ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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チクタクチクタクチクタク、クロックワークアップル日記。

ついこの間、夏は終わっちゃったのかと思ったけれど、数日の熱帯夜。残照みたいなその第二波が始まった日から、台所の曇りガラスの窓の外に大きなヤモリたちの影がうろつきはじめた。ある夜に窓を開けて姿を見ようと思ったら、そのうちの臆病な一匹が驚いて部屋の中に飛び込んで来てしまって、どこかに姿を消した。毎日部屋のいたるところにそのヤモリの糞が落ちているので、まだこの部屋をさまよっているのかもしれない。外に比べたらおそらくは牢獄みたいなこの部屋のどこかに息を潜めているに違いない。けれど姿は見当たらない。

 

少し遅く起きた朝、軽く洗濯と掃除をし、いまは羽毛布団のカバーが洗濯機の中でうなりをあげている。中身はベランダで、静かな寝息を立てているように見える。

 

日記を書こうと思いたちパソコンを立ち上げてラジオを付けると、Ke$haの『TiK ToK』が流れ始めた。

 

Aint got a care in the world

But got plenty of BEER

Aint got no money in my pocket

But I'm already here

 

ぼくには悩みが少しだけあって、でもきょうの予定はなんにもないし、冷蔵庫にはビールを切らしてる。そしてお金もまったくない。But I'm already here.

だから、羽毛布団の皮が暴れまわるのをやめておとなしくなったら、ジャックダニエルで歯を磨いてから、街に繰り出そう。 

 

きょうの真っ青な空を映し出す小さな湖しかない退屈な街だが、いまぼくはここに縛り付けられている。ぼくを拘束するものは何もない。手錠も、巨大な鉄球の付いた鎖も、錆びついた檻も拘束衣もない。それなのになぜぼくはここから離れることが出来ないでいるんだろう。

 

日々の、うねる時間の中には意味不明な束縛がある。そういう類のことは、自分ではどうにも出来ない。

 

違う違う、自分でどうにかしなきゃ。

 

出かける前に歯を磨こうと思っていたけど、ジャックダニエルも切らしていた。まずはジャックダニエルを買いに行くところから始めよう。歯は腐ったリンゴで磨く。

 

気付けばもうこんな時間だ。でもいいさ、いつもとは違う日を送るんだ。

 

いつもとは違う日曜日を、いつもとは違う午後を、いつものうねりの呪縛めいた拘束から、距離を置かなきゃ。

 

Tick tock Tick tock Tick tock.

 

 

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