ちっこす日記。
帰り道、いつもの二人は一緒じゃなくて、ポーと一緒にいたのは、ちっこすな名もなき仔猫だった。ロレンスはいなかった。ロレンスには今日の朝、挨拶をした。そして無視された。その時ポーはいなかった。
ちっこすな薄茶色の斑の仔猫は、ポーとロレンスの子供だろうか。もしそうなら、ぼくの思い描いていたこととは違い、ポーかロレンスか、どちらかが女性なのだろう。もしそうなら、たぶんロレンスだろう。
いや途中からうすうす感づいてはいた、友だちじゃなく恋人なのだろうと。
ロレンスはポーがいないときには、ぼくにずいぶん体を寄せてきた。
ポーは、ロレンスがいてもいなくても、大抵は遠目でぼくを見つめていた。
ポーには何度も鋭い爪で攻撃され、その度にぼくの手から血が流れた。猫とじゃれ合ってあれほど深い傷をおったことはない。ある時まじまじとポーの爪を見ると、それはゾッとするほど鋭かった。
と、もしかしたら、あのちっこすの仔猫は、ポーにもロレンスにもなんの関係もない、誰かの仔猫なのかもしれない。ポーもロレンスも、女性じゃないかもしれない。
その仔猫を写真に収めようと、雨の中iPhoneのレンズをむけていると、仔猫は何度も何度もポーの顔を見てはぼくのほうを見つめ、またポーの顔を見ては、ぼくの方を見つめていた。でもポーは、目をロンパらせながら、ぼくのことを見ていた。ちっこすを連れて逃げていくことはなかった。
ぼくはその間、たくさん蚊に刺された。
蚊が集まりすぎてきて、わ〜ってなって、「蚊めっ!!!」手で振り払ったら、ちっこすがびっくりして後ずさったので、きょうはそれ以上写真は撮らないことにした。結局ブレブレの写真が一枚撮れただけだった。一般的に言うと、ほぼ撮れてなかった。
あのちっこす、ポーの子供じゃないのかな?
それとも、ぼくが特別扱いだから、にげなくていいと言ったのかな。
猫は気まぐれだと言うけれど、たぶん自分に正直で素直なだけだろう。楽しい時には楽しくてちょっと遊びたいが、しんどい時はしんどいから、無視したいのだ。
それって大切なことだよなあ。
明日、ちっこすはぼくと遊んでくれるだろうか。
ちっこすに、名前を付けなきゃ。
いま、桃を食べている。
スーパーの見切り品で、高いんだか安いんだかよくわからない、ちょっと傷んでそれなりに甘い桃を食べながら、この日記を書いている。
一年半ほぼ誰とも心を通わせず、会話もなく、それなりに孤独すぎて、それなりに苦痛な日々と、ちょっと甘い桃と、ちっこすな猫。
日常にくじけるには十分な要素だが、おそらく負けも崩れもしねえ屈強な自分を、永劫に呪うわよ。
かしこ。