ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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妖怪

フランス人が見つめる、妖怪の島としての日本。 - 『YOKAINOSHIMA』 -

昨今の日本人の大半って、自国の伝統的な文化についてずいぶん無知で無関心で無頓着だと感じる。まあぼくだって例外ではないかもしれないけれど・・・。 例えば宗教でも、単なるイベントごとの際の形式でしか扱わない人は多いと思う。結婚式は神社やキリスト…

東京と大阪で『大妖怪展』開催、という風の噂を聞く

かつて東京に住んでいた頃、いつか鳥取県に行って『境港妖怪検定』に挑戦するぞ!と一人静かに豪語していて、何の因果かいまは境港が目と鼻の先にある場所で暮らしているのだが、いまだに妖怪検定には挑戦していない。 でも、幼い頃から妖怪が大の好物である…

マワラ(馬笑) - 『新日本妖怪事典』 -

島根県松江市の松江城内には馬洗池(まわらいけ)という場所がある。 昔、雲州松江藩の時代、馬の体をこの池で洗ったことに由来する名前だと言われるが、この場所にまつわる怪異の話も残っている。 ある時、城内警護役の男が夜半の見回りの最中、背後にふと…

佐比売山黒雲坊(サヒメヤマコクウンボウ) - 『新日本妖怪事典』 -

石見国と出雲国の境に聳える三瓶山には、「佐比売山黒雲坊(サヒメヤマコクウンボウ)」という妖怪がいる。 天候のすぐれない日、三瓶山の頂あたりに山を覆うような巨大な人型の影が現れて山を叩き地を鳴らすという怪異で、この姿を見たものは三日三晩高熱を…

ワンブチヌシ(蜿淵主) - 『新日本妖怪事典』 -

出雲地方の山中に深い淵があって、そこには「ワンブチヌシ(蜿淵主)」というものがいる。 あるとき、ひとりの農民が馬を引いて淵の前を通りかかった時、淵の中に腰まで浸かった老婆がこちらを向いて「助けてくれ助けてくれ」と言って手をこすり合わせて拝ん…

隈月(クマツキ) - 『新日本妖怪事典』 -

熊は蝦夷などでは神として崇められているが、地域によっては祟ったり人に憑くことがあり、それを「隈月(クマツキ)」とか「熊月(クマツキ)」、あるいは「熊憑き」と言う。 中国、四国地方は全国的にも憑物の多い地域で、様々な動物が人に憑依する。 憑物…

ヤマケムリ(山烟) - 『新日本妖怪事典』 -

雲州松江藩主が六代目松平宗衍、そして七代目松平治郷(不昧)の頃、市中に深い霧が立ち込める日には「ヤマケムリ(山烟)」という妖怪が出たという。 これは「テンジョウタケ(天上茸)」と呼ばれる茸の霊が集まったもので、霧に乗じて胞子を振り撒き、仲間…

アカヤツデ(赤八手)【其の弐】 - 『新日本妖怪事典』 -

出雲松江藩主が松平直政の頃、松江城を取り囲む内堀や外堀に「アカヤツデ(赤八手)」と呼ばれる蛸のような化け物が出たという。 ある時、松江藩の御鷹方を勤めていた加藤某というものが、まだ夜も明け切らぬ頃に霧の舞う内堀沿いを城に向かって歩いていると…

アカヤツデ(赤八手)【其の壱】 - 『新日本妖怪事典』 -

昔、出雲国と伯耆国の二つの大きな入り海(現在の中海と宍道湖)には「アカヤツデ」という妖怪が出たと言われている。 霧の出た朝に舟を出して網を打っていると、向こうの霧の中からぼんやりとした大きな影がこちらに近付いてくる。他の者が舟を走らせている…

誰も知らない新たな妖怪を求めて、「新日本妖怪事典」はじめます。 - 『新日本妖怪事典』 -

ぼくは、妖怪が好きである。 なんで妖怪が好きになったんだろうと考えると、もちろん幼いころに読んだ水木しげるの本に大いに影響を受けた部分はある。 つい先日のことだが、水木しげる大先生はこの世を去ってしまった。誰かが死んでも、それが例えば家族だ…

はてなブログの「絵を描く」機能を使って妖怪画を描いてみた - 「牛鬼」 -

はてなブログの編集サイドバーに「絵を描く」という機能があることには薄々感づいていたのだけれど、いままで一度も使ったことがなかった。 というわけで、満を持して使ってみることにした。 さて、何を描こうかと思ったのだが、やはり妖怪画であろう。 現在…

謎の妖怪「サメ」を追え! 島根県隠岐郡都万村に伝わる動物怪異考 -「サメ」- 第四回

島根県隠岐郡都万村に伝わるサメという謎の妖怪の考察、第四回である。 ※妖怪としてのサメは、魚類やその他の語句としてのサメと区別して赤字で「サメ」と表記する。 回を増しているので、ここで改めてこの『謎の妖怪「サメ」を追え! 島根県隠岐郡都万村に…

謎の妖怪「サメ」を追え! 島根県隠岐郡都万村に伝わる動物怪異考 -「サメ」- 第三回

島根県隠岐郡都万村に伝わるサメという謎の妖怪の考察、第三回である。 ※妖怪としてのサメは、魚類やその他の語句としてのサメと区別して赤字で「サメ」と表記する。 これまでの話は、まあ読まなくてもいいかもしれないが、暇と時間を持て余している方のため…

謎の妖怪「サメ」を追え! 島根県隠岐郡都万村に伝わる動物怪異考 -「サメ」- 第二回

前回から引き続き、島根県隠岐郡の都万村に伝わる「サメ」と呼ばれる謎の妖怪について考察してゆきたいと思う。 ※以降、妖怪としてのサメは魚類のサメと区別して赤字で「サメ」と表記する。 ちなみに前回をお読みでない方は、以下にその道程を標すので、お暇…

謎の妖怪「サメ」を追え! 島根県隠岐郡都万村に伝わる動物怪異考 -「サメ」- 第一回

千葉幹夫編纂の『全国妖怪事典』、島根県の妖怪の項目には「サメ」という動物の怪異のことが記されている。 全国妖怪事典 (講談社学術文庫) 作者: 千葉幹夫 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2014/12/11 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (2件) を見る …

中国地方の言語体系から見る妖怪名称と重言 チゲ鍋的鰐鮫考 -「影鰐」(かげわに)-

中国地方の山陰において、特に石見地方や出雲地方では昔、鮫(サメ)の大型種である「鱶(フカ)」や「撞木鮫(シュモクザメ)」のことを「ワニ」と呼んだという。 千葉幹夫編纂の『全国妖怪事典』にも、『民俗語彙』からの出典として、石見国邇摩郡温泉津町…

みるみるうちに背が伸びる!至高の妖怪体験を追う -「次第高」(しだいだか)-

山は妖怪や怪異の宝庫である。 ぼくはかつて埼玉県の秩父市にある武甲山で妖怪に出会し、危うく遭難しかけたことがある。 その時に出会したのはおそらくは「餓鬼憑き」(がきつき)、西日本で言うところの「ヒダル神」(ひだるがみ)であったと確信している…

島根県の海で遊ぶ際に知っておきたい三つの怪異 -「濡れ女」(ぬれおんな)-

ぼくの故郷には海も山もない。 実家のある場所から遥か彼方、県境まで行けばかろうじて山々が連なるが、日常的な暮らしの中で望めるのは、青白い影のように浮かび上がる手も足も届かない山の姿だけだった。 まだ若かりし頃、山は見えるのだから自転車を使え…

カッコつけて、牛鬼岩で魚釣りをしている男がいたんですよ〜。な~にぃ~!?やっちまったな!! -「牛鬼」(うしおに、ぎゅうき)-

千葉幹夫編纂の『全国妖怪事典』を軸として、今回から勝手に始める備忘録的な妖怪話、さて、まずは現在のぼくに縁の深い土地、島根県にまつわる妖怪の話からはじめてゆこう。 島根県には、もちろん妖怪に関する伝承が数多く存在するが、先ず頭に思い浮かぶも…

本書は柳田國男以来の妖怪研究の伝統を踏まえた、本格的な、また正統的な最初の妖怪事典である。 -『全国妖怪事典』(講談社学術文庫)-

先日、我が親愛なる連れが、使用期限が間近に迫る何がしかの書籍ポイントが残っているから何か欲しい本はないかと言うので、いろいろと悩んだ挙句に一冊の本を選び出して、購入してもらった。 千葉幹夫の編による「全国妖怪辞典」(講談社学術文庫)なるもの…

小池婆の怪(其ノ参)- 松江百景異聞 -

「松江百景異聞 - 小池婆の怪 -」も今回で其ノ参を迎える。 これまでの話、其ノ壱と其ノ弐を未読の方は、以下にその道程を標すので、お暇があれば読んでいただけると幸いである。 さて、これまでに二つのタイプの小池婆の話、「小池婆タイプA - 草鞋取型 -」…

小池婆の怪(其ノ弐)- 松江百景異聞 -

話を再開して「松江百景異聞 - 小池婆の怪 - 其ノ弐」に移りたいと思う。 「小池婆タイプA」の話を繰り広げた初回の其ノ壱をまだお読みでない方は、ぜひ其ノ壱からお読みいただくことをオススメするので、以下にその道程を標す。 前回の「小池婆タイプA」の…

小池婆の怪 (其ノ壱)- 松江百景異聞 -

島根県の松江市に言い伝わるこんな話をご存知だろうか。 昔、雲州松江の「小池」という武家に仕える草鞋取の男が、正月に一日だけ暇をもらい古志原の実家に帰った時の話。 翌日が主人の登城日にあたるため、それに合わせて帰らねばならぬと言って、まだ夜も…

河童ご飯

近所にある川縁でため息をついてしかめっ面をしていたら、 川からカッパが上がってきて、 へんてこな水草がたくさん絡み付いた木の枝で頭をコツンと叩かれた。 「おいおまえ、さいきん朝ご飯はたべんのか?」 とカッパは言った。 そういえばここ数ヶ月、 自…

塗仏

きょうの妖怪画、「塗仏」である。 鳥山石燕の「画図百鬼夜行」にも描かれていたり、京極夏彦の作品のタイトルにもなっている非常に有名な妖怪だが、どの文献にも詳しい記述が残っていないらしく謎の多い妖怪でもある。ぼくはこのビジュアルがとても好きなの…

水虎

最近取り憑かれたように河童のことを調べているので、久しぶりに妖怪画を描いてみる。今日の妖怪画は「水虎」。 「水虎十二品之図」という江戸後期の資料の中に、亀のように頭を引っ込める水虎の図が描かれている。 また、鳥山石燕は水虎のことを以下のよう…

ぼくと、河虎と、ラフカディオ。

「ぼくと、むじなと、ラフカディオ。」の扉絵、河虎といっしょバージョンを作ってみたのである。 絵巻物的に説明すると、左端がぼくで、真中が河虎で、右端がラフカディオである。 天狗といっしょバージョンも作りたいと願う、今日このごろである。 // 河童…

阿太加夜神社(あだかやじんじゃ)の河童の詫び証文【後編】

平濱八幡宮武内神社の宮司さんに別れを告げ石段を降りようとすると、背後の本殿からは祝詞を唱える先ほどの宮司さんの声がこだましていた。 というわけで、その祝詞に見送られながら、ぼくは一路「阿太加夜神社」に向かうべく、教えていただいたように田んぼ…

阿太加夜神社(あだかやじんじゃ)の河童の詫び証文【中編】

「ちょっとお尋ねしたいことがあるんですが。」 と、ぼくが宮司さんに切り出すと、「はいはい、どうぞ。」と言って快く話を聞いてくれた。 ぼくがここに来た理由、阿太加夜神社の河童伝承のこと、そしてその詫び証文がこの神社に預けられているとの話につい…

阿太加夜神社(あだかやじんじゃ)の河童の詫び証文【前編】

国立歴史民俗博物館の編纂している「河童とはなにか」という本によれば、数は多くないのだが島根県内にも河童のような生き物の伝承や遺物の話はいくつか存在している。 河童とはなにか (歴博フォーラム民俗展示の新構築) 作者: 国立歴史民俗博物館,常光徹 出…