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ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲が自らの感覚で日本を歩きまわって見聞を広めたように、故郷を離れて旅を続けるぼくが、ぼくの感覚でその土地を歩き回って、見たり聞いたり嗅いだり触ったりした、ぼくの見聞録です。

相談

小説 小説-吸血鬼

「ご乗車ありがとうございます、まもなく大田市大田市にとまります、お出口左側です。」

 

浦島さんは右手の人差し指を額に突き刺してから、そろそろですねとつぶやいた。

 

「浦島さん、唐突で申し訳ありませんが、相談したいことがありまして、」

 

ぼくが言葉を終える前に、 浦島さんはヨレヨレのトレンチコートを右手でぐるぐるっとまわしながら豪快に身にまとい、 瞬きする間に席を離れ、汽車の乗降車口に立っていた。

 

「あなた恋人はいますか?」

 

汽車が駅に止まって乗降車口がプシューっとおとをたてながら開くと、 ホームに一歩足をかけながら、 こちらを振り返らずに浦島さんが大きな声で叫んだ。 そしてそのままぼくの応えは聞かずに消えていった。 駅のホームを車窓からのぞき込んだが、 すでにそこには浦島さんの姿はなかった。 まさに消えていた。 するとその直後に、ぼくのiPhoneに「ピコーン」というメールの着信音があった。 直感的にそれが浦島さんからのものだということにぼくは気付く。 もちろんぼくは浦島さんには、 メールアドレスも電話番号も教えてはいない。

 

『前略、 とはいえ、略するほどの余裕もありはしませんでしたがね。

 

あなたに恋人がいるのかいないのか、 それがどうにも気になりました。

 

いえいえ、 なにもあなたに恋人がいたら、 とって喰おうってことではありませんよ。 あなたはご心配なさるでしょう、 なにせ私は血を吸うことを糧としておりますからね。 それは心配ご無用。 わたしは職業柄、 まあ元々の職業ということですが、 そういうことに敏感でしてね、 ターゲットに恋人があるのか、あるいは妻子があるのかということです。 それはとても重要なことですから。もう何十年もそういうことを生業にしていますと、 あえて聞かずともちょっと言葉を交わせばそういうことはわかるのです。

 

ただね、白酒さん、 あなたはわからないんだなあ。 なぜだかわからない、わかりませんでした。 確信が持てませんでした。 いやいや、まいりました。 ずいぶんこちらの都合で聞き耳をたてましたが、 さてわからないのです。 どうやらある部分においてはわたしの負けのようですね。

 

あなたのご相談、ぜひお聞かせください。

 

わたしは先ほどお話しした湯治場に、 しばらく滞在いたします。 しばらくとは永遠、あるいはどうでしょうねえ。 銀を採掘していた坑夫が日常的に利用してたという隠れた湯治場です。

 

お待ちしております。

 

Uより 』

 

 

 

 

吸血鬼の事典

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月白貉