ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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本当の力は憎しみではなく、真実から生まれる -『リンカーン/秘密の書』(Abraham Lincoln : Vampire Hunter)【前編】

歴代アメリカ合衆国大統領の中で、いったい何人の大統領が暗殺されたかをご存知であろうか。

 

先に正解を言ってしまうと、合計で四人の大統領が暗殺されている。

 

第20代アメリカ大統領ジェームズ・ガーフィールド、第25代アメリカ大統領ウィリアム・マッキンリー、第35代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディケネディの暗殺に関しては、オリバー・ストーンによる映画「JFK」(JFK)にも描かれていたので記憶にも新しいかと思う。しかし、今回触れるのはジョン・F・ケネディではない。

 

JFK CIAとベトナム戦争、そしてケネディ暗殺

JFK CIAとベトナム戦争、そしてケネディ暗殺

 

 

では誰かと言えば、

 

歴史上はじめて暗殺されたアメリカ合衆国大統領、第16代アメリカ大統領のエイブラハム・リンカーンである。

 

リンカーンの暗殺事件については、ケネディ暗殺と同じくらい有名なものだというのがぼく個人の認識で、とある都市伝説まがいの噂によれば、リンカーンケネディの暗殺事件には偶然とは思えないほどの不可思議な共通点が見られるという。今回は「信じるか信じないかはあなた次第です」的な都市伝説スペシャルではないので、その詳細についての言及は差し控えるのであしからず。

 

さてでは、ごくごく簡単にではあるが、リンカーン暗殺事件についてご説明すると、

 

1865年4月14日金曜日、午後10時頃、フォード劇場で妻メアリー・トッド・リンカーンと共に「われらのアメリカのいとこ」(Our American Cousin)をボックス席で鑑劇中に、ジョン・ウィルクス・ブースによって背後からデリンジャー銃で後頭部を撃たれ、翌朝の1865年4月15日土曜日、午前7時22分、ウィリアム・ピーターソン宅で死亡したと伝えられている。

 

ここで少し映画の話題を挟むと、

 

ウォルフガング・ペーターゼンの「ザ・シークレット・サービス」(In the Line of Fire)の中で、アメリカ大統領の暗殺を目論む人物が登場するのだが、

 

 

この人物、ジョン・マルコビッチが演じるミッチ・リアリーは、主人公の大統領警護官、クリント・イーストウッド演じるフランク・ホリガンに対して、自分の名前を「ブース」と名乗っている。これは、かつてフランクがジョン・F・ケネディの警護官だったことへの皮肉として、自らをリンカーン暗殺犯の名前で名乗るという筋書きなわけである。ちなみにこの映画はぼくも所蔵していて何度も見返しているが、なかなかよく出来ている映画なので、いずれ機会があれば語ってみたいものである。

 

さて話を戻そう。

 

この後、主犯であるブース(他の人物の暗殺計画を含めると合計で八名の共犯者が捕まったとされている)は、身を隠していた煙草倉庫を騎兵隊に包囲されたが、投降を拒否したため倉庫に火を放たれる。そして最終的には火に包まれた倉庫内でボストン・コーベット軍曹に背後から銃撃を受け、首を貫通した傷が致命傷となり死亡している。

 

これがおそらく、多くの方がよく知る、リンカーン暗殺事件である。

 

しかし、このリンカーン暗殺事件およびその後の史実にはいくつか不可思議な点が存在している。

 

ここでその中からキーポイントとなるものを幾つかあげてみると、

 

まず、リンカーン暗殺の実行犯であるブース死亡の有無について。

 

彼は犯行の数日後に煙草倉庫で銃撃されて死亡したということになっているのだが、一説によれば、倉庫内で撃たれて死亡したのは別の人物だとする話がある。ブースを銃撃した軍曹が顔を確認した際に、「ブースじゃない!」と叫んだとか叫ばなかったとか。別の話では、軍曹が銃撃したブースは一度銃弾に倒れはしたが死んでおらず、そのまま行方をくらましたのだというものである。その際に、騎兵隊のひとりがブースの手によって殺害されており、その騎兵隊の遺体が顔を潰されブースのものだとされていたという話もある。

 

次に、死後のリンカーンの遺体にまつわるものである。

 

リンカーンの暗殺から11年を経た1876年、シカゴのギャング団がリンカーンの遺体を人質にとり身代金を要求する計画を企てるという事件が発生する。これは結局遺体誘拐未遂事件に終わっているのだが、これを受けて、今後のリンカーンの遺体盗掘を防ぐために重厚な地下墓所の構築が決定し、最終的にリンカーンの棺は厚さ数フィートのコンクリートに包まれることになる。新造の地下墓所が完成後、その墓所に再び遺体を埋葬するため棺が発掘されて中の遺体の確認が行われているのだが、数十年経過しているはずのリンカーンの遺体はまったく腐敗しておらず、生前そのままに棺に中に横たわる姿が確認されているという。当時の防腐技術がどの程度のものだったかは知るところではないが、ぼく個人的には若干の不可思議さを感じずにはいられない話である。

 

さて、もうひとつ言及しなければいけない大いなる謎があるのだが、今回取り上げる映画の話に行き着く前にいささか文章が長くなってしまったので、一旦ここで区切らせていただいて、引き続きは後編でお話したいと思う。

 

では、小休止を踏まえて、後編へ続く。

 

お題「何回も見た映画」

 

 

 

 

 

 

月白貉