ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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晩夏の羽毛布団レクイエム、あるいは2017年最後の怪談日記。

先日、赤カビに覆われてしまった愛用の羽毛布団を自ら手洗いするという例大祭的大イベントを済ませたばかりの晩夏あるいは初秋であるが、その羽毛布団にまつわる祭(怪談)はまだ終わってはいなかった。

 

ちなみにであるが、ノストラダムスによって予言されていた通り、手洗いしたのはいいけれど羽毛布団の中に渦巻く大量の羽たちが大人しく乾いてくれないじゃん、という問題が勃発しつつも、そこは持ち前の“あばれはっちゃく鼻づまり”ぶりを活かして何とか切り抜け、もとのフワフワでフカフカでモフモフの羽毛布団に蘇生させることに成功した。

 

シスター・オノニチことみどりの小野さん、その節はアドバイスをいただきダンク・ユー・ヴェル、しかしなんとか、そしてかんとかコインランドリーには行かずに自力で乾かすことに成功しました。変な獣臭も発動せず、血痕も残らず、静かなる羽毛布団として元気に生き返っております。

 

 

しかし、その羽毛布団にある呪いが降り掛かった。

 

羽毛布団乾燥の最後の仕上げとして本日、燦々と照っている太陽を浴びさせようと思い、熱々のベランダにザバンと豪快に干していた。それを日暮れに取り込み、部屋の中でたたもうとしていると、その羽毛布団の表面に緑色をした虫が一匹付着していることに気が付いた。

 

カメムシである。

 

カメムシ学者ではないので厳密な種類は分からないが、オーソドックスなカメムシであることに間違いはない。

 

そして、カメムシと言えばである、ご存知のように外的な刺激により悪臭を放つことで知られている。その悪臭たるや、尋常ではない。かつて東京の地下鉄で起こった某宗教団体によるテロ事件に際して使用された化学物質、あの威力に匹敵するとさえ言われているのが、カメムシの悪臭液体である。

 

近年、ある種のカメムシの悪臭は気候の変動により威力を増しており、一部の学者の間では化学兵器として使用される危険性があるとの指摘もある。

 

実際にぼくは、幼い頃からカメムシの悪臭体験者であるが、あの臭いはバイオハザードだと言っても過言ではない。

 

そのカメムシが、洗いたての、乾かしたての我が羽毛布団に引っ付いているのを見て、背筋が凍って気絶しそうになったが、気絶している場合ではない。そして、もし羽毛布団に付着しているカメムシに刺激を与えれば、化学兵器バリの液体をビチャっとバラ撒かれて、せっかく洗い上げたぼくの羽毛布団が煉獄の炎に焼かれることになる。

 

つまりそれが意味することは、この冬、カメムシ被爆した羽毛布団を捨て去らざるを得ないがゆえに、寒さに凍えて死ぬことになる、ということにほかならない。それは大いに困る。困り果てる。

 

そこでしばらく冷静になって考えて、カメムシ本体にあまり刺激を与えないように、ガムテープで捕獲し、駆除することにした。

 

長々とした途中経過は省く、なぜならその思惑は成功だったからである。あっさりと捕獲に至った。

 

しかし、本体を取り去った羽毛布団に、驚愕の異物が残留していた。

 

カメムシのタマゴが、羽毛布団にファームのごとく産み付けられていたのである。

 

これほどの恐怖が、今夏に、いやいままでにあったであろうか。ブルガリアのネズミを遥かに凌駕するホラーである。

 

この時点の恐怖たるや、尋常ではない。あの昆虫類のタマゴのブツブツ感をご存知であろうか?もはや『エイリアン』に登場するのゼノモーフのエッグどころの話ではない。

 

だってね、もしこの産卵に気が付かずに、本体も飛び去ってしまっていて気が付かずにね、布団カバーをかぶせていたら、しばらくしてぼくの羽毛布団の中で、大量のカメムシの幼生が孵化して、羽毛布団のカバーの下がカメムシだらけになるところだったのだよ。

 

しかし、幸運なことに気が付いたので、ここから卵を除去する試みが幕を開ける。もちろんガムテーブである。だって、下手に拭き取ろうとして、タマゴを潰してしまって、中からわけの分からない致死液体が吹き出したらさあ・・・、苦労して洗いあげた羽毛布団の物語が、スゴロクの振り出しに戻るでしょ(気が狂うよ)!

 

だから慎重に、慎重に、ガムテープでタマゴを除去しようとするのだが、強力に引っ付いていてまったく取れないのである。でもしばらくその行為を繰り返して、なんとかすべてのタマゴを剥ぎ取ることに成功する。

 

でも、これだけでは終わらない。

 

タマゴを産み付けたブツブツの跡が、羽毛布団にビッチリと付いているのである。ここで、軽い吐き気を催す。だってね、その跡たるや、クッキリとしたBCGワクチンの跡に等しいものなのだ。タマゴを付着させるための何かしらのカメムシ液体が、ぼくの羽毛布団に、バーコードのごとくこびり付いているのである。

 

バーコード読み取りさえ可能なほどクッキリと。

 

本日はここまで、だって今、進行形の怪談だからね。

 

この刹那に叫びたい言葉は、当然、「ファ◯ク!!!」

 

これが怪談でなくてなんであろうか・・・。

 

晩夏の羽毛布団レクイエム、あるいは2017年最後の怪談日記。

 

 

 

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月白貉