少年は宇宙を掌の中に握りしめている、壮大な生命的宇宙観を想起させるアニメーション作品『EXODE』。
地球がひとつの大きな生命体だという考え方がある。
それは宗教的な意味合いではなく、まさに生物として生きているということである。ガイア説などと言われるものもその一つだと思う。
もちろん自然崇拝として地球を母なるものだと崇める信仰は、かつての古の叡智の中で地球が生命体であるということを知識として持ち得ていた時代の元記憶的なものの名残なのかもしれない。とすれば、宗教的あるいは神話的な考えと、まさにいま足元にある地球が生物だという理論は、実は同じことを言っているのかもしれないが。
そして現在の人間たちが、地球が生物だと認識できないことの大きな理由としては、それが理解の限界をこえた存在だからだという説を唱える者もいる。例えば人間の体の表面や内部には様々な細菌が生命として活動している。けれど、その細菌たちが自分たちの住処、つまり人間の体を生命体だと理解しているわけではないことと同じだという。
なぜそんな話を持ち出したかと言えば、とある短編映画を観ていて、そんなことを思ったからである。
というわけで、今回はその作品を取り上げてみたい。多くの受賞歴を持つ作品のようなので、すでに鑑賞済みの方も多いかもしれない。
作品のタイトルは『Exode』(エクソダス)、これは旧約聖書にある出エジプト記、モーゼのエジプト脱出の物語を意味する言葉であり、そこから転じて大量の国外脱出を意味する言葉でもある。
image source : Exode movie on Vimeo
監督はキャスリーン・カルティエ(Kathleen Cartier)、サンドリーヌ・ギメネーズ(Sandrine Gimenez)、ニコラス・ミリキ(Nicolas Mrikhi)、バティスト・ロイ(Baptiste Roy)、トーマス・シーズ(Thomas Saez)。
この作品を鑑賞して、前述の地球生命体説の話の他にも、いろいろと思い出したことがある。例えば有名な古代インド人の宇宙観。大地の中心には「須弥山」という高い山がそびえ立っていて、その大地は巨大な三頭の象の背中に乗っていて、その象は巨大な亀に乗っていて、その亀はとぐろを巻いた巨大な蛇の上に乗っている、それが全宇宙だというものである。
他にも、ウォルフガング・ペーターゼンの『ネバーエンディング・ストーリー』(Die unendliche Geschichte / The Neverending Story)に登場するロックバイターや、上田文人による『ワンダと巨像』なども頭に浮かんできた。
まあそんなわけで、お暇な方はぜひご覧いただきたい。
- 作者: J. Lovelock,星川淳,ジム・ラヴロック
- 出版社/メーカー: 工作舎
- 発売日: 1984/10
- メディア: 単行本
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