ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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赤い体のコダックがいる場所 - ポケモンパンデミック -

坂本から夜遅くにメールが届いた。

 

- ポケモンGOポケモンにおかしな種類いるけど、川田これ知ってる? -

 

添付された写真を見てみるとコダックの色違いのようで、体の色が少し赤みがかっていてブツブツした斑点のようなものが付いている。さらに片方の目が腫れているようにも見える。進化したゴルダックではなく、見た目はコダックだ。

 

赤い体のコダックがいる場所 - ポケモンパンデミック -

 

ぼく自身は、ポケモンGOのアプリをサービス開始直後にダウンロードはしたものの、現在まで本当にかじる程度にしかプレイしておらず、やっているのも自宅の中だけで、レベルも6のまま止まっている。捕まえたポケモンコダックコイキングとポッポと、あとは名前を覚えていない二三種類くらいしかいない。自宅にコダックコイキングばかり出てくるので、それを繰り返し捕まえていたのだが、これの一体何が面白いのかわからなくなってきて飽きてしまい、起動するのをやめてしまった。

 

一度だけコダックを進化させてみたらゴルダックというポケモンになった。だから名前を覚えたポケモンは合計で四種類、もともとポケモン自体をプレイしたことがないし、アニメ化されたものもまったく観たことがないので、総合の知識としてもその四種類と、あとはピカチュウくらいしか、ポケモンの種類は知らなかった。

 

テーブルの上のノートパソコンを開いて「コダック 赤」と検索をかけてみるが、通常の検索にも画像検索にも、添付されてきたような赤みがかっているおかしな皮膚のコダックの情報は出てくる気配がない。

 

ぼくは坂本に電話をかけてみる。

 

「あっ、もしもし、川田です、今大丈夫?あっ、そうか、あのさあ、メールで送られてきたポケモンのことだけど、おれは坂本ほどプレイしてないからよくわかんないよ。コダックの赤いやつでしょ。ググってみたけど出てこないし、近々のアップデートかなんかで追加されて、まだ情報が少ないやつじゃないの?うん、うん、あっ、西野さんに聞いてみたらいいんじゃない、あの人たぶんプライベートの時間ず〜っとポケモンGOやってると思うよ、うん、うん、おう、わかった、いえいえ、じゃあね。」

 

坂本との電話を切ってからしばらく、ぼくがビールを飲みながら開高健の本を読んでいると、再び坂本からメールが送られてきた。面倒くさいから見るのをやめようと思ったのだが、仕方なくメールを見てみることにする。

 

- 西野さんに聞いたら、ポケモンGOポケモンの中にまれにおかしな病気にかかってるやつがいるって!その病気がどうやら伝染しだしてる場所もあるらしいってさ! -

 

再びノートパソコンを使って「ポケモンGO 伝染病」と検索をかけてみると、ポケルスというウイルスの存在のことが書かれているページにはたどり着いた。

 

しかし坂本が言っている状況とポケルスとはあまり関係はないようだった。ぼくは坂本にメールを返すことにする。

 

- その赤いコダックはどこにいたんですか?場所を教えて下さい。 -

 

しばらくして坂本からメールが返ってきた。

 

- 川田に先週話した心霊スポットだよ!友だちと夜遅くに肝試しにいった!そこに赤いコダックがウジャウジャいたんだよ。 -

 

坂本の言っていることが本当かどうかはわからなかった。ただ西野さんは時々面白がって、すごくディテールの細かい嘘をつくことがあった。そしてその嘘のターゲットに選ばれるのは、大抵は坂本だった。だからぼくはその伝染病の話も嘘かもしれないと思った。坂本の言っていることがもし本当なら、なんで夜中に心霊スポットになんか行ってポケモンGOなんかやっているのかと思って、正直情けなくなった。坂本とはそれほど仲が良いわけでもない。仕事場で同い年だということで、時々お互いの趣味であるゲームの話をしたり、同じくゲームの事でメールが送られてきたりすることはあったが、プライベートでの付き合いはほとんど無かった。

 

ただ、赤いコダックがいるのが本当にその場所だとしたら、少し気味が悪かった。

 

西野さんの伝染病の話が本当かどうかはわからない。けれど添付されている写真のコダックは確かに奇妙な姿をしている。坂本がわざわざぼくに嘘をつくためにこんな画像を作るということは考えられなかった。あるいは西野さんの発案で共謀して、ぼくに壮大な嘘をつこうとしているのだろうか。西野さんなら、そういうことをやりかねない。

 

けれど、ぼくはもうポケモンGOに飽きてしまって起動すらしていないし、今後もおそらく起動することはないだろう。だから、たとえどこそこに、伝染病にかかった超レアな赤いコダックがいると言われても、わざわざそんな場所にまで行ってポケモンGOを起動するなんてことは絶対にないだろう。ましてや真夜中に、そんな恐い場所で、ポケモンGOなんかまったくやる気にはならないだろう。

 

再び坂本からメールが送られてくる。今度はなんだろうと思ってメールを見てみる。

 

- 赤いコダックと一緒におかしなもの写ってたよ!見てくれよ! -

 

ぼくはその写真は見ずにメールごと削除して、携帯電話の電源を切った。そして冷蔵庫から新しい缶ビールを出してきて、開高健の続きに取り掛かった。

 

お題「ポケモンGO」

 

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月白貉