朝四時に起きて、スズメはそして眠る日記
朝四時に起きて、まだ日の昇らない夜明けに家を出て、駅まで人を見送りに行った。
しばらくして、誰もいない街のずっと向こうの空の先に太陽が昇り始めた。
駅のホームを発車する電車の中で、その人は見送るぼくに手を振って泣いていた。
駅からの帰り道、死にかけたスズメがアスファルトに仰向けに寝転んでいて、目を瞑ったまま小さく激しい呼吸を繰り返していた。無意識に手を差し伸べそうになったのは、それが自分に見えたからかもしれない。
駅前の繁華街を、何組もの若い男女がフラフラしながら歩いていた。どのグループもカップルではなく、男女のバランスが不均等だった。駅前のコンビニエンス・ストアの駐車場には、地べたに寝転んで腐った植物のように眠っている若者がいた。街のそこいらじゅうには、嘔吐の跡がまるで雨の後の水たまりみたいに点在していた。
そんな街の中を、ぼくはひとりで無言のままあるき続け、家まで帰ってきた。
街を歩いている間中、その場所がまったく見ず知らずの場所のように思えたのと同時に、記憶の何処かに存在するとても懐かしい景色のようにも感じた。
きょうやろうと思っていることは、起きた時からすでに決めている。
洗濯をして、部屋中に掃除機をかけて、映画のDVDが詰め込まれた棚を一段だけ片付けて、その中から一本だけ映画を選んで、まだ午前中からワインを飲みはじめて、選んだ映画を観る。
いつもの日々と大して変わらない部分もあるが、いつもの日々と大いに変わる部分もある。
そしてもしかしたら、途中で思い付いてまったく違うことをし始めるかもしれない。
だって結局、そういうことが日々なのだから。
おはよう、そしていつか、おやすみなさい。
月白貉