ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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ここでは、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない。

「白田さん、もうこの会社に来てから一年半くらいですよね?」

 

「うん、残念ながら。」

 

「はははっ、残念ながら、ですか。ぼくね、白田さん見てて、すげえなあって思うことがあって。」

 

「へぇ、」

 

「はい、会社にまったく馴染んでないこと、だって自分の前にはったシールドみたいなものを、絶対にとかないでしょ。なんだろう、透明な、でもすっごく強固な見えないカーテンみたいなものがあって、いや、ぼくにはね、けっこう近付かせてくれるんですよ、なんでかわかんないけど。でも、近付いても、シールドはあるんですけどね、はははっ。」

 

「ふ〜ん、そっか。」

 

「そうですよっ、そのシールドね、透明なんです。あたりまえか・・・、あたりまえかもしれないけど、見えないんです。見えないんだけれど、なんて言ったらいいのかなあ、例えば白田さんが嫌いな人いるじゃないですか、社内にね。」

 

「たくさんいるね。」

 

「はははっ、でしょうね。そういう人に対しての白田さんのシールドって、バリアっていうか、あっ、攻性防壁みたいで・・・、シールドをはってることわかってて、ナメてかかってくる人っているじゃないですか。」

 

「うん、いっぱい、いるよ。」

 

「白田さんのシールドって、そういう人を容赦なく焼くんですよ、焼き殺す、ははは・・・、うまく言えないなあ、でもなんだか見てて、もはや清々しいというか。」

 

「焼き殺してるつもりはないけれど、あっ、ちょっとあるかな。でも、嫌なやつにはさ、極力笑顔は見せないことにしてる。いや、だって笑えないんだよ、笑えない、顔が引きつっちゃって、無理して笑ったりしたら肉が裂けて血が飛び散るよ。」

 

「そんなに・・・、ですか・・・。」

 

「そういうこと、あるでしょ。そして飛び散る血がさあ、異常に強力な酸で、浴びたらやばいやつなんだよ。」

 

「エイリアンかよっ!ああ・・・、でも、言われてみれば、あるかもなあ、無理に笑顔を浮かべた顔面を、肉が裂けないように必死で手で押さえつけること、ありますよね・・・、あれって苦しい・・・、口元が痙攣しちゃって、凍ったみたいに表情がうまく動かなくなって、だけど震えが止まらなくて・・・、あるなあ、今言われて、なんか気が付いたようなきがします・・・、あるよなあ。」

 

「だったら、レッスンワン、終了だな。」