ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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見ざる言わざる聞かざるの恐怖、三猿な短編ホラー映画『THREE WISE MONKEYS』の不気味な猿神。

「見ざる、言わざる、聞かざる」でお馴染みの三猿は、おそらく皆さんご存知だと思う。

 

東京に暮らしている頃には、道端の庚申塔などでよく目にしたことが懐かしいが、日本でいちばん有名な三猿と言えば、江戸初期の左甚五郎作だと言い伝えのある日光東照宮の例のアレである。

 

三猿という概念は日本のものだと思いがちであるが、あの3匹の猿というモチーフ自体は古代エジプト建築やヒンドゥー教の寺院建築の中にも見られるもので、どうやらシルクロードを伝って中国を経由し日本に入ってきたのではないかと言われている 。

 

そう言われてみれば確かに庚申塔とは中国の庚申信仰に由来するものであり、人間の体内に巣食うと言われる「三尸虫」が庚申の日の夜に体内を抜け出し、その人物の悪行を天帝に密告しに行くのを防ぐための儀式をやり終えた証に建造する塔である。つまりは自らの悪行を「見ない聞かない言わない」という意味合いがあるから、あの三猿が庚申塔に刻まれているのかもしれない。

 

ちなみにかの南方熊楠によれば、庚申塔青面金剛と猿の関係はインドに起源があり、青面金剛はインドの『ラーマーヤナ』の主人公であるラーマの本体たるヴィシュヌ神の転化であり、三猿はラーマに仕えたハヌマーンだという。ということはやはり西方に起源があるのだろう。

 

そんなわけで、前置きが長くなったが、今回取り上げるのはその三猿をモチーフにした短編のホラー映画。

 

スペインのバレンシアを拠点に活動する映画監督ミゲル・アンヘル・フォント・ビシエル(Miguel Ángel Font Bisier)さんの作品、『Three Wise Monkeys』(スリー・ワイズ・モンキーズ)である。

 

監督の名前のカタカナ表記には自信がないが・・・。

 

タイトルはまさに三猿にまつわるもので「三匹の賢いサルたち」、ヨーロッパにおいての三猿がどういったイメージなのかはよくわからないが、ちょっと不思議な雰囲気をもつ作品になっている。ちなみに作品中の三猿は、どちらかと言えば東洋的なイメージで描かれているような感じがする。

 

Three Wise Monkeys

image source : Miguel Ángel Font Bisier - YouTube

 

ぼくはなかなかおもしろいなあと思って、最後まで真剣に観てしまった。(途中でつまらないと思ったものは基本的に取り上げないけれどね・・・)

 

というわけで、興味のある方はぜひどうぞ、ちなみにホラー映画なので・・・、後半ちょっとおぞましいシーンなどあるから、一応ご注意を。

 

 

 

 

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月白貉