猫の役割
夜は、猫がこっそり歩く音くらいしか、聞こえてこない。
だから猫は、もっと聞こえないように、いまよりもっとこっそりと歩くようになる。
そしていつか、足が透明になって、ふわふわ浮かんで、くるくるまわって、空に飛んでゆくと思っていると、軽くなったはずの足は、今度は反対にどんどん重くなって、キンキンと音をたてながら、溶けたコンクリートの中にずぶずぶ沈んで、そして地の底のシャンバラにたどり着く。
そこで季節を教えてもらって、冬の前になると地中から飛び出して、銀杏の樹に寄生している、ギンナンバシリを頭にのせるんだ。
それがいつだって冬の始まりの光景。
誰も知らない猫の役割。
イヌとネコの体の不思議: ひげの役割、しっぽの役割とは? (子供の科学★サイエンスブックス)
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月白貉