占いババ』- 午前二時の、ありふれた階段の怪談 -

この話は、都内某所にある、ありふれた階段にまつわる怪談の十五話目です。前の話を読みたい方は、以下のリンクから、どうぞご自由に。 小野さんという女性に電話をかけてから十五分ほど過ぎた頃だろうか、彼女が大きく手を振りながらぼくたちの座る席に駆け…

第十四話『カマキリの腕』- 午前二時の、誰かがいる階段の怪談 -

この話は、いつかどこかの真夜中の、普通の階段にまつわる怪談の十四話目です。前の話を読みたい方は、以下のリンクから、どうぞご自由に。 大通り沿いの目についたガストに入ったぼくたちは、クーラーの効いた店内のソファーに、三者三様にため息をつきなが…

第十三話『石神井公園の鬼』- 午前二時の、誰もいない階段の怪談 -

この話はおそらく、真夜中の階段にまつわる怪談の十三話目くらいです。前の話を読みたい方は、以下のリンクから御覧ください。 占い師の老婆は、その日姿を現さなかった。 ユカさんの話だと、その老婆は石神井公園の一角に、ボロボロの小さな木製の丸テーブ…

第十二話『桃と林檎』- 午前0時の、もっと誰かに読んで欲しい、本当は怖い階段の怪談 -

まだ前の話を読んでいない方、この話には前があります。まあ、もっと誰かに読んで欲しいんですが、普通の階段の話なんですよね。 「川ちゃん、今日この後予定はあんの?」 ユカさんは三階の事務所に用事があるからといって二階フロアの奥にある階段を昇って…

第十一話『二匹の猫』- 午前0時の、猫たちには見えている、階段の怪談 -

まだ前の話を読んでいない方、この話には前があります。まあ、猫たちにしか見えていない、普通の階段の話ですがね。 ユカさんは、テーブルの上に置かれたグラスの烏龍茶を、ストローを使ってすごい勢いで一気に飲み干した。そして「は〜っ。」と言って大きな…

第十話『魔のもの』- 午前0時の、本当は誰かが読んでいるらしい、普通の階段の怪談 -

まだ前の話を読んでいない方、この話には前があります。まあ、誰かしらが時々読んでいる程度の、普通の階段の話ですがね。 ダイキさんが「飲み物持ってくるわ、川ちゃん何がいい?」と言ったので、ぼくは「じゃあ、ジンジャーエールでお願いします。」とこた…

第九話『事情聴取』- 午前0時の、本当は読まれていない、普通の階段の怪談 -

まだ前の話を読んでいない方、この話には前があります。まあ、誰にも読まれていませんし、普通の階段の話ですがね。 「川田くん、昨日の今日でほんとごめんね・・・。で、早速で悪いけど、二階の個室でちょっと話そう。」 カラオケボックスの営業は、午後一…

第八話『記憶の歪』- 午前0時の、本当は怖いけれど誰も読まない、普通の階段の怪談 -

まだ前の話を読んでいない方、この話には前があります。まあ、特に何の変哲もない、しかし本当は怖い、普通の階段の話ですがね。 ダイキさんが玄関のチャイムを鳴らしたのは、その二十分ほど後のことだった。 「わりいな、休みの日なのに・・・。なんかちょ…

第七話『闇に飲み込まれる人々』- 午前0時の、誰も降りてこない、階段の怪談 -

まだ前の話をお読みいただいていない方、この話には前があります。まあ、ほとんど誰も昇り降りしないような、普通の階段の話ですがね。 バナナの最後の欠片を口に含んだまま、ぼくはすぐにバックパックを背負い、ダイキさんとユカさんの家を後にする。 ポケ…

第六話『ピカチュウ』- 午後0時の、ほとんど誰も読んでいない、普通の階段の怪談 -

まだ前の話をお読みいただいていない方、この話には前があります。まあ、ほとんど誰にも読まれていないような、普通の階段の話ですがね。 ビールのアルコールで神経の高ぶりが緩んだのか、急に激しい睡魔が襲ってきた。 「ダイキさん、すいません、ぼくもう…

第五話『ゼロの部屋』- 午前0時の、誰も読まない、階段の怪談 -

まだ前の話をお読みいただいていない方、この話には前があります。 ぼくはその日、ダイキさんとユカさんが暮らす二階建ての古い借家に泊まることになった。 土曜日は店にとっては週の中でも一番の稼ぎ時であり、つまりは一番の忙しさでもある。だからいつも…

第四話『窓から覗く影』- 午前0時の、誰も読まないであろう、普通の階段の怪談 -

まだ前の話をお読みいただいていない方、この話には前があります。いまは午前10時、陽も高々と上がっている時間ですから、もうすでにお読みのことと思いますがね。 店の入口の前の道路には、ユカさんのお父さんが所有している黒のワンボックスカーが横付けし…

午後0時なので、誰かしら読むであろう、本当は怖い普通の階段の怪談。

まだ前の話をお読みいただいていない方、この話には前があります。まあ、いまは午後0時、昼の日中ですから、もうすでにお読みのことと思いますがね。 店長の名前は伊坂ユカ、ご亭主の名前は伊坂ダイキ、二人ともぼくより少し年上で、ユカさんが働くこのカラ…

午前0時の鐘がなり、誰も読むはずがないけれど、本当は怖い階段の怪談、草木も眠る続きへようこそ。

まだ前の話をお読みいただいていない方、この話には前があります。まあ、もう午前0時ですから、草木も眠りますし、誰も読んでいるはずがありません。 「電気・・・スイッチ・・・付け直してみたら、どうかな・・・。一回消して、また付け直してみたら・・・…

午前0時になったので、誰も読まないのは承知だが、本当は怖い階段の怪談、その続きが愛おしい方へ。

まだ前の話をお読みいただいていない方、この話には前があります。まあ、もう午前0時ですから、誰も読んでなどいないはずですがね。 部屋の天井の蛍光灯は、パチ、パチパチパチ、パチ、パチパチ、パ、チ・・・、という不規則な音を奏でながら、一本が三十秒…

午前0時なので、誰も読まないであろう、本当は怖い普通の階段の怪談。

大学生の頃に、個人経営のカラオケボックスでアルバイトをしていた。 三階建の小さなビルを利用した店で、一階に受付と厨房、そして団体用の広い個室が一室、二階に中型と小型の個室合わせて八室の、合計九室しかない小規模のカラオケボックスだった。ちなみ…