2016-05-21 雨空グランドマザー 小説 小説-短編 まだおなかはすかないけれど、歌を歌いながら夕ごはんの支度をしよう。 水色の歌を歌おう、カエルが好んで歌うような、水色の歌を。 きのう実家の庭では、雨を喜んでたくさんのカエルが鳴いていた。父に、「庭にいっぱいカエルがいるんだね。」と言うと、「ああそうなんだよ、なんだか知らないけれど、いっぱいいるんだよ。」と言って、雨空を仰いだ。父が仰いだ視線の先には、祖母が楽しそうに飛んでいた。灰色の雲を大きな筆でかき消しながら、縦横無尽に飛び回っていた。 そしてその一時だけ、雨がピタリと降り止んだ。 月白貉