チュウガクドコモダケ(Chugaku Docomodake)- 松江城マッシュルームマップ -
きのこを探していると目に入ってくるものは、もちろんではあるが、きのこだけにはとどまらない。
多くの人が普段はあまり気にも留めないであろうが、地上にはじつに様々なものが生えていたり、棲息していたり、落ちていたりするのである。
そしてやはり気になってしまうものが、地上に打ち捨てられた人間たちが排出する大量のゴミである。
街や住宅街はおろか、自然公園や林の中、果ては深山に至るまで、世界はゴミの山と化しつつある。道を歩いていてゴミを見かけない日など皆無であろう。しかも、そのゴミの多くは人間によって化学的に作られた物質であり、どんなに時間が経とうとも分解されて地球の肥やしとなるものではないし、それどころか地球の環境を大いに破壊する毒素となって蓄積されてゆくのである。
まあゴミ問題に関しては、また別の機会に譲ろう。
そんなわけで、きのこ探しの付属物として、時々おかしなものも見かけることがあり、そういったものの中でもごくごくきのこ寄りのものは、まあマッシュルームマップで扱うに価するであろうと考えるぼくとしては、ときどきお届けしてゆこうと思っている昨今である。
というわけで、今回のハンティングきのこは「チュウガクドコモタケ」である。
ドコモダケ科ドコモダケ属のきのこで、学名を「Chugaku Docomodake」、漢字で書くと「中学移動通信網交流茸」である。
ドコモダケ属のきのこの中では中型の個体で、他の種類との判別にはいくつかのポイントがある。まず柄の大部分を傘が深く覆うような形状をしていることが特徴であり、柄の表面を傷つけるとドコモダケホルモンと呼ばれる有臭で茶褐色の液体を流出する。また傷ついた部分は時間経過によって赤褐色に変化する。そしてもうひとつ、通常のきのこにはないドコモダケ属の特徴として傘に前頭部と後頭部の区別があり、傘に見られる斑点状の疣の色や配置が前頭部と後頭部において、また種別においての異なった規則性を持っている。ちなみにこのチュウガクドコモダケは、傘の後頭部の中央部分に青褐色の斑点状の疣が見られることを特徴としている。
食毒については不明であるが、主に観賞用として珍重されているきのことして有名であり、人工栽培の研究も盛んに行われているという。ただ現在人工栽培種として市場に出回っているそのほとんどは「チチドコモダケ」であり、今回発見した野生種のチュウガクドコモダケはきのこ通の間では珍品として取り扱われることが多い。
ドコモダケに関しては、以下に詳しいので参考にしていただきたい。
一時には観賞用のドコモダケをバッグや携帯電話に付着させてお出かけなどしてた紳士淑女を大いに見かけたのであるが、最近のドコモダケ事情には精通していないので定かではない。
日本人は熱しやすく冷めやすいとはよく言われるところである。
それだけとれば特に害のようには聞こえないわけであるが、冷めてしまったものをゴミとして何の躊躇もなく捨ててしまうことも、日本人の許しがたい一面として、ぼくは深刻に捉えている。
今回発見したチュウガクドコモダケも、一見すると野生種のようにとれるのだが、あるいはレアな人工栽培であるチュウガクドコモダケを、一時の快楽のために手に入れたが誰かが、流行り廃りで不要となってしまって、ゴミとして野に捨てたものかもしれない。
地球はけっしてゴミ箱ではない、悔い改めたまえ、多くの誰かよ。
月白貉