ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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インスタグラムのような、そうでもないような濃密色の日記。

この数ヶ月、嫌な夢ばかり見ていた気がするのだけれど、昨日の、いや今朝の明け方見ていた夢は、あまり嫌な夢ではなく、そして鮮明に覚えている。

 

ぼくはどこかへ向かう電車に乗っている。たぶん家に帰る途中なのかもしれない。ボックスシートではなく、横に長いシートには疎らに人々が座っているが、顔には何か靄のうようなものがかかっていてよく見えない。

 

ある駅で電車が止まると、数人の女子高生が静かに乗り込んできた。そのうちの二人がぼくを挟むようにしてぼくの両脇に腰を下ろして、ぼくを真ん中に置いたまま話をしはじめる。他にもたくさんスペースは空いているし、二人で並んで座る場所など山ほどあるのに、なぜぼくを挟むようにして座ったのかが気になりつつも、二人がとてもキュートな容姿だったために、ぼくは黙ってそこに座ったまま、二人の会話に気を使って背もたれに深く体を沈めて、二人が話しやすいように配慮する。

 

しばらくして急な眠気に襲われたぼくは、いつの間にか目を瞑って眠ってしまっていた。どのくらいの時間眠っていたのかは定かではないが、目を覚まして、目を開けると、ぼくの顔の目の前で両脇に座った二人の女子高生がフレンチ・キスをしている。

 

ぼくはしばらくその光景を、本当に間近で見つめている。

 

すると、片方の女子高生が、ぼくにインスタグラムのアカウントを教えて欲しいと話しかけてくる。

 

「ああ、いいよ。」とぼくは気軽に承諾し、その女の子とインスタグラムで繋がることになる。彼女の写真に目を向けると、何気ない日常の風景や友人や、ごはんや、そんなありきたりの写真がまとめられていた。

 

ぼくはふと思い立って、もうひとりの女の子に、「きみのアカウントも教えてよ。」と声をかける。実はぼくの好みは、彼女の方だったからだ。

 

「いいけどね、あたしは三つのアカウントを持ってて、その一つだったら、教えてもいいよ。」と言って、すぐに教えてくれた。写真を見てみると、もうひとりの女の子のものと大差のない日常がまとめられていた。

 

ぼくは、彼女の他のアカウントのことがちょっと気になって「ほかの二つは教えてくれないの?」と聞いてみると、なんだかやけに色っぽい表情を浮かべた彼女が、ぼくの耳元で囁いた。

 

「教えてもいいけど、私のこと嫌いになるかもよ。」

 

彼女が教えてくれた二つ目のアカウントには、自分のヌード写真ばかりがまとめられていた。しかもすべて芸術的に体を紐で縛られたものばかりだった。

 

「兄貴が縄師なんだ。」

 

ぼくは何も言わずにずっとその写真を見続けている。彼女もぼくの顔に吐息がかかるくらいにぼくに顔を寄せて、ぼくのiPhoneを覗き込んでいる。

 

「あともう一つのアカウントにも、こういう写真をアップしてるの?」

 

ぼくがそうたずねると、彼女は幼い子供がするみたいに大きく首をグルグルと横に振った。彼女の髪がぼくの頬になんども触れた。

 

「もしよかったら、そのアカウントも教えて欲しいんだけれど。」

 

そこで、目が覚めた。

 

もう一度、目を閉じて続きを見ようと思ったが、残念ながらそれは叶わなかった。

 

彼女の最後のアカウントには、一体何が写っていたのだろうか。

 

 

月白 貉