二十二時も過ぎた、真夏の夜の日記(ひのしるし)。
この数日、食後の赤ワインのアテは、ヨーグルト。
テーブルに並べたそれを今、じっとしばらく眺めていて、どす黒い赤と、ぼやけた白色が、やけに陰惨かつ卑猥だと感じ、同時にもしこの光景を誰かが目にしたら、その見知らぬ誰かもそう思うかもしれないとふと思って、可笑しくなって吹き出して後ろにひっくり返って、その拍子にテーブルに右足のスネをぶつけ、やや負傷して細い血を流している真夏の淡い夜。
雑多なセミがやけにうるさい。
クソほど巨大な苦しみの塊を、自分の小さな光で、鋭く尖った"マイ"聖剣エクスカリバーみたいなもので、切り刻み、ある時は押しつぶしながら前に進む日々。
けれど、切れないものは切れない。エクスカリバーでも倒せない最高位のモンスターみたいなものがウヨウヨいる。
なんだかそのわけのわからない理不尽さに負けそうになるが、結構強いので負けねえ。
でも、もう十分だろ、もう耐え抜いただろ。
どこかにゆきたい。遠くの、どこかに、澄んだ空気が漂う場所に、ただただ、ゆきたい。
装備品はすべて捨てる。エクスカリバーも、村正も、ロンギヌスの槍も、もういらない。
武器がなくても、鎧も盾もなくてもいい場所が、きっとあるはずさ。
二十二時を過ぎて書き出したこの日記は、二十三時になる前に書き終えなければいけない。書き終えなければ、死ぬ。
いつだってぼくは、自分にクレイジーなルールを課す。
そういうことが、やけに楽しい。
こんちくしょ〜。