ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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ハトマダラ序説

東京新宿のとある場所に、「鳩斑(ハトマダラ)」と呼ばれる場所があることをご存知だろうか。

 

かつて東京都内にはこの鳩斑と呼ばれる場所が、非公式にではあるが確認されていただけでも七ヶ所(浅草、渋谷、池袋、中野、上野、秋葉原など)存在した。しかし2017年の調査で、明確に現存している鳩斑は新宿の一箇所だけを残すのみとなっている。

 

この鳩斑とは別名「鳩磁場」とも呼ばれるもので、鳩の死体が集中して溜まる場所のことを称している。

 

私自身、この新宿の鳩斑を一年間独自に調査した経験があるが、この場所に溜まる鳩の死体の数としては一ヶ月平均でおよそ750羽を越す数にのぼっている。また、この場所に溜まる鳩の死体には夜間および暗闇で微弱に発光するという特徴があり、かつ高レベルの放射能汚染が確認されている。

 

鳩の死体が溜まるということは当然生きている状態の鳩がこの場所に飛来して群れるわけであるが、この原因としてその場所の地下から何らかの特殊な電波あるいは磁力が発せられており、その電波あるいは磁力が鳩に影響を及ぼし鳩を呼び集めると同時に、最終的には鳩に死をもたらしていると考えられている。私が実際に目にした鳩の行動として、鳩はその場所に飛来した直後から軒並み地中を嘴で狂ったように掘り進めながら頭部を埋め込ませ、そのまま地中に頭部を突き刺したような状態になり息絶えている。この間およそ10分ないし15分程度で鳩は死に至っている。

 

またこの鳩の死体の回収に関して、おそらくは東京都あるいはその委託業者のものだと思われる回収車によって定期的に運び去られる現場を何度となく目にしたものの、東京都の然るべき部署に確認したところ、そのような鳩の死体回収および民間業者への委託は行っていないとの回答を得ている。

 

この件について、ある筋の話によれば、回収がされなかったあるいは遅れた鳩の死体に関して、この鳩の死体は死んでからある一定時間を過ぎると爆発したとの情報を得ている。

 

このことから、この鳩斑と旧日本軍が極秘裏に開発していた生物兵器の関連性を唱える学者も存在する。この学者によれば、現在でもこの生物兵器研究はもちろん極秘裏にではあるが継続されており、東京都の地下に張り巡らされた軍事的な研究施設網と鳩斑ポイントの位置関係にも言及している。さらに都内における鳩の飛来集中地域(浅草の浅草寺など)において、そのほとんどの鳩がある時期に忽然と姿を消した事例ならびに時期に関連して、鳩を用いた生物兵器製造および紛争地帯への提供と、この生物兵器開発における米国軍部の関与も囁かれている。

 

別の学者による説として、ロシアのチェルノブイリ原発事故後に周辺地域の高レベルな放射能の影響で特質化あるいは突然変異化した巨大な鳩が日本列島に多く飛来していた時期があり、その異常個体の数羽を日本政府が捕獲し、何らかの研究を行っていることと鳩斑の関連性が伝えられている。この突然変異した鳩に関しては世界各地で目撃が相次いで報告されているが、最大のものでは全長がおよそ30メートルにも及ぶと言われており、同学者によればその巨大鳩は鳩をはじめとする一部の鳥類に対して特殊な音波を飛ばし呼び寄せる習性を得ているとのことで(一説には巨大種の捕食行為に関係するといわれているが)、鳩斑ポイントの地下にある施設内にこの巨大種が捕獲されている可能性を強く指摘している。

 

また都内全域では近年、AIを搭載した高知能の人工ロボット鳩が確認されており、鳩斑スポットの多くが現在消失していることと何らかの関係性があるのではないのかと言われている。

 

ただしこれまで、鳩斑および人工ロボット鳩の存在あるいは確認に関しては東京都23区内のエリアに限られており、日本列島におけるその他の地域での情報は皆無となっていたのだが、その初となる関連事例として、2018年2月に鳥取県鳥取砂丘内において放射能汚染された鳩の死体を多数使用して無許可の大規模な宗教儀式を行ったとして、新興宗教団体を名乗る「ネオンバルン」という組織が摘発されている。

 

しかし残念ながら現時点では、ネオンバルンと鳩斑の関連性は明らかにはなっていない。

 

 

 

月白貉