ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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きのこ-松江城マッシュルームマップ

ニガクリタケ(Hypholoma fasciculare)- 松江城マッシュルームマップ

先日、気晴らしに山歩きに行った際のことだが、山道のいたるところでトングを持った紳士淑女が数グループ、なにやら下を向いて歩きながら何かを物色している姿が目に映った。 「なにか探しているんですか?」 とぼくがある女性二人組にたずねてみると、栗を…

モエギビョウタケ(Bisporella sulfurina)- 松江城マッシュルームマップ

きのこの和名の中には、色名を“頭”に掲げているものがある。 きのこの和名の命名基準に精通しているわけではないので詳しいことは知らないが、つまり基本のノーマルタイプのきのこの種類があり、その同種のきのこで色違いのものがいる場合には、頭にその種が…

スギヒラタケ(Pleurocybella porrigens)- 松江城マッシュルームマップ -

きのこの中には、つい最近まで食用のきのこだと言われていたが実は危険性の高い毒きのこであることがわかったものや、そもそも毒きのこだとわかっていたが、地域によっては昔から当たり前のように食用とされているものなどがある。 東北のような寒さの厳しい…

ダイダイガサ(Cyptotrama asprata)- 松江城マッシュルームマップ -

小学生の頃、運動会の組み分けは「色」であった。 赤組とか青組とか緑組とか、まあいわゆる王道十二色の中から色が選抜され、その色が組のシンボルカラーとされていた。 関東圏の団塊ジュニアのぼくの世代は生徒の人数もずいぶん多かったから、確か六色か七…

ツクツクボウシタケ(Isaria cicadae)- 松江城マッシュルームマップ -

最近すっかり秋めいてしまって、いっきに空気感が変わった。もう何十年も生きていて、季節の変わり目など十分に知っているはずであろうに、なぜか季節の変わり目というものには驚きを隠せない。 「えっ、昨日まで夏だったのに、今日いきなり寒くなったんじゃ…

マユハキタケ(Trichocoma paradoxa)- 松江城マッシュルームマップ -

きのこを探しはじめた当初から、雑木林のとある切り株の上に気になる物体があった。 いつ行ってもその切り株の上には、なんだか枯れてしまった花のようなものが散りばめられている。 梅雨がはじまって、そして明けて、夏がやって来て、猛暑の八月を過ぎて、…

キクバナイグチ(Boletellus floriformis)- 松江城マッシュルームマップ -

あまりまじまじと見ることは少ないのだが、日本の硬貨にはいろいろな植物がデザインとして組み込まれている。 五百円硬貨には「桐」と「竹」と「橘」、百円硬貨には「桜」、十円硬貨には「常盤木」、一円硬貨には「若木」、五円硬貨には「稲穂」と「双葉」、…

ハナビラタケ(Sparassis crispa)- 松江城マッシュルームマップ -

きのこを探すようになってから脳が「きのこ脳」になっているらしく、視覚的に風景の中で捉えた物体の形状を、よりきのこ贔屓に分析してくれるようになった。 きのこの形状は一般的に知られている傘と柄を持つ典型的なものばかりではないのは言うまでもないが…

アカハツ(Lactarius akahatsu)- 松江城マッシュルームマップ -

「初物」という言葉がある。 その季節に初めて出来た野菜や果物、あるいはとれた魚などに用いられる言葉で、いわゆる「旬」のものである。 今で言えば柿や栗、イチジクや葡萄や梨など、やはり優雅で目立つ果実類があげられがちだが、皆さんご存知、秋といえ…

チシオタケ(Mycena haematopus)- 松江城マッシュルームマップ -

子どもの頃は、いまでは考えられないくらい毎日毎日飽きずによく怪我をした。 大人になるといろんな行動の前にまずよく考えてから動き出すのだが、子どもの頃はその考えるという部分が欠け落ちていたりするので、突発的な行動の先に怪我という戒めが待ってい…

オニイグチモドキ(Strobilomyces confusus)- 松江城マッシュルームマップ -

きのこには「モドキ」とか「ダマシ」とか「ニセ」とかいった言葉がついた和名を持つものが少なくない。 ようするに「本物」に対しての「偽物」という立場におかれているきのこたちである。 その偽物判定がいったいどういう基準でなされているのかは、きのこ…

キツネノロウソク(Mutinus caninus)- 松江城マッシュルームマップ -

昨今では、日常的に生活の中でロウソクを使うことなどめったにない人が大半を占めるのではないだろうか。 ぼく自身も日頃ロウソクに火を点すことなどここしばらくまったくない。 例えばパーティーなどの時には何かとロウソクを多用するし、お盆の送り迎えの…

ビョウタケ(Bisporella citrina)- 松江城マッシュルームマップ -

小学生の頃、クラスメイトの椅子に画鋲を置くというトンデモナイいたずらが流行ったことがある。 いや、今思えば流行っていたのは悪ガキグループの中だけで、その被害を食らったクラスのお友だちは大いに迷惑していたことだろう。そして、残念ながらぼくは悪…

カニノツメ(Linderia bicolumnata)- 松江城マッシュルームマップ -

蟹鍋だったり蟹の味噌汁だったり、蟹がまるごと入っているような料理ってものが、どうもあまり好きにはなれない。 確かに出汁もよく出て味も美味しいし見た目も豪華ではある。甲羅を開けたら中に蟹味噌なんか入っていたら、更に高級感も増す。 それでもあま…

ムラサキホコリ(Stemonitis fusca)- 松江城マッシュルームマップ -

「粘菌」という言葉を時々耳にする。 ぼくにとっては、南方熊楠と関連付けてなんとなくの概要だけ理解している程度の言葉で、実際にどんなものなのか見たことはなかったのだが、きのこを探すようになってから、枯れ木などに蠢く粘菌を時折目にするようになっ…

アカイボカサタケ(Rhodophyllus quadratus)- 松江城マッシュルームマップ -

ぼくの持病のひとつに「蒐集癖」がある。 子どもの頃から何かと蒐集したくなる癖を持っていて、まあ子どもの頃は昆虫だったり貝殻だったり、近所の縫製工場の裏に大量に捨てられていたいろんなデザインのボタンだったりした。 ビックリマンチョコのシールも…

シロオニタケ(Amanita virgineoides)- 松江城マッシュルームマップ -

日本の昔話には「鬼」が登場するものがいくつかある。 桃太郎には悪者としての鬼が登場するし、こぶとり爺さんにはちょっとコミカルな鬼が登場する。たしか一寸法師にも鬼が出てきたと思う。 大抵の場合、物語の中で鬼は人間から恐れられている場合が多く、…

ノウタケ(Calvatia craniiformis)- 松江城マッシュルームマップ -

名前を聞いてもピンと来ない肩書がある。 例えば考古学者だったら、土を掘り返したりして埋もれた遺跡を発掘して失われた過去の文明について調べているんだろうなあとか、動物学者だったら、世界中にいる動物たちを観察して生態を調べたり分類分けしたりして…

ブドウニガイグチ(Tylopilus vinosobrunneus)- 松江城マッシュルームマップ -

子どもの頃、近所に大きなぶどう棚があった。 人様の敷地にある人様の葡萄なので、勝手に採って食べたりしてはいけないのだが、なかなかの隠れワルガキだったぼくは、何人かの友だちと連れ合ってよくそのぶどう棚の葡萄を狩りに行くことがあった。 まあそん…

サヤナギナタタケ(Clavaria fumosa)- 松江城マッシュルームマップ -

薙刀という武具がある。 時代劇などを見ているとちょくちょく目にすることがあると思うが、長い柄の先に反りのある刀身を装着した武具で、刀身および柄の形状共に斬撃に特化させた長柄武器のひとつである。 薙刀が戦場での武具として盛んに使用されていたの…

テングノメシガイ(Trichoglossum hirsutum)- 松江城マッシュルームマップ -

昔から日本人は、奇妙なものや不可思議な出来事など、正体不明の何かに恐れおののいてきた。 ある時誰かが、その正体不明なものの正体を「あれは天狗の仕業だ!」と言って天狗のせいにした。 正体不明な何かに対する恐怖や不安を、その正体を「天狗」として…

ベニヒガサ(Hygrocybe cantharellus)- 松江城マッシュルームマップ -

ぼくは男の子なので、いままで日傘というものをさして出歩いたことがない。 別に男の子だからといって日傘をさしてはいけないという法律なんてないのだけれど、なんとなく世間の流れに飲まれてしまっていた。でも近年はさしたくて仕方がない。だって真夏の炎…

イボテングタケ(Amanita ibotengutake)- 松江城マッシュルームマップ -

判別きのこ30個記念を打ち立てようと思っている間に、気がついたらうっかり30個目を越していたらしい。 よし次は50個記念まで駆け上ろうぞ。 そんな折、ついにこのきのこを目撃することになる。きのこを探しだしてから夢にまで見ていたきのこのひとつが、非…

イヌセンボンタケ(Coprinellus disseminatus)- 松江城マッシュルームマップ -

エドガー・アラン・ポーの短編に「群集の人」というものがある。 ずいぶん昔に読んだ作品なので詳細な内容まではっきりは覚えていないが、群衆の中にいることでしか心が満たされることのない男の話で、なんだかちょっと切なさもありつつ、とらえどころのない…

アクイロヌメリタケ(Hygrocybe unguinosa)- 松江城マッシュルームマップ -

「灰汁が強い」という言葉がある。 灰汁とはもともと灰を水に浸して上澄みをすくった液体のことで、洗剤や染料あるいは食品のアク抜きなどとして用いられてきたものである。 そして、この灰汁を使って食品自体がもつ強くてクセのある味を処理するようになっ…

クロアシボソノボリリュウタケ(Helvella atra)- 松江城マッシュルームマップ -

無理矢理覚えさせられることほど、この世に嫌なものはないと思う。 そんなぼくは学生時代、興味のない学科に関しては「まったく記憶にございません。」と、斜め上の虚空を見上げながらきっぱり言い切れるくらい勉強しなかったし覚えなかった。そのかわり好き…

セミノハリセンボン(Isaria takamizusanensis)- 松江城マッシュルームマップ

もしあなたが小さな森を訪れて、その森を存分に楽しみたいと思うなら、まずはじめにどんなことをするだろうか? ぼくだったら、まず森の入口でしばらくのあいだしゃがみこんで、自分の目線をぶっ壊してみる。少ししゃがんで森を眺めるだけで、その世界は日常…

トガリベニヤマタケ(Hygrocybe cuspidata)- 松江城マッシュルームマップ

雨が降るときのこたちが乱舞するので願ってもないことなのだが、きのこが雨に濡れてしまうと判別がちと困難になる場合がある。 例えば雨のために濡れてしまったカサなのか、あるいはカサに粘質を持っているきのこなのかがわからなくなったり、カサの色が雨の…

カンゾウタケ(Fistulina hepatica)- 松江城マッシュルームマップ

このフィールドできのこをハンティングしはじめてからぼくが食したきのこは、食毒はないもののあまり食用には向かないとされているムラサキホウキタケの一種類のみである。 しかもホウキタケの仲間には毒を持っているものもあるということなので、なんでそん…

オニフスベ(Calvatia nipponica)- 松江城マッシュルームマップ

赤ん坊は丸いものが好きでついつい注目してしまうらしい。 ぼく自身は赤ん坊と長時間過ごした経験がないので詳細はわからないが、赤ん坊がそういう習性を持っていると風のうわさ程度に耳にしたことがある。そしてその話を、とあるきのこを発見して思い出した…