ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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ダンテ日和

考えるべきことはたくさんある。

 

そのひとつひとつに、小さな不安と、不安よりもだいぶ小ぶりな希望がつきまとう。

 

昔、まだ二十代の前半に、アルバイトの帰りに雨が降り出した。

 

その時、別にいやなことがあったわけでもないのに、一人暮らしの家に帰るのが不安で仕方なくなって、どうしたらいいかわからなくなって、雨の中、ひとり傘をさして、いくあてもなく街をさまよい歩いた。

 

きょう、あの時みたいな気持ちになって、涙が出そうになった。

 

でもぼくはそういうことこそ大事なんだと思う。不安だってことは、そこに隠れがちな希望の欠片も、同時に手にいれてるってことだ。

 

きょうはひとりで外でお昼を食べて、ごはんをおかわりした。あまり美味しくない油淋鶏定食だった。

 

そのあとひとりで喫茶店で紅茶を飲んでケーキを食べた。春の午後の光が差し込む、窓際の席。アッサムを飲みながら、バナナシフォンを食べ、古いSF小説を読んだ。机の上に何匹も蟻が迷い込んできて、二匹潰した。潰した蟻を片付けようと思っていて、うっかり忘れて机の上に放置してきた。

 

その後、イタリアの詩人の名のつく喫茶店にうつり、ブレンドコーヒーを飲んで、古いSF小説の続きを読んだ。

 

客はぼくひとりだった。薄暗くて静かで、そして禁煙で、居心地のよい喫茶店だった。マスターは店に溶け込んでいて、誰もいない空間みたいだった。

 

生き方を変えることが、難しいという人もいる。

 

それはたぶん、不安をきちんと不安だと認識が出来ていないからじゃないか。きょう、なれないことをして、一日中不安だった。あの頃よりは、自分が不安定なことを、わかるようになったかなあ。

 

幸福なりし日を回想するより大いなる苦しみはなし。

 

- ダンテ 「神曲 - 地獄編五曲」 -

 

 

 

ダンテ神曲原典読解語源辞典〈第1巻〉地獄

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ダンテ神曲原典読解語源辞典〈第2巻〉煉獄

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ダンテ神曲原典読解語源辞典〈第3巻〉天国

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やさしいダンテ<神曲> (角川文庫)

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月白貉