ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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ダイダイガサ(Cyptotrama asprata)- 松江城マッシュルームマップ -

小学生の頃、運動会の組み分けは「色」であった。

 

赤組とか青組とか緑組とか、まあいわゆる王道十二色の中から色が選抜され、その色が組のシンボルカラーとされていた。

 

関東圏の団塊ジュニアのぼくの世代は生徒の人数もずいぶん多かったから、確か六色か七色くらいに色分けされた組で争う大運動会だったと記憶している。

 

でも、そんなに多いんだったら、もっと個性のある色を組の名前に付けたらいいじゃないかとぼくはずっと思っていた。世の中にはたくさんの色の名前があるのに、なんで赤とか青と緑とか、毎日見飽きている押し売り色鉛筆みたいな色を使うんだろう。

 

赤だって青だって、いろんな呼び方があるしいろんな色があるではないか。だったら組の個性を重んじて、振り分けられた組のみんなで、まず色から決めたらいいとぼくは思うのである。

 

茜組だったり空組だったり織部組だったり、あるいは橙組だったり。そういう個性が大切だと思うのである。

 

というわけで、今回のハンティングきのこは「ダイダイガサ」である。

 

松江城マッシュルームマップ - ダイダイガサ -

 

タマバリタケ科ダイダイガサ属のきのこで、学名を「Cyptotrama asprata」、漢字で書くと「橙傘」である。

 

広葉樹の倒木や落枝に発生する小型のきのこで、傘は綿質の柔らかいトゲを持つ橙色をしている。薄暗い森のなかでもキラリと目立つ小憎らしくて愛らしいきのこである。

 

しかし成長するに連れて傘のトゲも、そして橙色も、その力を弱めてゆくため、小さな幼菌の頃が見頃のきのこだと言えよう。成長した姿は何度か見かけたのだが、幼菌とはまったく趣が異なるため、違う種類かと思うほど幼菌の個性はなくなっているのだ。

 

子どもの頃というのは、なんだかホンワリフンワリしていて何も知らないでいると誤解している大人たちが多いのだが、このダイダイガサのように、子どもの頃こそツンケンガリガリと尖っていて、色もバリバリ濃いのである。

 

そういう幼いころのトンガリ具合こそ、ぼくは素晴らしいものだと思う。なぜならそれが個性であるからして。

 

でもなぜか大人になるに連れて、そういうものを削ぎ落とそう削ぎ落とそう、傘のトゲや橙色は断じて認めませんよ、という風潮が日本には大いにある。外見にトゲがあろうが、橙色をしていようが、一本筋通して生きていける方がどれだけ素晴らしいだろうか。

 

ぼくは二十代三十代をド金髪のトゲトゲ頭で過ごしてきたし、仕事に際してスーツなど着たことがないが、一本筋は通して生きているのでなんのこたあないのである。

 

きょうダイダイガサの勇姿を眺めていて、改めて深く思った次第、それでよいと思う。

 

自分の色は自分で決めるのが、ぼくの流儀です。

 

 

 

日本の色辞典

日本の色辞典

 

 

 

 

月白貉