ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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花言葉

散歩をしていて、すごく素敵なお庭を見つけた。

 

家のまわりには垣根もなく、一見するとただ雑然とたくさんの草木や花が放置されているように思える。

 

ただよく見てみると、とてもとても放置して出来るような空間ではなく、筆舌には尽くしがたい。

 

ひとつひとつの植物が、いきいきと暮らしている世界。

 

ジャングル。

 

でも、そこには確実に人の手が加えられているのもわかる。ただ、もしかしたら、加えているのではなく、差し引いているのかも知れない。

 

写真を撮っていたら、そのお庭のご主人に後ろから話しかけられた。

 

「撮ってくれてありがとうねぇ〜!でも、たいした花なんかないんだけど。蚊だけはいっぱいいるから気をつけてね、ほら、もういっぱい刺されちゃってさ。あ、じゃましてごめんなさいねえ〜。」

 

勝手にお庭の花たちの、そして草たちの写真撮ってて、おこられちゃうかと思ったけど。ありがとう、邪魔してごめんねって言われた。

 

花たちや草たちが、その時くすくすくすって笑ってる気がした。

 

「おかしいでしょ、あの人、ほんとおかしいの。あたしたちがどんなに我がままを言っても、どんなに好き勝手に暮らしていても、ずっとわらってるのよ。きれいだね、げんきだねって、おはよう、って。でもね、あたしたちが困ってる時に、いちばんの味方になってくれるのは、あの人しかいないの。ほかのお庭の花たちや草たちを見たでしょ?あんな暮らしが楽しいと思う、あなた?思わないでしょ。あんなの拷問よ、あたしたちは人間の住処の飾り物じゃないの、あたしたちはここで生きているの、暮らしているのよ。通りかかる人間たちを喜ばせるために花を咲かせるわけじゃないの。さっき、あの人言ってたでしょ、取り立ててたいした花なんかないんですよって。そうなのよ、取り立ててたいした花なんかじゃないの。だってここにいるのは、普通に咲いている、普通に暮らしている花なんですもの。」

 

誕生日の花図鑑

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