ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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スティーヴン・キング原作『ミスト』TVシリーズの予告編解禁!霧の中には大抵何かが潜んでいる。

米国のケーブルTV局“Spike”において、スティーヴン・キング(Stephen Edwin King)の同名小説を原作としたTVシリーズ版『ミスト』(The Mist)が製作されているという話を耳にしたのはもう随分前のことだが、ついにその初となる予告編が公開されたようである。

 

The Mis

image source : theist_keyart « Spike Press

 

この『ミスト』に関しては、かつてフランク・ダラボン(Frank Darabont)が監督及び脚本を手掛けて映画化し、2007年に劇場公開されている。

 

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フランク・ダラボンと言えば、過去にもスティーヴン・キングの小説を原作とする映画『ショーシャンクの空に』(The Shawshank Redemption)や『グリーンマイル』(The Green Mile)でも監督を担っており、また今話題のゾンビドラマ『ウォーキング・デッド 』(The Walking Dead)の第1シーズン第1話を監督したことでも知られている。

 

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映画版での結末はキングの原作とは大きく異なっているのだが、物語の大筋としては、メイン州を見舞った激しい嵐の後、謎の霧に包み込まれた街で巻き起こる怪異と、その中で秩序を失ってゆく人々の姿が描かれている。

 

そして今回TVシリーズ化された『ミスト』に関しても基本的には原作に忠実という考えはあるようだが、継続したドラマを成立させる上で少なからず変更はされているようであり、結末に関しても映画版同様、独自のものになっているらしい。そして前述のSpikeにて、2017年6月22日から放送開始予定だとのことである。

 

霧をテーマにした映画と聞いてすぐに頭に思い浮かぶのは、もちろんこの『ミスト』もそうなのだが、個人的にはジョン・カーペンター(John Howard Carpenter)の『ザ・フォッグ』(The Fog)の方が圧倒的優勢を誇っている。ちなみにこの『ザ・フォッグ』はジョン・カーペンター製作の元に、ルパート・ウェインライト(Rupert Wainwright)監督によりリメイクされ2005年に公開されているが、ぼくはリメイク版は未鑑賞であり、今のところ観る予定もない。

 

上記のタイトルである『ミスト』も『フォッグ』も同じ“霧”を意味する言葉だが、どうやらその濃さの問題で名前が区分されているらしい。霧を意味する英語にはもうひとつ“ヘイズ”があるのだが、濃さの順番で言えば、フォッグ>ミスト>ヘイズ、となるそうである。

 

さてそんなわけで、『ミスト』の予告編は最後にご紹介するが、ちょっとだけ脇道に逸れて個人的な“霧”にまつわる話をさせていただきたい。

  

現在ぼくが生活している地域では、季節によっては頻繁に濃い霧が発生して、街中をすっぽりと包み込むことがある。その光景は確かに幻想的で非常に美しいのだが、実際に霧の中に足を踏み入れてみると、その幻想の中には疎らにではあるが確実に怪しげな恐怖が混じり込んでいるような気がしてならない。

 

数年前に生活していた山間部のとある場所に、“怖ろしい”と口々に噂される古いトンネルが存在した。トンネルで怖ろしいと言えば・・・、まあ何が怖ろしいのかはある程度想像が付くと思うが、結論から言ってしまうとその何が怖ろしいのかという部分がベールに包まれていて、ぼくの頭の中では今でも謎のまま漂っている。

 

そのトンネルでの霧にまつわる話である。

 

ぼくはその地に住んでいる頃わりと頻繁に、例えば散歩のついでなどでそのトンネルを徒歩で通っていた。かなり古いもので内部には照明など付いていないに等しいトンネルだったので、流石に日が落ちてから通ることはなく、通っていたのはいずれも昼間だが、ぼくにはその手のモノ、いわゆる幽霊だったりが見えたり感じたりする能力は自覚としてはないので、特に怖いとは感じなかった。しかし、ある日の散歩中にソーシャルメディアにそのトンネルの写真を投稿したところ、地元の知り合いたちからこぞってコメントが書き込まれた。内容はどれもほぼ同じで、「そのトンネルはあぶないから通っちゃダメだ!」というものだった。

 

何があぶないのかという肝心な部分は誰も教えてくれなかったのだが、それ以降、なんだか周囲の噂の影響で、そしてその写真へのコメントの反響で、意味もわからず怖くなってしまって、そのトンネルを通ることは控え気味になったのだが(それでもたまに早足になりながらも通ってはいたのだけれど・・・)、ふと思い返してみると、初めてそのトンネルを見つけて中に入った際に、やや不可思議な体験をしたのである。

 

その日、トンネルに足を踏み入れてから気が付いたのだが、出口の向こうがやけに濃い霧に包まれている。入る前にはそんな霧はなかったように思ったので、ちょっと不思議に感じた。けれどまあ気にせずに、そのまま出口に向かって進んでいると、トンネルの壁によくありがちな滲み出た水のような“シミ”があちこちに見受けられ、そのひとつが完全に“ピーチ姫”みたいな、つまりティアラを頭に乗せてドレスを着た女性のシルエットだったので、つい持っていたカメラのレンズを向けてシャッターを切った。すると、その直後に背中に背負っていたリュックを引っ張られたような感覚があり、道路に尻餅をついて背後の壁に倒れ込んでしまった。その時は、写真に夢中になっていて無意識に後退した際に何かに足を躓かせたのかと思っていた。だからまあ気にせずに、再び霧に煙る出口を目指し、ようやくトンネル内部から外に出ると、霧がまったくなくなっていたのである。

 

霧はどうしたのだろうかとちょっと不気味な気もしたのだが、しかし、明確な恐怖を含んだ体験はその後にあった。ふと、トンネルの出口の脇にある山肌をコンクリートで固めた壁の排水溝の管の穴に目を向けると、その穴から異常な数の巨大なゲジゲジが湧き出していたのである。10匹や20匹などという軽いものではなく、まさに無数と言うべきものだった。穴の中から次から次へとゲジゲジが湧き出して、その壁に広がってゆくのである。その光景に若干凍り付いたものの、ついその様子にもカメラを向けて何度かシャッターを切ってしまった。ただその湧き出しが一向に止む気配がないので流石に気分が悪くなり、その場は早々に立ち去り道の先に歩を進めた。

 

すると程なくして、まだトンネルの出口から20メートルもいかないカーブ掛かった道路のど真ん中に、2匹の子猫の死体が転がっていたのである。しかも2匹とも、首が刃物ででも切り落とされたようにしてなくなっていて、周囲にはその首がまったく見当たらなかった。その道路はほとんど使われなくなった旧道で山道のためカーブもひどく、日に何度か通行する路線バス以外で車が走っているのにお目にかかったことはなかったし、そもそも子猫の死体は車にはねられたと言うよりは、首を切られて殺されて、道路に打ち捨てられているようにしか見えなかった。猛禽類に襲われたという可能性もあるが、鳶や鷹が首だけを切り取って持ってゆくということがあるのだろうか?そしてその光景にも、ついつい気になってカメラを向けてシャッターを切ってしまった。

 

その日は、嫌なものを立て続けに見てしまったなあとしか思わず、すぐに忘れてしまったのだが、家に帰ってから写真を確認すると、トンネル内の女性のシミと首のなくなった子猫は写っていたが、なぜかゲジゲジの写真だけがまったく撮影されていなかった。確かに何度もシャッターを切ったはずだったのだが、原因は不明である。

 

ここまでで、何が不可思議な体験なのかと言われれば、何かぼんやりとした奇妙なものであり、単なる偶然の出来事の重なり合いかもしれないが、総合的な体感として後から考えると、やけに不穏な影が漂っているような気がしたのである。

 

“悪魔”をテーマした西洋の映画を観ていると、邪悪な存在の到来の予兆として、排水溝などから不快害虫がウヨウヨと湧いて出て来るというシーンが描かれていることがある。例えばジョン・カーペンターの『パラダイム』(Prince of Darkness)だとか、フランシス・ローレンス(Francis Lawrence)の『コンスタンティン』(Constantine)でも似たようなシーンがあったかと記憶している。つまりトンネルの出口で見た異常な数のゲジゲジは、なにかしらの不吉な予兆だったのではないのかと、勝手に想像しているわけである。

 

さて、トンネルにあまり近寄らなくなってからしばらく経ったある日のこと、近所に住む老婆が、地域の飲食店に働きに来ている中国人女性と立ち話をしているところにたまたま通りかかったのだが、その話題というのが奇妙な怪談めいた内容だった。挨拶がてらその立ち話に加わって耳を傾けていると、その集落で新聞配達をしている〇〇さんが、配達中によくおかしなモノを見るらしい、という内容だった。新聞配達なのでもちろん早朝、季節によってはまだ薄暗いことも多いのだろうが、そのおかしなものを見るのは決まって霧の出ている日だということだった。

 

ぼくはその時ここぞとばかりに、「そのおかしなものっていうのは何なんですか?」と老婆に質問をしてみると、自分が見たわけではないから詳しくは知らないけれど、その人の話によれば四足の獣みたいに見えることもあるし、人間の上半身だけが地面を這い回っているように見えることもあるんだけれど、いずれも影みたいに真っ黒で動物でも人間でもないが、ただ見る時によって姿は違うにせよ明らかに同じものに感じる、という話だと教えてくれた。

 

そしてその影を見る場所というのが、例のトンネル周辺だということだった。

 

実はその話を聞く以前に、個人的にその怖いというトンネルのことに関して何が怖いのかを調べてみようと思い、地元の人々や何人かの古老に話を聞いてみたのだが、結局ほとんどの人からは、「さてねえ?」とか「そんな話、知らないねえ。」とかいう、ややぼかしのかかった回答しか得られなかった。ではいったいその怖いという噂はどこを発生源としているのだろうか?ということになる。ただ唯一、地域の生き字引的な最長老だけが、トンネルの上を通っている昔の古い道があって、ちょうどトンネルの真上には随分古い時代の遺跡のようなものがあるはずだという話を聞かせてくれた。そしてその道の入口は、トンネルの少し手前にある古い寺院の裏山の墓地にあるとも教えてくれた。

 

しかし結局、その遺跡らしきものを確かめにゆく前に、ぼくはその地を去ることとなってしまったので、実際にそこに何があるのかは、現時点では定かではない。

 

ちなみに前述の老婆が話してくれた怪しい影の話、その地域は過疎化の進む非常に小さな集落のため、もしそんな話があれば、おそらくその老婆以外の地元の人々の耳にも当然入っていて然るべきものなのではないかと思う。しかし他の人々にトンネルのことを聞いてもそんな話が飛び出してきたことはなく、ではなぜその老婆だけからしか聞けなかったのかと考えてみると、その老婆がその集落の出身ではなく移住者だという辺りに答えがあるのではないのかと思う。実は前述の、ぼくがソーシャルメディアに投稿したトンネルの写真にコメントを書き込んだ知り合いというのは、いずれもその集落の出身者ではなく移住者か、あるいはその地域に住んでいるわけではなく働きに来ている人に限られていたのである。そしてそのトンネルが怖ろしいという話も、前述の通り地元出身の人の口からは一切出てこないのである。

 

怖ろしいと噂のトンネル、ぼくの見たトンネルの出口の霧とトンネル内のシミ、不快害虫の異常発生と無残な子猫の死体、霧の出た日の早朝にトンネル周辺を這い回る謎の影、トンネルの上にあるという遺跡、トンネルに関しては「さあねえ?」として口を噤む人々の存在、これらのことから連想されるのは、つまりそのトンネルには、何か隠された秘密があるのではないのだろうかと、ぼくは考えている。

 

というわけで、『ミスト』とはまったく関係のない霧にまつわる話を繰り広げてみたが、まあ要するに「霧ってちょっと怖くねえ?」という雑談であった。

 

では最後に、『ミスト』TVシリーズから初公開の予告編をご覧いただきたい。

 

 

 

 

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