ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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遅く起きた日曜日の朝の食事

日曜日の午前中、近所のコンビニエンスストアに買い物に出掛けようとして玄関を出ると、家の前の道路のアスファルトの上に白い猫が血まみれになって横たわっていた。

 

フサフサとした白い毛の半分ほどが赤黒い血でクッタリと濡れ、目は異常に見開かれ、口は何かを威嚇するかのようにして声なく鋭く唸っているようだったが、生きているようには見えなかった。

 

私は瞬時に家の中に駆け戻り、ノートパソコンを起動してブラウザを立ち上げ、道路で動物の死体を見つけた際の連絡先を調べようとした。すると背後の台所の流しで洗い物をしていた妻が私に声を掛けてきた。

 

「あれ、コンビニに行くんじゃなかったの?」

 

「ああ、行くんだけれども、玄関の前で猫が死んでる。」

 

「えっ、」

 

「毛がふさふさした白い洋猫みたいな野良猫、最近、時々外で鳴いてたやつかもしれない。車にでも轢かれたのかもしれない。だから保健所に連絡しようと思って、」

 

「あたしも見てきていい?」

 

「ああ、いいけれど、悲しくなるかもしれないよ。」

 

「うん・・・、ちょっと見てくる!」

 

妻は濡れた手をタオルで拭いながら玄関の方に小走りで駆けてゆき、すぐに玄関の扉が開閉する音が聞こえたかと思うと、間髪無く再び扉が開閉する音が聞こえ、妻が出ていった時の何倍もの速さに思える足取りで慌てて私の目の前に駆け戻ってきた。

 

「猫、死んでたでしょ?」

 

「ちょっと来てよ!」

 

「そんな慌てなくても、仕方ないよ。だから、保健所に電話しないと、」

 

「ちがうっちがうのっ!」

 

「なんだよ、どうしたの?」

 

「白い浴衣みたいなの着たガリガリのお婆さんが、道路のその猫、食べてるのよっ!」

 

 

 

月白貉