アンデルセンにインスパイアされた騎士と尼僧の物語、マイケル・パンデューロ監督『ザ・サンケン・コンヴェント(原題:The Sunken Convent)』
デンマークの童話作家であり詩人ハンス・クリスチャン・アンデルセン(Hans Christian Andersen)の物語を読んだことがある方は多いに違いない。
『親指姫』(Tommelise)、『人魚姫』(Den lille Havfrue)、『裸の王様』(Kejserens nye klæder)、『みにくいアヒルの子』(Den grimme Ælling)、『マッチ売りの少女』(Den lille Pige med Svovlstikkerne)など、日本でも有名な話は数々ある。
アンデルセンの作品は民俗的な説話をベースにした童話ではなく自己の創作的童話がほとんどであり、初期の作品では“死”というもの以外に幸せになる術を持たない貧困層への嘆きと、そしてそれに対して無関心を装い続ける社会への嘆きを、童話という媒体を通して訴え続けていたと言われている。
ちなみにこの「死以外に幸せになる術を持たない貧困層」という考え方に関しての作中の表現は晩年緩やかになり、死以外にも幸せになる術があることを作中に書き残しているという。
また極度の心配性であったアンデルセンは、外出する際、非常時に建物の窓からすぐに脱出できるようにと必ずロープを携帯していたとか、眠っている間に死でいると勘違いされて埋葬されてしまった男という都市伝説を聞いて以来、自分が眠る時には必ず枕元に「死んでいません」という書置きを残していたという話がある。
さらに生涯独身だったアンデルセンが女性にモテなかった理由のひとつに、好きになった女性に対するラブレターとして、自分の生い立ちから作家としてデビューした経緯、また初恋に敗れた悲しさなどを綿々と綴った長文の自伝を送るという屈折した傾向を持ち合わせていたからだとも言われている。
さて、そんなアンデルセンの作品の中に『Det Sjunkne Kloster』というものがある。ぼくはデンマーク語にはまったく精通していないのだが、おそらく「沈んだ修道院」という意味だと思う。インターネット上で探してみると、デンマーク語の原文は見つかるが、邦訳はされていないのではないだろうか。原文をざっくり読んだ感じでは、その物語は騎士と修道女にまつわるものらしい。
今回は、その物語にインスパイアされて制作された短編作品を取り上げてみたい。
マイケル・パンデューロ(Michael Panduro)監督による『ザ・サンケン・コンヴェント(原題:The Sunken Convent)』という作品である。
短編作品のため物語の概要について多く語ることは控えさせて頂くが、アンデルセンにインスパイアされたとは言え、成人指定の付いた作品である。
しかし一見の価値あり!個人的には完全に心を奪われて魅入ってしまった。
日曜日の夕暮れ時に観る作品としてはやや重苦しいかもしれないが、ここ数ヶ月の間に鑑賞した作品の中では、ダントツに素晴らしい作品には違いない。
というわけで、興味のある方は本編をぜひご覧いただきたいが、本作品はウェブサイトへの埋め込み制限がなされているため以下のリンクからvimeoに遷移して本編を御覧いただきたい。
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