だが悪魔ならだまされないはずです -『エクソシスト』(The Exorcist)
「エクソシスト」という言葉を耳にしたことがあると思う。
簡単に言うと、キリスト教、特にカトリック教会に属する者の中で「エクソシズム」を執り行うことを職務として任命された役職、つまりその位階の名称である。日本語では「祓魔師」(ふつまし)と訳されるそうである。
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ではエクソシズムとは何ぞやということになるが、日本で一般的にエクソシズムというと、キリスト教における「悪魔祓い」という用語のイメージが強く普及していると思う。原語となるエクソシスムはギリシア語で「厳かに問いかけること、または勧告すること」という意味を表す。もともとはキリスト教ではなくギリシアの異教の言葉だという見解があり、当初は悪魔を祓うという意味合いは含まれていない言葉であったが、後にキリスト教において、有害な霊体、つまり悪魔を追い出す儀式という意味を持つようになる。
悪魔祓いという儀式はキリスト教に限らず、世界中のさまざまな社会において、宗教または民俗信仰の中の儀式として存在する、もちろん日本でも。
キリスト教において、あるいは日本をはじめとする世界各地に見られる悪魔祓いに関して厳密に記述しだすと底が見えなくなるので、ここではライトに扱うのみにするが、今回の「悪魔映画」はキリスト教においての悪魔祓いを描いた映画の代表作を扱うことにする。
というわけで、今回の悪魔映画は、おまっとさんでした「エクソシスト」(The Exorcist)である。
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「エクソシスト」は1973年(日本では1974年)に公開されたアメリカのホラー映画で、監督をウィリアム・フリードキンが務めている。
ウィリアム・フリードキンといえばやはり「フレンチ・コネクション」(The French Connection)であるが、ホラー映画愛好家のぼくとしては、その後に監督しているホラー映画、「ガーディアン/森は泣いている」(The Guardian)などはなかなかの名作だと思っている。
主演はと言えば、まあ誰が主演なのかという問題もあるが、ぼく個人の判断で三人ほどの俳優をあげてみると、まずはやはりマックス・フォン・シドーその人であろう。
スウェーデン人の彼は、同じくスウェーデンが誇る映画監督イングマール・ベルイマンの作品に多く出演している。ぼくはそのすべてを観てはいないのだが、「第七の封印」(Det sjunde inseglet)や「野いちご」(Smultronstället)での印象は大いに胸に焼き付いている。「第七の封印」はとんでもなくおもしろかった、至極の名作である。
彼はその後も実に多くの映画に出演していて、たとえば「フラッシュ・ゴードン」(Flash Gordon)でのミン皇帝や「コナン・ザ・グレート」(Conan the Barbarian)でのオズリック王、デヴィッド・リンチの「デューン/砂の惑星」(Dune)のリエト・カインズ博士や「ゴーストバスターズ2」(Ghostbusters II)のヴィゴ、
さらにはなんと「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」にまでも出演しているというとんでもない大俳優である。そしてどの映画においても、劇中での存在感が凄まじい役ばかりである。
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この「エクソシスト」でも、彼は老齢の手練エクソシストであるメリン神父を演じているのがだ、実はこの時マックス・フォン・シドーはなんと44歳の若さなのである。かつて小津安二郎の「東京物語」に出演した笠智衆が、あの役をずいぶん若い頃に演じていたという話は有名なところであるが、まさにそれを越す驚きである。
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さて、次なる俳優はデミアン・カラス神父を演じるジェイソン・ミラーである。
この映画においての主役は誰かといえば、ぼく個人的にはカラス神父だろうなあという感が強い。ちなみにこの俳優に関してはぼくは特に思い入れもなく、鑑賞済みの出演作もこの映画の続編である「エクソシスト3」(The Exorcist III)のみである。
さて最後に語っておくべき俳優は、やはりリーガン・マクニールを演じるリンダ・ブレアであろう。
すでにこの映画を鑑賞済みの方はご存知のように、ある意味では主役だという見方もできる。彼女はこの映画の後、ぼく個人的な見解だと鳴かず飛ばずの映画人生のように思われるが、あのホラー映画の名作「スクリーム」(Scream)に出演を果たしている。しかしごくごくちょっとした役であり、なおこの「エクソシスト」での役を踏んでかどうかは定かではないが、カメオ出演である。まあカメオというのはある意味では名誉な出演なので、そこは喜ぶべきことだろうなあ。
さて、そんなわけで、今回もこの映画の内容をサクッとご説明すると、あるいはタイトルを見ていただければ説明などは無用かもしれなしけれど、
娘に悪魔が取り憑いているっぽいのです、助けてください!という映画である。
そんな風に書くとホラー・コメディーのように聞こえるが、ご安心いただきたい、とんでもなく恐ろしい最高級の悪魔映画に仕上がっている。単にホラー映画という観点だけに留まらず、まれに見る名作だと個人的には感じている。
ぼくの手元には現在、劇場公開当時のバージョンのソフトと、もうひとつディレクターズカットのバージョンのソフトがある。いまこの文章を書きながらも改めて映画を鑑賞しているのであるが、ちなみにそれはディレクターズカット版のほうである。このディレクターズカット版というのは、「エクソシスト」の公開25周年を記念して2000年に劇場公開されたものであるが、公開当時にはカットされたシーンなどが追加されている特別バージョンというわけである。
そしてこのディレクターズカット版の公開当時、その追加されたあるシーンがあまりにも恐ろしすぎるとして話題になっていたが、ここではそのことにはあえて触れずにおこうと思う。もし劇場公開版は観たけれどもディレクターズカット版は観ていないよという方がいるならば、観ておいても損はないと思う。
ちなみにジョージ・ルーカスがテンションあがっちゃって作りなおしたスター・ウォーズのディレクターズカットのようなものとはわけが違うのでご安心いただきたい。
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さて、今回は俳優メインのような構成になってしまったが、そろそろお別れのコーナーに突入してもよい頃合いかと思うので、ぼくが「エクソシスト」の中で好きなシーンをあげてみる。
そうだなあ、カラス神父がやけに体を鍛えているシーンが案外好きである。ぼくの個人的なイメージだけれど、あそこだけ見るとロッキーのような映画かな?と思ってしまうほど、カラス神父が体を鍛えているのだ。
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映画の見所というのは思いの外本筋からそれたところにあるのかもしれないね。
というわけで、次回の悪魔映画へと続く。
月白貉