クリスマスの朝
「白酒さん、私はね、この道を選んだことには後悔など微塵もするつもりはなかった、最初はね。
いつだって最初はそうでしょう、最初から後悔するとわかっていて、その道を選んだりはしませんよ、後に悔いるわけですから。」
浦島さんはぼくの方には顔を向けず、ずっと車窓の外のどこかに目を向けながら、穏やかな笑顔を浮かべて話を進めた。
「私は元々は人間ですから、生粋の吸血鬼とは根本的に違うわけですよ。
体だけがそれになったところで、心がついていかないわけです。たとえばある日突然に剣術の達人になれたとしましょう、肉体的にということです。達人と呼ばれる人が持つ力と技が朝起きると自分にもたらされているのです。ずいぶんと魅力的じゃありませんか、剣の道では向かう所敵なしですよ。適当な例えではなくて申しわけありません、私は剣術がどんなものなのかは知りませんよ、でも例えば、なんの苦労もなく努力もなく一瞬にして大きな力を手に入れることが出来たらという話です。私はそれを求めたのです。サンタクロースからのプレゼントのように、ただ朝起きるともたらされている偉大なプレゼントを求めたのです。でもそのプレゼントは呪われていました。」
月白貉