ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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おおよそ、ゼロ日記。

今日は日記を書く。

 

誰がなんと言おうと、まあもちろん誰もなにも言わないけれど、いや誰かが何かを言うかも知れないけれど、そんなことは知らねえ、今日の日記を、ありのままに出来るだけ正確に書くと決めたのだ。

 

いまこの日記を書き始めたら雷鳴が轟いた。雷鳴は好きだ。ワクワクする。昔、幼い頃に、魚釣りに出掛けた祖父が原付バイクで慌てて帰ってきた。たぶん真夏の、昼過ぎ、夕方近くだったと思う。突然の雷雨が周辺の地域を襲った最中だった。

 

祖父の目の前で、雷に打たれた人がいたそうだ。黒焦げになって死んでいたと、そう言っていた記憶がある。雷鳴が轟き始めてすぐに、祖父は木陰に隠れて雷が過ぎるのを待っていたという。雷に打たれた誰かは、田んぼの真中を傘を指して歩いていたと、祖父は言った。

 

すぐに救急には連絡したそうだ。携帯電話などない時代の話、公衆電話か、どこぞの民家から連絡をしたのだろうか。

 

今日は遅くに起きた。九時を過ぎていた。目覚ましは六時と七時と八時に設定していた。六時のアラームを止めたことは覚えている。その他は記憶にない。

 

もっと眠っていたかったけれど、陰鬱な雨の音と部屋に密かに、そして大量に入り込んだ湿気が、数時間前から眠りを妨げていることを知っていた。

 

夢は・・・、覚えていないなあと思ったけれど、

 

いや、少し覚えている。まったく知らない友人らしき男性と組んで、ダブルデートをしていた気がする。相手二人も、現実世界のぼくの記憶にはまったくない女性だった。

 

ぼくはそのうちのひとりの女性に好意を持ち、なんどかアプローチを試みるが・・・、その後はよく覚えていない。

 

デートの場所は、夢にはありがちな混沌としたショッピングモールだった。何度も訪れたことがあり、内部の構造も知っているはずの場所なのに、訪れる度に微妙にそのレイアウトは変わり、いや微妙にどころかまったく様変わりしていて、いつも迷ってしまうような広大なショッピングモール。

 

そんな目覚めを迎える。

 

朝食を食べるという行為を捨て去って二年と数ヶ月が経過する。いまは一日一食。昼ごはんも食べない。

 

朝起きて歯を磨き、軽い筋トレをする。その流れで走りにゆきたいが、なかなかに大雨が降っている。でもしばらく悩んだ挙げ句に、雨の中を走りに出かける。走った距離はおそらく六、七キロだろう。

 

びしょびしょになって家に帰ってくると、玄関に見知らぬ人が立っていて、インターフォンのボタンを押している。なにか気味が悪かったので、その人物の背後を通って、別のフロアまで歩を進める。そしてもう一度玄関の前まで戻ると、見知らぬ誰かはいなくなっていた。念のために建物の外まで歩いていったが、もう誰もいなかった。

 

この時期に真っ黒いコートを着て、黒いハットをかぶっていた。大雨が降っていたから、レインコートだったのかも知れないが、かなり異様だった。けれど、忘れることにした。

 

びしょ濡れのスポーツウェアを洗濯機に放り込んでからシャワーを浴びる。

 

その後のことは、特に日記に書くようなことではなく、細かな掃除をして、雨の中を再び買い物に出掛けて、気が付けばもう日暮れで、食事を作ってワインを飲みだし、気が付くと弱まっていた雨がまた激しくなっていた。

 

午後の八時頃、インターフォンがなったのでモニターを覗き込むと、昼間に玄関に立っていた黒いコートの男だった。いや厳密には同一人物かどうかはわからないし、男かどうかも定かではない。モニターに映る姿も、玄関先の暗闇と、深々とかぶっている帽子で顔が闇に包まれていて、まったく見えなかった。

 

日常の中でのそういうことって、すごく恐ろしい。

 

彼はインターフォンを一度しか押さずに、立ち尽くしていた。そしてそのままインターフォンの映像は、自動でオフになった。

 

クソみたいな勧誘の場合、そのクソみたいな勧誘員は何度も何度も何度もインターフォンを押し、電気メーターを見上げたりドアを無駄に叩いたりする。某国営の放送局がいい例だ。

 

けれどその人物は、一度だけインターフォンのボタンを押して微動だにせず、立ち尽くしていた。そして、しばらくすると、そこからいなくなっていた。

 

いまこの刹那、汁の多い麺類がたべたいなあと思っている。

 

もう何年も、そういう行為とは無縁な生活を送っている。だからずいぶん痩せたけれど、クソみたいにジャンクな酒ばかり飲んでいるので、たぶん体はボロボロに違いない。

 

ベーシックなカップヌードルなんか食べたら、いま食べたら、美味しいだろうなあ。

 

でもその類の食品は家にはないし、外は大雨だから買いに行く気遣いはまったくないし、スコッチとかテキーラでごまかして、死ぬように眠ろうかと思う。

 

ある程度、純粋な日記がかけたことに、少しだけ満足。

 

明日はまともに小説に打ち込めるように願うばかりだが、果たして。

 

まあ、おおよそ、いつだって永遠に、一日なんてコンチクショウな時間でしかない。それをどこまで許容でき、どこまで楽しみ、どこまで追いかけるかで、日々の色は灰色にもなるし、七色にもなる。四十八色にも、パラダイスな無限色にもなるだろう。

 

なにかに記憶を奪われる前に、眠る。

 

この日記に何かを感じたなら、その感想は夢の中のぼくを探して、メモを手渡してくれ。必ずそのメモは受け取るし、再び夢の中できみを探し出して、その返事を手渡すから。

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