ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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読み物-民俗学

鹿児島の峠道で起きた、聞いたことのあるような奇妙な話。

最近たまたま聞いた話に、こんなものがあった。 ぼくの知り合いが、熊本県に住む知り合いの女性に聞いたという話である。 あるお盆の頃に、その女性の知り合いの、アパレル関係の会社に勤めている竹本さん(仮名)という男性が、営業のために鹿児島の辺りを…

アイスランド魔術への誘い、金運を呼ぶネクロパンツについて。

ちょっとハロウィン向けの話であり、やや学術的な目線の話ではあるが、人によっては若干の衝撃を含む内容かもしれないので、苦手そうな方はご注意を。 世の中には金運グッズなるものがある。 ぼくはそういうものを今まで持ったことがないので、あまりよく知…

地蔵憑けと地蔵遊び - キツネにならきっとわかる憑物の話 -〚 第拾肆話 〛

福島県のいくつかの地域には「地蔵憑け」あるいは「地蔵遊び」と呼ばれるものがある。 これはその地域に病気、縁談、失物などがあった場合に、ある家に女たちが集まって行う、一種の占いか託宣を受ける儀式のようなものである。 集まった女たちが円陣を組ん…

クチとは何か - キツネにならきっとわかる憑物の話 -〚 第拾参話 〛

沖縄県、また鹿児島県の奄美諸島にはクチというものがある。 クチというのは、お茶や食べ物などに人を呪詛する呪詞を唱え入れて、相手に飲ませたり食べさせたりして害を成すことをいう。 クチの入ったものを飲んだり食べたりすると吐き気をもよおしたり血を…

イチジャマという憑物 - キツネにならきっとわかる憑物の話 -〚 第拾弐話 〛

沖縄地方にはイチジャマという憑物がある。 これは生きている人の魂、すなわち生霊が体を抜けだして他の人に憑くと信じられているもので、基本的には女性の生霊である。 そしてこのイチジャマには家筋があって、母から娘へと母系によって受け継がれてゆくと…

蝦蟇の憑物 - キツネにならきっとわかる憑物の話 -〚 第拾壱話 〛

岩手県高田市や福岡県久留米市などでは、蝦蟇(がま)は狐や狸同様に人に憑くと言われている。 根岸鎮衛は『耳嚢』巻之四の中で「蟇の怪の事」という話をあげている。 これは人家の床下に蝦蟇が住み着くと、その家に住む者は鬱々として衰え煩ってしまうとい…

動物霊信仰の系譜 - キツネにならきっとわかる憑物の話 -〚 第拾話 〛

新潟県高田市のお晴見祭り、福島県南会津郡の鼬寄せや犬寄せ、愛知県三河の西京鼠、神奈川県川崎市のトウガミなど、動物の神霊に頼る俗信は日本各地に多く見られる。 古来より、神霊を呼び寄せる神懸かりというものは、神職や巫女、そして山伏などによって行…

日本の憑物の源流 - キツネにならきっとわかる憑物の話 -〚 第玖話 〛

近世において、憑物についての言及がある文献を見てみると、例えば『本朝食鑑』には狐を使うための方法が詳しく述べられていたり、『善庵随筆』にもクダ狐の駆使方法に関する解説が書かれていたりする。 一方で狐使いが刑に処されたとの記述も、『筠庭雑録』…

憑物使いの存在 - キツネにならきっとわかる憑物の話 -〚 第捌話 〛

今日の希少地帯における憑物筋の中には、憑物筋と呼ぶよりも「憑物使い」と呼ぶべきがふさわしいようなものが実際にいると、石塚尊俊は述べている。 事実、そういう場合においては「使う」という言葉を付けて、イヅナ使いだったり犬神使いなどと呼ぶ地域が少…

憑物筋狩り - キツネにならきっとわかる憑物の話 -〚 第柒話 〛

前回までに見てきたように、憑物筋というものは単に一括りにいえるものではなく、多数地帯と稀少地帯におけるその性格には大いなる違いがあった。 つまり多数地帯における憑物筋の多くが皆ごく普通の家にすぎないことに対して、稀少地帯のそれは明らかに巫女…

憑物筋の分布における地域差 - キツネにならきっとわかる憑物の話 -〚 第陸話 〛

日本における憑物筋の分布には多数地帯と少数地帯、つまり大きな地域差が見られるのだが、ではこの地域差はいったい如何にして生じているのか。 石塚尊俊はこの理由を家結合の面から考察している。 日本の農村社会を家結合の面から見てみると、まず大きく二…

憑物筋の多数地帯における特徴 - キツネにならきっとわかる憑物の話 -〚 第伍話 〛

憑物筋の多数地帯におけるその家筋の特徴とは、簡潔に言ってしまうとその地域への入村時期なのである。 石塚尊俊によれば、多数地帯である出雲地方の安来市と平田市、土佐の幡多郡、豊後の北海部郡からそれぞれ一地区を選出し調査を行い、いわゆる悪い筋の総…

憑物筋の多数地帯と稀少地帯 - キツネにならきっとわかる憑物の話 -〚 第肆話 〛

民俗学者の石塚尊俊は、憑物筋の多数地帯と少数地帯には、その家筋の性格において明確な違いが存在すると述べている。 それは何かと言えば、例えば憑物筋の最多数地帯である出雲、土佐、豊後の各地域においては憑物筋だといわれる家とそうではない普通の家と…

憑物筋というもの - キツネにならきっとわかる憑物の話 -〚 第参話 〛

地方によっては、憑物を代々祭っていたり飼っていたりするといわれる家があって、そういう家のことを「憑物筋」と呼んでいる。 祭っていたり飼っている憑物の種類によって、例えば、狐持ち、トウビョウ持ち、犬神筋、クダ屋などと呼ばれる家が存在するわけで…

憑物百怪 - キツネにならきっとわかる憑物の話 -〚 第弐話 〛

一口に憑物と言っても様々である。 憑物と聞くと、狐とか狸とかの動物霊が人に取り憑くというイメージをまず思い浮かべると思う。しかし憑物はそういった動物霊だけには留まらない。 動物霊以外にも、憑物の中には生霊とか死霊あるいは祖霊などの人間の霊や…

蠱道の影響 - キツネにならきっとわかる憑物の話 -〚 第壱話 〛

序章として〚第零話〛がありますので、もしご興味があれば以下をどうぞお読みくださいまし。 憑物研究の第一人者で民俗学者の石塚尊俊は、憑物について以下のように述べている。 わが国における憑きものは、元来は決して悪いものではなかった。つまり人の持…

憑物ってなに? - キツネにならきっとわかる憑物の話 -〚 第零話 〛

ぼくが数年前に住んでいた山間部の小さな地域には、今でも「外道(ゲドウ)」とか「ゲド」と呼ばれる、いわゆる憑物(つきもの)の話が残存していた。 話だけではなくて、実際にその憑物筋の家がいまだにあるようだったが、調べたわけではないので、定かでは…