新宿ゲームセンター
ぼくが27歳のとき、ぼくを導いてくれた人がいた。
いまではもう親交はないけれど、その人からずいぶんといろんなことを学んだ。
ぼくがいったいどんな力を持っていて、 その力がどのくらい素晴らしいものかということを教えてくれた。 いまだにぼくは、その自分の力を活かしきれてはいない。 本当に自分がそんな力を持っているのかどうか、 あの頃からいまだに悩み続けている。 もしかしたら、悩み続けたまま死ぬのかもしれない。
あれからずいぶんと時がたった今、 ある青年と交わした言葉から、 あの頃の記憶がよみがえった。
その夜頭が真っ白になり、ひどい悪夢を見た。
二人組の若い女の子に色仕掛けをされ、 短パンのポケットに入った財布を盗まれ、 慌てて警察に届けにいくのだが、 警察署には頭のおかしな婦警しかおらず、 いっこうに手続きが進まない。
その後ひとりの女の子を捜し出し、 財布に入っていたキャッシュカードだけ取り返すものの、 主犯のもうひとりの行方がわからない。 仕方なく自らキャッシュカードの残高を調べに最寄りの銀行に向かうが、 銀行のATMコーナーの機械がすべてアーケードゲームになっていて、 残高を調べる術がない。 銀行の外に出るともう夜も更けて、 ゲームセンターと化した銀行の看板のネオンだけが、 ビカビカと輝いていて、途方に暮れる。
言葉にすると楽しそうな夢だが、 ずいぶんな悪夢だった。
月白貉