高速移動する拍子木の怪と、クラウンの乗ったワゴン車日記。
夏なので、日記に怖い話を無駄に綴りがちなこの頃。
今日は、このウェブログでも何度か書いていることなのだが、時々近所で拍子木の音が聞こえることについて書く。
一般的には拍子木と言えば冬の風物詩で、火の元の注意を促すことを目的としていることが多い。「ひのよ〜じん!」というお馴染みの掛け声がお供になっている例のアレである。しかし近所で鳴り響く拍子木は、季節や時間など関係なく聞こえるし、掛け声は伴わない。冬にも聞こえるし、ついこの間も、つまり夏にも聞こえる。地域によっては拍子木を叩く行為は土着の民俗信仰や宗教的なことに関わっているらしく、火の元とは何ら関係がない場合もあるらしい。その場合には当然、季節や時間に関わらず鳴り響くことがあるという。
拍子木の音は個人的にはわりと好きなので、「ああ、拍子木の音だなあ。」というくらいで、最初の頃はいつ鳴っていても気に留めていなかったのだが、ある時ふと気が付いたことがある。
外から拍子木の音が聞こえてきて、その音が移動しているので、常識的に考えるとおそらく誰かが拍子木を手にして叩きながら歩いているのだろうと思っていたのだが、音の移動速度が常軌を逸しているのである。
つまり、移動速度が速すぎるのである。
すぐ近くで打ち鳴らされた「カンカン」という音の後、数秒後に打ち鳴らされる音が、聞こえるか聞こえないかくらいの遥か彼方で鳴るのである。人間の歩行速度だとは考えられない。
かと思えば、近くでずっと移動せずに、ウロウロと鳴っていることもある。そしてまた次の瞬間、遥か彼方で鳴り響く。
ちなみに、鳴ったらすぐに外に飛び出てみて、この目で確認しようとは思っているのだが、やや気が引ける。もしそこで恐ろしいものを目にしたら嫌なので、まだ実行してはいない。
というわけで、半ば妄想的に考察してみる。
【仮説1:走りながら叩いている説】
まず考えられるのが歩行ではなく走行、つまりジョギングばりに走りながら拍子木を叩いているのではないだろうかということ。ただ走りながら拍子木を叩いているという光景もやや不気味であるし、走っているにしても相当速くないと、再現は不可能だというくらい高速移動をする。さらに近くでウロウロしているケースの意味がよくわからない。
【仮説2:自転車に乗りながら叩いている説】
これもほぼ【仮説1】と同義だが、移動速度はやや早くなる。しかしわざわざ自転車に乗りながら両手放しをして拍子木を叩き周る意味が希薄である。そしてやはり近くでウロウロしているケースの意味が見いだせない。
【仮説3:自動車で移動しながら録音された音を流している説】
移動速度の体感としては、実際自動車くらいでないと難しいように感じる。この場合に単独であれば運転しながら拍子木を叩くことは難しいと思うので、録音された音を流していることが考えられるが、運転手ではなく助手席に乗っている人が打ち鳴らしている可能性もある。上記と同じくウロウロしてる状態は不明だし、自動車だとかえって困難のように感じる。
この3つの説に関しても、果たして「火の用心」絡みなのか、別の理由なのかはまったく不明である。
【仮説4:未確認生物説】
人間が拍子木を叩いているのではなく、鳥かあるいは獣のような生物の鳴き声だということも考えられる。移動速度に関しては道路にとらわれて移動しない分だけ何とか再現できそうだし、ウロウロしている有機感も納得がゆく。しかし拍子木みたいな鳴き声を持つ生物が果たしているのだろうか。近所には数種類のサギが多く棲息していて、時々真夜中に狂ったように鳴いたり、窓の外を「タタタタ」と歩く怪しげな足音を立てたりする。鳴き声に関しては個体差があり、昨日の夜中の鳴き声などは、殺されかけている女性の叫び声のように聞こえて正直怖ろしかったが、あれが本当にサギかどうかは定かではないので、それはそれで怖ろしい。
【仮説5:幻聴説】
これは意外と本命だが、ぼくの頭がおかしくなっているということに等しいもので、実際には鳴っていない拍子木の音が聞こえているというもの。当然幻なので、速度の問題や不規則な動きなどは、単にぼくの聞こえ方に依存しているだけである。一番怖ろしいと言えば怖ろしい。しかし残念なことに、聞こえているのがぼくだけではないので、可能性としては低い。ただ、ぼく以外の人が聞こえていることに関しては、同環境内におけるぼく発動の集団催眠的なことも考えられる。
とまあ、こういう実にくだらないことを書くだけでも、ずいぶん長い日記になる。
そしてもうひとつ別の話題、近所に時々出没するクラウンが運転する不気味なワゴン車の話があったのだが、今日はもうやめておこう。概要だけ触れると、アイスクリーム屋が流すような音楽を流しながら近所を走るワゴン車の運転席に座っているのが、クラウンの格好をした男性だという、嫌な話である。
最後に念のため書いておくが、ぼくはアブないおクスリの類は常用していない。
通信を終わる。
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月白貉