太陽の光
光はいつだって、ぼくの頭上に消えることなく輝いている。
でも、そんなあたりまえのことが、時としていろんなことにかき消されて、あるいは騙されて、惑わされて、わからなくなる。
光なんて、もう永遠になくなってしまったんじゃないかって、そう思うことがある。
太陽はさ、まあいまのところの話かもしれないけれど、いつだってなくなりはしない。ぼくは天文にはまったく無知だから、学術的なことは知らない。けれども、いつも太陽は消えることなく存在するじゃないか、遥か遠くではあるけれども。
時にひとたび雲に隠れると、太陽なんてなくなってしまったんじゃないかと思うほど、世界は暗闇に包まれる。もちろん夜だって。でも太陽はなくなってはいない。そこにある。行ったことはないから知らないけれど、そこにあるはずだ。
自らを照らす光だって、たぶん太陽と変わりはしない。その存在を勝手にあきらめた人々が、深い霧や厚い雲によって遮られたり、いつ明けるともわからない闇夜に包まれたり、あるいは邪悪な幻想の中で見失ってしまったり、そうやってその存在を勝手にあきらめた人々が、光はなくなったと言っているだけで、けっして光はなくなりはしない。
ぼくの友だちのかえるは、「太陽にゆくよ。」と手紙に書き残して、ある日どこかに旅立った。
彼がほんとうはどこに行ってしまったのか、ぼくにはわからない。でも彼がそう言うんだから、そこに行ったんだろう。「太陽にゆくよ。」と、そう言うんだから、そこに行ったんだろう。
古き友よ、太陽はまだきみの頭上にありますか。
それとも古き友よ、いまはきみの足下が、その光の源ですか。
そしてもしかしたら、きみ自身が誰かの光ですか。
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月白貉