ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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狼男やら魔女やらヴァンパイアが暴れまくるロシア産吸血鬼映画、エミリス・ヴェリヴィス監督の『Ночные стражи』。

吸血動物と呼ばれる奴らがいる。

 

英語では、hematophagy、haematophagy、hematophagiaなどと言うそうだが、読んで字の如く人間や動物の血液を吸う動物のことである。

 

この中には、生きるための糧として主に血液のみを摂取するものと、主食は血液ではないが産卵の際にだけ卵巣を発達させるために血液を吸うものの2種類がいるらしい。

 

吸血動物と言われると一番にイメージするのはコウモリであるが、ほとんどのコウモリは昆虫や果物あるいは花の蜜を主食としており血を吸うことはない。ただし血を吸うコウモリもいて、現在世界に3種確認されているらしいが、その内の2種は鳥類の血液を吸うため、哺乳類から血を吸う種は中南米に生息する“チスイコウモリ”だけだそうである。名前からしても完全に血を吸うコウモリだが、これが俗にいう“吸血蝙蝠”というわけである。

 

コウモリと言えば昨今では吸血鬼に結び付けられるケースが多く、映画などでも吸血鬼がコウモリに変身するシーンをよく見かける。しかしこのチスイコウモリの種は吸血鬼のルーツだと言われる東ヨーロッパには生息しないようなので、厳密には直接的な関係はない。チスイコウモリと吸血鬼は単に“血を吸う”という部分だけにおける関係であり、吸血鬼の化身としてのコウモリ像が一般化したのは、近代以降の文学作品や映画などによる影響が強く、民俗的なものではないようである。

 

コウモリは日本でも日常的に、例えば夏の夕方などに見掛けることがあるが、あれはチスイコウモリではないのでコウモリに血を吸われた経験のある方は少ないだろうと思うが、日本でもごくごく身近に吸血動物はたくさんいる。例えば蚊とかアブとかブユとか、ノミとかダニとかヒルとかね。ヒルに関しては日常生活で血を吸われる部類のものではないが、その他は圧倒的に日常生活で人間の血を求めて動き回っている。ちなみにこの中でも蚊などは、基本的な糧は果汁や花の蜜であり、メスのみが産卵のために吸血行為を行うようである。まあ蚊の大群に襲われた経験のある方は多いと思うが、たとえ産卵のためでも血を吸われて、さらには例の痒い液を注入された日には堪ったものではない。あの痒い液さえなかったらまだマシだと思うのだが、おそらくあれは血液の凝固を阻止する液体なのであろう。

 

まあいずれにせよその目的は様々だとしても、吸血動物は圧倒的に日常生活の中に存在する。

 

さて、ここで少し話がブッ飛ぶが、人間や哺乳類の血を吸う生物が、まあ日常的なものだとそのほとんどが虫だが、存在するということは、吸血鬼だってどこかにいるんじゃないのかと勝手に思っている。哺乳類の中には肉食性のものがいて、あれは血だけを吸い取るわけではないが肉と一緒に血も摂取しているはずである。だから、もしかしたら例えば未知のサルの種の中に独自の進化を遂げたチスイサルみたいなものがいて、そのさらに進化系としての吸血人間みたいなものがいるとすれば、それは昨今の怪奇的存在である吸血鬼あるいはヴァンパイアに近いものなのではないのだろうか。

 

もっとも東ヨーロッパにルーツを持つ吸血鬼、いわゆるヴァンパイアと言うものに関しては現在一般的な大衆文化として知られている吸血鬼、例えばブラム・ストーカーのドラキュラなどとは若干イメージの違うものであり、ものによっては霊的な存在でもあるのだが、ここでは話が長くなるためまた別の機会に。

 

というわけで道草の無駄話が過ぎたが、今回取り上げるのはもちろん吸血鬼映画でありヴァンパイア映画の話題。

 

ロシアの映画監督エミリス・ヴェリヴィス(Emilis Velyvis、Эмилис Веливис)によるロシア産ヴァンパイア映画『Ночные стражи』(Nochnye strazhi)である。

 

Ночные стражи

image source : Nochnye strazhi

 

ちなみに英題は、『Guardians of the Night』から『The Last Vampire Princess』に変更されたようであるが、最初のほうが原題に忠実でかっこいいのになあ。

 

さて物語だが、オフィシャルサイトのあらすじはロシア語で書かれているためあまりよくわからないのだが・・・、おそらくはヨーロッパの吸血鬼たちの権力闘争と、その吸血鬼たちへの国家的対策組織とのイザコザがありつつ、そこに宅配便業者で働く主人公のパシャという若者が巻き込まれるという感じの話かな、たぶん。

 

この手のダークファンタジー的な要素の強いロシア映画で記憶にあるのは、ティムール・ベクマンベトフ(Timur Nuruakhitovich Bekmambetov)監督の『ナイト・ウォッチ』(NOCHNOI DOZOR Night Watch)とか『デイ・ウォッチ』(Day Watch)だが、近年のロシア映画ではこういう分野の作品が大いにシェアを広げているのではなかろうかと思う。

 

というわけで、その予告編が公開されているので、興味のある方はぜひご覧いただきたい。なかなかグッとくる予告編である。最近のロシア映画は数十年前とはずいぶん変わったんだね。

 

 

 

 

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