ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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魔物の顔は見えない、襲われる時しか -『プレデター2』(Predator 2)

ぼくが子どもの頃に、映画の中で「近未来」として描かれていた年代があった。

 

それは1990年代の後半から2000年代の初頭にかけてだが、いまやすでにそんな近未来を通過してなお、先へ先へ行こうとしている人類がいる。

 

今の世界が、映画の中で描かれていた近未来の技術あるいは荒廃には到底及んでいない部分もあるし(いや、もしかしたら馬鹿な一般庶民が知らされていないだけかもしれないけれど)、疾っくの疾うに超えてしまっているものもある。

 

例えば2015年は、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(Back to the Future)シリーズのパート2で、ドクことエメット・ブラウン博士とマーティ・マクフライがタイムマシンのデロリアンに乗って訪れる近未来として描かれていた。

 

 

あの映画で描かれていた近未来の技術は今でもまだ実現されていないものが多く見受けられる。飛行機能のついた自家用車や宙を浮くホバーボード、あるいは自動でサイズを調節してくれるスニーカーや洋服が登場しているが、2016年現在、ぼくの知る限りではそういった技術が当たり前のように日常生活の中で活かされている光景はまだ見たことがない。

 

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さて、そんなわけで、「かつて近未来として描かれていた世界」というキーワードを元に映画をひとつチョイスして、勝手気ままに語ってみたいと思う。

 

もちろんジャンルは「地球外生命体映画」であることは言うまでもないが、地球外生命体映画は大枠でいうならばSF映画に属するものなので、近未来というキーワードは実に当てはまりやすいジャンルである。こと、地球外生命体映画ということになると、まあ大抵は近未来だべさ、と思いがちではあるが、細々分化ジャンルでいうところの、

 

「地球襲来型地球外生命体映画」あるいは「地球来訪型地球外生命体映画」においては、現在の地球が舞台になっていることのほうが圧倒的に多い気がする。

 

というのも、地球外生命体が勝手に地球にやってくるわけであって、地球自体のテクノロジー云々は関係がない。地球外のどこかで高度な技術を持って暮らしている奴らが、現時点での技術しか持たない地球を訪れたり、もしくは侵略しに来たりするわけであって、地球自体が近未来かどうかということがさして重要項目ではないのである。もっといえば近未来ではなく現在の方がよりリアリティーがある分、好都合なわけである。

 

いっぽう「地球外遭遇型地球外生命体映画」に関して言えば、

 

近未来でなければ辻褄が合わなくなってしまうケースがほとんどなので、こちらのほうは大いに近未来として描かれている作品が多いと思う。なぜなら現時点では人類が宇宙あるいは他の惑星にお気軽に出掛けられるような技術は存在しないからである。もちろん、月でばったり遭遇くらいのレベルなら、ずい分昔から月面に降り立っている人々もいるくらいなので、近未来ではなく現在が舞台でも成立するかもしれない。

 

ここで少しだけ余談ではあるのだが、かの「アポロ計画」における1969年のアポロ11号による人類初の月面着陸、あの世界中が熱狂した中継映像は偽装であると言われているのは、みなさんもご存知のことだと思う。

 

「空気がないはずの月面に立てた星条旗がはためいてるじゃん!」とかいう例のアレである。

 

いろいろな方面からの指摘において、月面着陸の中継映像偽装説はずいぶん前から存在しているのだが、2015年、その決定的とも言える映像が公開された。

 

映画監督スタンリー・キューブリックによる、月面着陸映像偽装告白の映像がそれである。

 

スタンリー・キューブリックと言えばもちろん多くの人がその名を知る映画界の巨匠であり、ぼくの敬愛する映画監督のひとりである。キューブリックはすでに他界して久しいが、「2001年宇宙の旅」(2001: A Space Odyssey)、「時計じかけのオレンジ」(A Clockwork Orange)、「バリー・リンドン」(Barry Lyndon)、「シャイニング」(The Shining)、「フルメタル・ジャケット」(Full Metal Jacket)などなど、多くの名作を世に残している。

 

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そんなキューブリックの死後15年を経て公開されたとされるインタビュー映像の中で、キューブリック自身が「私が月面着陸のシーンを撮影した。」と告白していることで話題となった件は、みなさんも知るところだろうと思う。ただこの映像に関してはいろいろな噂が飛び交っており、その信憑性については疑問視する意見も多いのは言うまでもなく、とある映画に絡んだ単なるバイラル広告だともされている。もちろんそうなれば、映像に登場しているキューブリックは偽物だということになる。

 

まあ、この映像はひとまず置いておくとしても、当時の世界情勢に絡むアポロ計画陰謀説は根強いものであり、多くの人びとが疑問の声を上げているのは周知の通りである。ただ宇宙事情あるいはNASA事情にはまったく通じていないぼく自身なので、当時はさておいても、現時点で人類が月に降り立ったり出来るものなのかさえも、実際にはよく理解していないような状態である。そのため、結局は下らないゴシップに左右された誤った情報を受け取って、結果洗脳されてしまうという結末になる。それがいわゆる、世界中の多くの人々がメディアによって操られている「陰謀」なるものなのであろう。

 

さて前置きが長くなるのが癖なので、そこはご容赦いただいて、映画の話題に移ろうと思う。

 

前述した話でゆくと、近未来に絡めやすい「地球外遭遇型地球外生命体映画」でくると思わせておいての、実はチョイスしたのは「地球襲来型地球外生命体映画」なのである。そして加えての「続編だけど名作映画」でもあったりする。

 

というわけで、今回の地球外生命体映画は「プレデター2」(Predator 2)である。

 

 

プレデター2」は1990年(日本では1991年)に公開されたアメリカのSF映画であり、かの地球外生命体映画の名作「プレデター」(Predator)の続編として製作されたものである。 

 

 

監督はジャマイカ生まれのスティーヴン・ホプキンス、彼はぼくの鑑賞済み映画でいうと、エミリオ・エステベス主演のアクション映画「ジャッジメント・ナイト」(Judgment Night)や、ジェフ・ブリッジストミー・リー・ジョーンズが出演する「ブローン・アウェイ/復讐の序曲 」(Blown Away)、そしてマイケル・ダグラス主演の人喰いライオン映画「ゴースト&ダークネス」(The Ghost and the Darkness)などを手がけている。

 

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どの映画もそこそこ観られる映画だったと記憶しているが、やはり代表作と言われれば、この「プレデター2」に他ならないだろう。

 

主演はマイク・ハリガン警部補(フルネームはマイケル・R・ハリガン)を演じるダニー・グローヴァー

 

ぼくの年代から見る彼の代表作と言えば、やはり「リーサル・ウェポン」(Lethal Weapon)シリーズのロジャー・マータフ役であろう。ちなみに「プレデター2」の中では高所恐怖症の警部補役を好演している。

 

 

ダニー・グローヴァーの対抗馬として登場するのが、ピーター・キース特別捜査官役を演じるゲイリー・ビジーである。

 

ゲイリー・ビジーと言えば、アクション映画の悪役というイメージが強い。ダニー・グローヴァーとは「リーサル・ウェポン」でのジョシュア役としても共演しているし、ぼく個人としては「沈黙の戦艦」(Under Siege)でのクリル中佐役が印象深い。当然ながらどちらも悪役である。

 

 

そしてもうひとり、ぼくの個人的な趣味になるが、忘れてはいけない俳優が登場している。

 

フィル・ハイネマン本部長役を演じるロバート・ダヴィである。

 

ロバート・ダヴィと言えばもちろん、ぼくも、そしてみんなも大好きな映画「グーニーズ」(The Goonies)で演じたフラッテリー一家の長男、ジェイク・フラッテリー役を忘れてはいけないであろう。その他にも「ダイ・ハード」(Die Hard)での、根性が悪そうなFBI特別捜査官のビッグ・ジョンソン役も印象深い役のひとつである。

 

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さて、ではこの「プレデター2」はどんな内容の映画なの、ということをあっさり薄めの塩味でご説明すると、

 

昔、南米(正確には中米)のジャングルで暴れてた例の奴が、また地球に来てるらしいよ!という話である。

 

さて、実はこの映画はいちおう「近未来」というシチュエーションを想定して描かれている。

 

前述したようにアメリカにおいての公開が1990年なのであるが、この物語の舞台となるのは1997年という設定なので、確かに近未来である。しかし、劇中で近未来を示唆するような表現や描写は、日本人のぼくが一見する限りだとあまり明確には描かれてはいないように思ってしまう。強いてあげるならば、治安の状況だったり、天候あるいは気温上昇のことだったりするのかなあと勘ぐってみたりはする。

 

ちなみに前作である「プレデター」においての舞台は、おそらく現在(1987年当時)の南米、正確に言うと中央アメリカに存在するという設定の架空の国「バル・ベルデ」であるが(余談だがバル・ベルデという架空の国名は、複数の映画で共有の設定を持って使われている)、今回の舞台は近未来である1997年のロサンゼルスという設定である。その為、もしかしたら日本人にはあまりよくわからないようなレベルで、1990年時点でのロサンゼルスと比べての近未来的ロサンゼルスが描かれているのかもしれない。あるいは当時のロサンゼルスに在住していた人々は、この映画を観て、

 

「ワオ、なんて近未来のロサンゼルスなんだよ、ヘビーだぜ!」

 

と言って驚愕したのかもしれないが、日本在住のぼくにはあまりその辺りはピンとは来なかった。少しだけ内容に触れると、舞台になっている地区の気温の上昇が著しく激しいことや、麻薬絡みの組織的な犯罪が激化していて大いに治安の悪化が見られることなどについては劇中でも触れられている。ただ日本人であるぼくのイメージだと、ロサンゼルスなんてそんな風な場所なんじゃないの、というイメージなのである。

 

例えばこれを、ぼくのよく知る街である最近の東京の「池袋」を舞台とした映画での話に置き換えてみるとわかりやすいと思う。

 

るるぶ池袋 (国内シリーズ)

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池袋Walker 61806-20 (ウォーカームック)
 

 

2013年に公開された日本映画の中で、近未来である2020年の池袋が舞台となったお話が描かれていたとしよう。2013年の池袋の風景だったり、あるいは状況を少なからず知っているぼくが見たら、映画の中で2020年として描かれている池袋の変化が、あるいはずいぶん細かな表現の部分でも、明らかに近未来だとわかるかもしれない。

 

「あれっ、“いけふくろう”がメタル仕様になってるよ、しかも目がサーチライトみたいに光ってるじゃん、なんて近未来の池袋なんだよ、すげえ!」

 

というような池袋での微妙な近未来具合を、アメリカのロサンゼルス在住の人が近未来だと感じることは出来ないであろうと、そういうことである。だからおそらく、憶測の域を出ないのだけれども、「プレデター2」における1997年のロサンゼルスは、当時の地元民にしてみたら、とんでもなく近未来に感じられたのかもしれないと思うわけである。

 

さて余計な話でずいぶんと長くなってしまったので、そろそろ最後の〆を持ってお開きにしたいと思う。

 

この「プレデター2」でぼくが好きなシーンはと言えば、そうだなあ、やはりあそこ、

 

「ジャマイカ・ブードゥー団」のキング・ウィリーが地球外生命体に立ち向かうシーンであろうなあ、

 

あそこはかっこ良すぎる。あれはもちろん、第一作目の後半で描かれているビリー・ソールのシーンへのオマージュであろうなあ。

 

 

まあそんなわけで、ずいぶん横道にそれつつの「プレデター2」だったけれど、やはり名作地球外生命体映画であり、かつ続編なのに名作映画であることは間違いない。

 

あっ、ちなみに今回のプレデター役も、前作に引き続いて巨人のケヴィン・ピーター・ホールだよ、念のため。

 

お題「何回も見た映画」

 

 

 

 

月白貉