濁醪ペブル
昨日は久しぶりに遠出。
そして久しぶりに少しだけ山歩き。
山をご神体とする神社が頂上に佇むその山には、かつて三十坊だか四十坊だかの仏閣が立ち並んでいたという。山を降りてから、たまたま出会った古老がそう話していた。
ずいぶん急な石段を登って本殿にたどり着くと、周囲の冷気が急激に増す。おそらくは何かいるのだろう。本殿の奥はガラス張りで、そのガラスの向こうに山肌が見える興味深い景観。
下山後に出会った古老は、木次乳業の創始者で、御年96歳だという。ブラウンスイスの話も聞かせてくれたので、「いつも木次乳業の牛乳を飲んでいますよ。」と言うと、歯をむき出してニコリと笑っていた。
久しぶりに何時間も山を歩いたせいで、家に帰ってきて少しぐったりする。体力がずいぶん落ちているのかもしれない。体を鍛えなおさなければ。
日々は、様々な色を持った小石のようなもので構成されていて、その小石を拾って、匂いを嗅いだり舐めたり愛でたり、あるいはどこかに放り投げたり、路傍のロバの頭にせたり、そうやって小石をかまうことで過ぎ去ってゆく。
ややけだるい体で夕食の準備を終え、パンをかじって、ナスとシラスのスパゲティーをすすり、安い葡萄酒を飲んでいると、インターホンのチャイムが鳴り、クール宅急便でどぶろくが届けられる。
なんだか山ほど小石の転がっている日だなあと思うが、小石はいつだって山ほど転がっている。それに気が付くか気が付かないかの違いだろう。
明日はこのどぶろくのために、精魂込めてごはんを作ろう。
月白貉