ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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地下道にある異界の入口を描いた『ПЕРЕХОД - THE CROSSING』、新宿にもこんな場所があるかもしれない。

東京を離れて久しいので、現在新宿あたりがどのような変貌を遂げているのかはよく知らないが、昔、知り合いの母親が、「新宿の地下街なんて怖ろしくて歩けたものじゃない!」と言っていた。

 

その理由は土地柄の治安の悪さが云々という話ではなく、幽霊とか化け物とかだらけだからだということだった。

 

あんなに人であふれていて煌々と電気が点いている場所なのに“怖くて歩けない”ということは、本人にとったら相当恐ろしいんじゃないのかと思う。その知り合いいわく、母親はとんでもなく霊感が強く、見えるとか見えないとかそういうレベルではないらしくて、弱いものなら自分で払えたりするということだった。

 

さて、今回取り上げるのは、地下道での恐怖を描いた短編作品。

 

ロシアの監督アルセニー・サイヒン(Арсений Сюхин)による『ПЕРЕХОД』(THE CROSSING)。

 

ПЕРЕХОД - THE CROSSING

image source : ПЕРЕХОД - THE CROSSING

 

英題が“Crossing”となっているので、おそらく交差部とかいう意味のロシア語だと思う。ちなみにぼくはロシア語はほぼわからないので、監督名のカタカナ表記は間違っているかもしれない・・・。

 

またこのロシア語を辞書で調べてみると、その意味は“Transition”とも出ている。これは「移行」とか「変わり目」とかいう意味で、その語源の中にはローマ神話における入口や門の神ヤヌスを表す言葉が含まれているらしい。

 

この神は頭の前と後ろにふたつの顔をもった神で、物事の初めと終わりを司っている。

 

勝手な憶測であるが、本作品の重要なポイントなのではないのかと思う。

 

さてそんなことを踏まえて、ちょっと気になった方は、ぜひ本編をご覧いただきたい。ロシアの作品なのだが、その趣は70年代80年代のアメリカのホラー映画を思わせる。そして個人的にはなかなかの秀作だと感じる。

 

もし新宿の地下街がこんな感じなのだとしたら、ぼくだって怖くて歩けないと思う。

 

では、どうぞ。

 

 

 

 

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