ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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部屋の隅にいる恐ろしいモノ、マシュー・ステッドマン監督の短編ホラー『ザ・シング・イン・ザ・コーナー(原題:THE THING IN THE CORNER)』

世界を認識しているは、目でも耳でも鼻でも、手や足でもなく、結局は脳なんだろうなあと、時々思う。

 

幻覚、幻聴、幻臭、あるはずのない傷の痛み、そういうものがある。

 

事故で腕を失った人が、無くなった腕の部分に痛みを感じるという話を聞いたことがある。もう腕は無いのに。

 

今、目の前の机の上においてあったグラスが次の瞬間なくなっていて、「あれ?」と思って部屋中探してもまったく見つからない。再び机に戻ってくると、グラスは元の場所にちゃんと置かれている。そういう経験って、誰しもあるはずである。そもそもグラスという物質だって本当にそこにあるのかさえ疑わしい。触った感触があるからといって、それが現実に存在するのだろうか。誰がそれを決定的に証明してくれるのだろうか。ぼくの脳が、「グラスがそこにあるでしょ。」と言っているだけかもしれない。

 

例えば霊感とか呼ばれる類の特殊能力、人によって見える世界と見えない世界があるらしいが。

 

自覚として幽霊が見えたことはない。もし死後の人間が別の形態をとって町をさまよっていると仮定して、その姿を認識するためには特殊能力としての霊感が必要なのであれば、おそらくぼくはそれを持っていないから見えないのだろう。しかし時々、人間の姿をして町を歩いている人の中に、違和感のある存在を感じることがある。

 

人のように見えるけれど、あれはもしかしたら何か別のもので、「ぼくには何かを見る力があるのだろうか?」と真面目に考えることがある。

 

とかなんとか、そういうことを含めて、結局は脳が判断しているのだろう。

 

自分の認識する現実とか、記憶とか、そういうものが一体どこまで信じられるものなのかなんて、儚い夢に等しい。ぼくの祖父は晩年認知症になり、ぼくのことも忘れてしまい、言葉もしゃべれなくなって、赤ん坊のようになって死んでいった。けれど、その状態にあった祖父は何かの現実を認識していたはずだ。

 

人間は、自分たちとは異質な状態の人々を病気だとして区分けしている。つまり認知症とか何らかの障害を持つ人などを正常ではないと判断している。けれど、一体どちらが正常でどちらが異常なのかなんて、何を基準にしているのか?と思うことがある。あれは単なる多数決でしかないだろう。自分の記憶やあるいは状態が正常だと、果たして誰が言い切れるだろうか。ぼくにはその自信はまったくない。いま頭の中にある過去の記憶だって、完全におかしいし怪しいからである。なにか異質な記憶が存在するからである。今の世の中ではぼくは病気だと判断されるかもしれない。

 

というわけで、余計な話が長くなったが、今回取り上げるのはコワい短編作品である。観ていただければ、前置きに書いたことに関して多少はご理解いただけるかもしれない。

 

『B4』で知られるマシュー・ステッドマン(Matthew Stedman)監督による『ザ・シング・イン・ザ・コーナー(原題:The Thing in the Corner)』というホラー作品。

 

The Thing in the Corner

image source: The Thing in the Corner - YouTube

 

物語の舞台はおそらくどこぞの精神科病棟である。そしてタイトルの通り、「部屋の隅にいるモノ」に関しての話が描かれている。

 

主演はポーラ役のエイプリス・ウェイド(April Wade)と、ヘルフォード医師役のジャック・フリードント(Jacques Freydont)。

 

とても短い作品だが、久々の超オススメだと言える。超オススメの作品を取り上げる時は必ず、前置きに無駄話が多くなり、本編にはほとんど触れないという傾向が、ぼくにはあるらしい。

 

興味のある方は、ぜひご覧いただきたい。

 

 

 

 

 

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