ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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ピエロが刃物を持ってはいけない理由

2016年10月4日火曜日の夜、英国、ニューカッスルのブレイクローで、ピエロの扮装をして通行人を驚かせていた13歳の少年がノーサンブリア警察によって拘留された。

 

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少年は翌水曜日、厳重注意を受けた後に釈放されているのだが、警察が問題視しているのは、その少年がナイフを所持していたことである。

 

Halloween

Halloween (1978) - IMDb www.imdb.com/title/tt0077651/

 

今、英国のロンドンでは、凶悪事件に巻き込まれることを恐れてナイフを持ち歩く若者が増えており、それが原因による刺傷事件、刺殺事件が急増していると、ロンドン議会の警察犯罪委員会が報告書を発表した。

 

25歳未満の若者によるナイフなどの刃物を使った事件は、2012年6月には1719件、しかし2016年8月には1749件に増加している。このような刃物を使った暴力事件が、ロンドンでは2014年6月以降増加傾向にあり、今年8月の数字は過去4年で最多を記録したという。

 

報告書によると、このロンドンでの刃物を使った事件のうち、ギャングによるものは5%未満に過ぎず、報告をまとめたロンドン議会警察犯罪委員会のスティーブ・オコネル委員長は、「ギャング暴力にばかり注目してしまうと、この犯罪の状況に何の効果もないのだが、そのことに気付いている人は少ない。」と話しているという。

 

そしてこれはロンドンに限ったことではなく、英国全土としてみても同じような傾向にあるという。

 

PCC報告書によると、若者がナイフを携行する大きなの理由は、「凶悪な犯罪から自分を守らなくてはならないと感じているから」だそうである。

 

ロンドン・ウェストミンスター地区のギャング対策担当によれば、「ナイフを持ち歩けば、自分が刺される可能性は大いに強くなる。しかもそれは、自分の持っているナイフで刺される可能性だ」と指摘しているそうである。

 

このことを踏まえて考えると、ニューカッスルで拘留された少年は、ピエロの演出、あるいは目的としてナイフを持っていたのではなく、日常的にナイフを持ち歩いていたのかもしれない可能性もある。ただもちろん、実際にナイフを振りかざしすような行為をして、人々を驚かせていたのなら、それはピエロの付属物として、ある人々をターゲットにして意図的に凶器としてのナイフを所持していたということになる。

 

31

31 (2016) - IMDb www.imdb.com/title/tt3835080/

 

同事件に関しては、その少年が誰かに害をなしたわけではないし、それが目的であったわけではないと判断されたので、単なるいたずらに過ぎないとされているが、同警察署の巡査部長は「しかし、彼は確実に人々に動揺を与えている」と述べている。 

 

例えば、彼の行動に対して、動揺するだけに留まらず、その末に注意を促す人もいるかもしれないし、怒りを覚えて掴みかかる人もいるかもしれない。その結果トラブルになり、彼はたまたま自分が所持していたナイフで、相手を傷つけたり、あるいは刺し殺してしまうとう結果になるかも知れない。

 

結果だけ見てしまえば、「イギリスのニューカッスルで、ついにピエロによる殺傷事件が発生!」とか、「イギリスに本物のキラー・クラウン出現!」と報道されることになるだろう。

 

あるいは前述のギャング対策担当が指摘するように、ピエロの扮装をしていた本人が自身の所持していたナイフで刺されることになるかもしれないし、さらには、ピエロの格好をした人物を危険分子とみなしたある人々が、自警と称して集団での暴力行為に及ぶというような、また別の問題の深刻的な悪化だって考えられなくもない。

 

つまり、このイギリスの例を見るとわかるのだが、この少年が行った単なるいたずらにも見える行為は、本質的なピエロの恐怖とはまた別の恐怖も産み落とす結果となっている。そのことにはもちろん、本人は気が付いていないはずである。

 

一見すると判別できない別種のピエロ・ウイルスが表面下では人々に圧倒的に感染してゆき、その影響により様々な症状の発病者が次々と現れてくる。その結果、社会的な背景などとも複雑に絡み合って、想像をこえた恐ろしい出来事に繋がってくるのかもしれない。

 

関連記事:ピエロの恐怖は、ソーシャルメディアで感染する。

 

いまアメリカ全土を騒がせているピエロの目撃報告とそれに付随した様々な事件、そしてアメリカに次いで広がりを見せるイギリスでのピエロの影、これはある学者が指摘するようなファントム・クラウン現象だけには留まらず、また道化恐怖症あるいはコルロフォビアと呼ばれるものの影響だけでもなく、その亜種の、まったく未知の種類のおぞましい恐怖の蔓延のはじまりに過ぎないのではないのかと、個人的には感じている。

 

It

It (TV Mini-Series 1990) - IMDb www.imdb.com/title/tt0099864/

 

いずれにせよ、ハロウィンで『イット』のペニーワイズのコスプレをする際には、間違ってもククリナイフとか持っちゃダメだよ。

 

 

 

 

 

月白貉