更かし夜
窓に顔を近づけたら、外の涼しさが窓越しに漂っていて心地よい。
ここに引っ越してきてから毎日眺める、四角くてクリーム色の給水塔、遠くのマンションの切れかけた非常灯、いつもどんより灰色の空、もう死んでしまったもしゃもしゃのコロコロ猫、まだ生きている耳つんつんのビクビク猫、みんな夜の中。
夜はいつでも昼間より少し涼しくて、少し暗くて、少し静か。夜は昼とは違う世界だからかな、少し違うところがたくさんある。まだ起きているうちは、夜は少しゆっくり流れている。だから少し考え込む。でも、寝ちゃうと、昼よりずっとずっと早く流れて、いつの間にか昼。
ぼくが寝ても少し待ってよ、夜。
たぶん寝ないで起きていたら、夜はずっと夜のままだね。じゃあ、寝ない。ずっと寝ないで起きていよう。そしたらずっと夜のまま。昼なんてもうこない気がする。昼だって、いい所はたくさんあるけど、夜には敵わない。昼には明るすぎて見えないものが、夜には全部見えるもの。でも、もうすごく眠い、眠い眠い眠い。夜がずっと続かないように、みんなにかけられた魔法のせいだ。くそっ、魔法め!たぶん、ベットに寝転がって、一瞬でも目を瞑ったら、もう夜じゃない。そんなのまったくずるい、やだやだやだ、でもすごく眠い。ねむいねむいねむい、くそっ、魔法め!いつか、魔法にうちかって、ずっと夜が続きますように。
おやすみなさい。
- 作者: ドミニクマルシャン,アルブレヒトリスラー,Dominique Marchand,Albrecht Rissler,木本栄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/11/21
- メディア: 単行本
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月白貉