嵐の夜に屍を埋めに来る男
昨日の夜中から朝にかけて、ものすごい強風が吹き荒れていた。
実家はもうだいぶ古いので、まさに家が震えんばかりだった。
真夜中にその震える音で目が覚めてから朝まで、夢と現が定かではなかった。
その強風の中、誰かが家の周りをぐるぐると回って、最後に、もう更地になってしまった家の庭に、革製のバッグをおいて立ち去ったと、真夜中に母が父に話している声が聞こえた。足音が絶え間なく響いていて、心配になって外を見に行ったらバッグがおいてあった、と。そういう話し声が聞こえた。
夢と現が定かではない。
朝方、ぼくの腕をたたくものがいた。そして目が覚めると、もう十時を回っていた。誰が腕をたたいたのかは、わからなかった。強い風の吹く夜は、夢と現がかき回されて、不思議なことがおこるのだろう。
そうだもうひとつ思い出した。
革製のバッグの話の続きを、母が話していたんだ。この土地は、死んだ人間を埋めるために特殊な仕様になっている。だから決して庭を掘り起こしたりしてはいけない。深い場所には到達してはいけない。
そういう話も真夜中にしていた。
風はいったんやんだが、ぼくが朝ごはんを食べ終えると、また激しい風が吹き始めた。家が揺れている。
さて、庭を掘り起こしにいってみよう。
昼は夢 夜ぞ現
月白貉