ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲が自らの感覚で日本を歩きまわって見聞を広めたように、故郷を離れて旅を続けるぼくが、ぼくの感覚でその土地を歩き回って、見たり聞いたり嗅いだり触ったりした、ぼくの見聞録です。

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サツキもメイも知っている、本当は恐い『となりのトトロ』。

日本国民の約116%くらいが、おそらくは知っているのではないかというほど有名なアニメーション映画『となりのトトロ』。

 

ぼく自身もDVDを所蔵していて、軽く四十回は観ていると思う。ところが、つい最近観返そうと思って家中を探したのだけれど、何故かどこにも見当たらない・・・、いったいどこにいったんだろう。まあ、そんなどうでもいい無駄話はさておき、先に進もう。

 

My Neighbor Totoro

 

もちろんここで『となりのトトロ』とはどんな映画なんだということをわざわざ説明しなくともいいと思うのだが、念のために簡単に説明しておこう。

 

父親と二人の娘の家族三人(厳密には四人だけど劇中では母親は入院中)で引っ越してきた田舎に、トトロっていう化け物がいるよ、すぐとなりだよ。

 

という話である。もしかすると、『となりのトトロ』を観たことも聞いたこともないという人だっているかもしれない。もし万が一、そういう人がこの簡単なあらすじを読んだら、恐い話かと思うかもしれない。そのポイントとしては、「引っ越してきた田舎の家のすぐ隣に化け物がいる」という部分である。そう考えると、『となりのトトロ』というタイトルもちょっと恐いような気がする。化け物の名前が、なんだか滑々しているようで、隣で何かが滴っているような感じがする。

 

ぼくは実際に、この映画を何度となく観返していて、もちろんすごくハートウォーミング映画なのだが、ふと、見方によってはちょっと怖いなあと思うシーンがある。

 

例えば、メイが、あっ、まったくこの映画を知らない人のために、簡単に登場人物の名前を先に言っておかなければなるまい。

 

物語の主人公となる二人の娘は、姉が草壁サツキで、妹が草壁メイという。ちなみに、お父さんは草壁タツオ、お母さんは草壁靖子。母親だけ下の名前が漢字である。ということはおそらく、二人の娘の名前は父の意向で、あるいは父の名前に倣って、カタカナにされたのであろう。そして、この家族以外にもわりとよく顔を出すのが、近所に住む小学生の大垣勘太と、引っ越してきた家の管理をしている大垣家の祖母である。

 

さらにはもちろん、もうひとつの主役は、化け物のトトロたちである。

 

で、話を戻すと、例えばメイが初めて巨大なトトロに出会うシーンがあるのだが、あそこなどは、トトロが大口を開けた後に、メイがガブリと食べられてしまうんじゃないのかと思って観ていると、ちょっとゾッとする。あとは、雨の夜に雑木林に囲まれた薄暗いバス停で父の帰りを待っているシーンがあるが、実際にあのシチュエーションに自分がいたとして、突然となりにトトロが立っていたら・・・、しかもサツキはその時が初めてのトトロとの遭遇なわけなので、もしぼくなら、絶対にワクワクなんかせずに、とんでもなく怖いと思う。まあ、あのシーンではさすがにサツキもちょっとビビっているけれど、でもうっかり傘をあげちゃう。ぼくなら、あげないでたぶん逃げると思う。なんだったら背中におんぶしたメイをほっぽり出して逃げると思う。そんなことを言うと人格が疑われるので、メイはちゃんとおぶったまま逃げると、訂正する。それでまたトトロが大口を開けて吠えるから、やっぱり食べられちゃうんじゃないのかと思って、ゾッとしてしまう。

 

劇中ではご存知のように、そんなトトロたちと姉妹との温かい交流が描かれるのだが、よくよく観てみると、巨大なトトロの顔の表情はちょっと・・・コワい。目とか完全にイッちゃっている。だから、あの映画の基本的なスタンスとしては、やはりトトロは、近所に住む可愛らしい野生動物的なものではなく、正体不明な異界の怪しげな存在だという描き方をしているのではないかと、個人的には思っている。だから本当は怖いと感じて当たり前なのではないだろうか。

 

トトロのモデルは、ノルウェーの伝承に登場する妖精、「トロール」だと言われることがある。

 

そのトロールとはどんなものかと言えば、巨大な体で怪力を持ち、容姿は醜悪、凶暴であまり知能は高くない。さらには、体に深い傷を負ってもすぐに組織が再生され、切られた腕程度なら繋ぎ治せるという話もある。ファンタジー文学などには、このトロールをモデルにした怪物の姿を度々見ることが出来る。例えば、J・R・R・トールキンの『ホビットの冒険』や『指輪物語』、またJ・K・ローリングの『ハリー・ポッター』シリーズなどにも登場する。

 

Theodor_Kittelsen_-_Sjøtrollet,_1887_(The_Sea_Troll)

 

劇中にも、「絵本のトロールのこと!?」というようなサツキの台詞が出てきたように思うし、このトロールの描写は一部トトロにも通じるところがないわけではない。しかし、トトロ自体は実際にはトロールをモデルにしたものではないという話もある。

 

さてもうひとつ、ぼくが怖いなあと思うシーンがあるが、感のいい方はもうお気付きであろう。そう、あの冒頭の風呂場でのシーン、ススワタリと呼ばれる真っ黒いモノが、ザワザワザワっと這い回ってすごいスピードで逃げてゆくシーンである。ぼくはいつもあれを観る度に、現実世界のあの嫌な虫、ゴキブリを思い出してしまう。それはたぶん、ぼくだけではないと思う。そしてもし、自分の部屋に帰ってきて玄関のドアを開けたら、あんな風にしてゴキブリが逃げていったら・・・、凄まじい恐怖だと思う。

 

以前、沖縄に旅行した知人が、夜のとある繁華街の飲食店の裏の壁に、三千匹のゴキブリがザザザザっと走り去るのを目撃して肝が潰れたと言っていたことを思い出す。ちなみに彼は、ぴったり三千匹だと無駄に断言していたが、その部分を強調する意味は、まったくわからなかった。すごい数だということが、言いたかったのだろうか。

 

さて最後に、トトロのスゴく恐い姿を描いたアート作品をご紹介したい。

 

スウェーデンのデニス(Disse86)さんというアーティストが描いた、トトロの姿である。

 

Totoro

Disse86 (Dennis) - DeviantArt

 

凄まじく恐ろしいトトロだけれど・・・、もし『となりのトトロ』を実写化したら、案外こんなものなのかもしれないと思ったりする。 ちなみにデニスさんは他にも凄くクールでカッコよい、そして恐ろしい作品を描いているので、もし興味のある方は、以下のリンクから是非にもご覧いただきたい。このテイストで、クマのプーさんとかピカチュウとか、描いています・・・。

 


とまあそんなわけで、『となりのトトロ』は誰もが認める非常に素晴らしい作品だけれど、そしてぼくもすごく大好きだけれど、ちょっと観方を変えると、なかなか恐いシーンの連続で、それはそれで楽しめますよっていう、ごく個人的な見解の話である。

 

そういえば、サツキとメイは実はすでに死んでいるとかいう、ケンシロウの台詞めいたとんでもない都市伝説があったけれど、そういう話は、なんだかベタでチープな創作ネタっぽくて、ぼくとしては、あんまり怖くないよねと思う。だって今回お話したように、普通に本編観てるだけでも、じゅうぶん恐いからねってことで、お開きとさせて頂く。

 

あ〜、『となりのトトロ』観たくなったけど、DVDどこいったんだろうなあ・・・。

 

My Neighbor Totoro (Two-Disc Blu-ray/DVD Combo) (1988)

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月白貉