ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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イボテングタケ(Amanita ibotengutake)- 松江城マッシュルームマップ -

判別きのこ30個記念を打ち立てようと思っている間に、気がついたらうっかり30個目を越していたらしい。

 

よし次は50個記念まで駆け上ろうぞ。

 

そんな折、ついにこのきのこを目撃することになる。きのこを探しだしてから夢にまで見ていたきのこのひとつが、非常に状態のよい完全体で路傍に。この日は所用で出かけるつもりだったのだが、その予定を変更して何時間もきのこに見入ってしまった。

 

というわけで、今回のハンティングきのこは「イボテングタケ」である。

 

松江城マッシュルームマップ - イボテングタケ -

 

テングタケテングタケ属のきのこで、学名を「Amanita ibotengutake」、漢字で書くと「疣天狗茸」である。

 

もちろん皆さんご存知だとは思うのだが、著名な毒きのこ先生である。しかし、テングタケに含まれる毒素のイボテン酸の旨味は、グルタミン酸の持つ旨味の10倍以上だとも言われている。ということは、とんでもなく美味しい毒きのこだということになる。

 

中毒症状としては胃腸系から神経系まで広く網羅してくれており、ひどい場合には昏睡状態に陥った例もあるそうだが、毒性は比較的弱く、短時間でも回復が可能だということだ。

 

虎穴に入らずんば虎児を得ず、そう思う方は魅惑のテングタケテイストに舌鼓を打ってみるのも一興かとぼくは思いますよ。

 

イボテングタケはノーマルなテングタケと非常によく似ているため長い間混同されてきたが、近年別種であると判明した一品である。

 

テングタケとの大きな違いはいくつかあるのだが、まずひとつはテングタケよりも巨大化するということ。またつばが取れやすいため成菌になるとつばがないことがしばしばあるということ、撮影した個体はずり落ちてきたつばがかろうじてなんとかくっついているのがお分かりいただけると思う。そして、さらにカサに付いている疣が硬質であるということなどがあげられる。

 

この個体の周囲には無数の幼菌がモコモコと生え出してきており、数日後はこの辺り一帯にイボテングタケが乱舞することになると思われる。なんとも素敵な舞踏会が繰り広げられるわけだ。

 

松江城マッシュルームマップ - イボテングタケ -

 

というわけで、今回はわりとまじめにきのこのことばかり書いてみたが、それはやはりこのきのこの持つ造形の素晴らしさへの敬意ということにしておこう。

 

もし近日行われるイボテングタケの舞踏会に出席を希望される紳士淑女の方がおりましたら、ぼくまでご一報くださいませ。きのこの馬車で会場までお連れいたしますゆえ。

 

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月白貉