シベリアの凍えるナイフ日記。
ヒステリア・シベリアナ
村上春樹の小説『国境の南、太陽の西』にそんな病気の名前が登場する。おそらくは架空の病名だと思う。
北方、辺境の農夫が、毎日毎日荒野を耕し続けた後に、ある日、ふと農具を捨て去って西に向かって歩き出し、そして歩き続けた挙げ句に、突っ伏して死んでしまう。
そういう病気だそうだ。
『国境の南、太陽の西』は何度も何度も読み返した作品、文筆はすごく静かな世界だが、細やかな奥深さと熱があり、なかなか荒々しく、ぼくは好きな作品だ。
ヒステリア・シベリアナ。
作品を読んだあの日、ぼくは自分がその病気にかかるのではないだろうかと、ちょっと期待していた。
そして昨今、たぶんぼくは、いま、ヒステリア・シベリアナ感染中だと思っている。
まだ初期症状、まだ歩き出さない、歩き出していない。
でもね・・・、
そんな日々だけれど、いたってポジティブ。
ほんとうは、そのポジティブを粉砕して、ダークな世界に飛び込みたい。
闇は、ある意味では楽園なのさ。
すべてを捨て去って、ここからどこかへ歩き出す。すごく簡単なことなんだけれど、そこには、なんだかさ、自らの心臓をナイフで突き刺すような覚悟が必要でもある。
おやすみ。