ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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カクサレタモノ - ソノニ

そのトンネルの話で、ある地元の人から聞いた不可思議な話があった。

 

その人は知り合った町の住民の中でも、いろんなことを包み隠さず話してくれる数少ない人で、なかなか年配の、いわゆる地元の古老的な存在だったのだが、

 

雰囲気は江戸の下町風にべらんめえ口調な感じでものを話す人で、ぼくはその話口調が好きでよく道端で出会うと世間話をしていた。

 

ある日の午前中に、いつもの様に道端で行き会ったその人が、古老数人で世間話をしていたので、その輪に入りつつ耳を傾けていたのだが、その内容がちょっと不気味なものだった。

 

「・・・だってさあ、新聞配達をしてるあの人にきいたんだけど、早朝にね、動物でも人間でもないものがいるのをよく見るってさ、人間の上半身だけの真っ黒い影みたいなものが、歩いてるって。」

 

その話をきいてびっくりして割って入ったぼくが「えっ!!!それはなんですか!?」と言うと、

 

「あそこのお寺があるでしょ、しってる?あそこの先は死体が出るってさ、土葬だったから死体が歩くってさ、怖くて夜なんかいけないわね。」

 

自由の女神像 - 松江百景 -

 

その話が体感的にとんでもなくリアルで、その後引っ越すまでの間、あのトンネルが怖くて通れなくなった。

 

 

 

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月白貉