ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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随筆

東京を離れようと思っている人への、何の役にも立たない短いメモ書き。

ぼくが地方に移住して数年、出会って話をした若者の中に、「東京にゆきたい!」と言っていた人が思いの外たくさんいた。 ぼくが東京に長く住んでいたと言うと、「なんでこんな何もないところに来たんですか!?」と真剣に驚かれたこともあった。 東京にゆき…

久松よ、永遠なれ。

ぼくは自分のぬか床を持っている。 数年前に東京に住んでいる頃にもぬか床を持っていて、確か二年ものくらいだったと記憶しているが、それはちょっとした管理不足でダメにしてしまった。 東京を離れた今、再度ぬか床を育てようと思い立ち、今度は完全に無農…

土用の丑の日のウナギは、美味いのか不味いのか。

時々ふらりと立ち寄る小さな古本屋がある。 「冬ごもりをする場所」という意味の名前をひっそりと掲げる古本屋で、古今東西の食に関する古本を扱っている。 つい先日、そこの女主人と話をしていて、ウナギの話になった。生き物としてのウナギではなく食べる…

iPhone4Sじゃ、ポケモンGETできないぜ!ぇいぇいぇいぇいぇいぇいぇ〜。

いまこの刹那、世の中はどうやら、兎にも角にも「ポケモンGO」らしい。 ポケモンの存在は、ずいぶん前から、たぶん登場した直後から知ってはいたが、いままでまったくポケモンに関わらずに生きてきたぼくは、いまさらゴーなのかジー・オーなのかさえも、よく…

図書館に行ったら、「ブタメン」のカップが深海仕様に圧縮されていた。

久しぶりに図書館に本でも読みにゆこうと思って、雨上がりの涼しげな風に吹かれながらフラリと出かける。 きょうは一日中曇りという天気予報だったが朝から雨。もう止んだと思っての外出だったのだが、まだ幽かに雨が降っている。しかし風が強いため空気は思…

蜘蛛の巣が教えてくれた、いくつかのこと

部屋の片隅に、一週間ほど前から蜘蛛の巣がはられている。 位置はベランダの窓際と床とのすれすれ。女郎蜘蛛のような類ではなく、地を這う蜘蛛の類だが、蜘蛛の種類には詳しくないから、そこには触れない。 部屋の掃除をしていて見つけたのだが、まあそれほ…

蝿(ハエ)の能力値が高すぎて恐怖を感じる件について

部屋が蒸し風呂のように暑いので窓を開け放っていたら、一匹の大きな蝿が入ってきて部屋を飛び回りだした。 最初はそのスピードが早すぎて、網膜剥離でも起こして、いもしない羽虫が飛ぶのが見えているのかと思っていたけれど、やはり虫が飛んでいた、蝿だ。…

『カクヨム』のエッセイ・実話・実用作品コンテストに、菌類エッセイを応募してみる。

現在、『カクヨム』では「エッセイ・実話・実用作品コンテスト」なるものを開催しているらしい。 ずいぶん前に少しだけ短い小説のようなものの投稿に使っていたカクヨムであるが、最近めっきり使わなくなっていたので、まあたまには活用しなくてはなあと思い…

豆苗は何日目に蘇るのか? - 第六日目『夢幻』 -

「よみがえる」という言葉は、黄泉から再び戻ってくる、帰ってくるという意味を表す。 一説によれば、黄泉の語源は「闇」だという。 つまりよみがえるとは、闇の中から光を求て帰ってくると捉えることも出来る。 この数日間、豆苗の姿を観察していて思ったこ…

豆苗は何日目に蘇るのか? - 第五日目『光明』 -

蘇った豆苗を食べるべきか否か。 この時点でそんな思いが頭をよぎった。 このまま放っておいたほうが、あるいは豆苗にとっては幸せなのではないだろうか、豆苗はそう望んでいるのではないだろうか。昨夜遅く、豆苗の水を取り替えてから蒲団に潜り込んで、ひ…

豆苗は何日目に蘇るのか? - 第四日目『不安』 -

家の中に日々変化するものがあると、ついつい目を、そして心をも奪われてしまう。 例えばそれは思いがけずもらってきた花だったり、部屋の片隅の観葉植物だったり、若芽を刈り取られた豆苗だったりする。 根から切り離されてしまった花は、花瓶に入れておい…

豆苗は何日目に蘇るのか? - 第三日目『楽園』 -

豆苗というのは、ここで改めて言うとエンドウの若菜である。 このエンドウの歴史は古く、古代オリエント地方や地中海地方で麦作農耕の発祥とともに栽培化された豆だと言われる。またその原種は近東地方に現在でも野生しているそうである。 日本には中国を経…

豆苗は何日目に蘇るのか? - 第二日目『兆候』 -

昨日、豆苗は毒成分を秘めているので生食は控えるべきだという記述を、インターネット上で発見したのだが、昨夜もぼくは豆苗の生食を試みてみた。 なぜならとあるウェブサイトでは、豆苗は生食でもまったく問題がないと語られていたからである。 ちなみに昨…

豆苗は何日目に蘇るのか? - 第一日目『希望』 -

昨日、食材の買い出しのため近所のスーパーマーケットをうろうろしていると、野菜売り場の片隅に半額のシールが貼られた「豆苗」が一袋置かれていた。 他の豆苗はすべて新品らしく、その一袋だけが取り残され、半額のレッテルを貼られてしまっていた。 半額…

食の安全とは、実際のところ、いったいなんだろうか。

この数年間、真剣に食の安全ということを考えてきたつもりではある。 まあ、あくまでつもりのレベルかも知れないが。 なんやかんやと本を読み漁ったり、その筋に通じる人に教えを請うたり、あるいは実際に自分で考えるところのより良い食事に変えてみたり、…

空はなぜ青いのか?

朝ごはんを食べていたら、目の前に置かれた電源の入っていないノートPCのモニター部分に、背後の窓の外が映っていた。 その空の青さが異常なほどに美しかったので、箸を止めて後ろをふりかえって窓の外の空を見上げると、大して美しくもなく、普通に白けたい…

謎の妖怪「サメ」を追え! 島根県隠岐郡都万村に伝わる動物怪異考 -「サメ」- 第四回

島根県隠岐郡都万村に伝わるサメという謎の妖怪の考察、第四回である。 ※妖怪としてのサメは、魚類やその他の語句としてのサメと区別して赤字で「サメ」と表記する。 回を増しているので、ここで改めてこの『謎の妖怪「サメ」を追え! 島根県隠岐郡都万村に…

桜の花の下から人間を取り去ると怖ろしい景色になりますので - 『桜の森の満開の下』(坂口安吾) -

昨日の夜から雨が降り出し、今朝起きてみても雨がシトリシトリと落ちている。 これではもう桜も雨に打たれて落ちてしまっているだろうなあと思いながら、朝ごはんを食べて茶を飲み、薄暗い窓の外を眺めてみる。 今朝は、白米にワカメの味噌汁、大根と人参の…

桜の樹の下には屍体が埋まっている。

桜の花の咲く頃になると、桜の樹に花が満ちる頃になると、そして桜の花弁が雨風に打たれて宙に舞い、あるいは地面にばら撒かれる頃になると、決まって短い文章のことを思い出す。 梶井基次郎の「桜の樹の下には」。 桜の樹の下には屍体が埋まっている。これ…

謎の妖怪「サメ」を追え! 島根県隠岐郡都万村に伝わる動物怪異考 -「サメ」- 第三回

島根県隠岐郡都万村に伝わるサメという謎の妖怪の考察、第三回である。 ※妖怪としてのサメは、魚類やその他の語句としてのサメと区別して赤字で「サメ」と表記する。 これまでの話は、まあ読まなくてもいいかもしれないが、暇と時間を持て余している方のため…

謎の妖怪「サメ」を追え! 島根県隠岐郡都万村に伝わる動物怪異考 -「サメ」- 第二回

前回から引き続き、島根県隠岐郡の都万村に伝わる「サメ」と呼ばれる謎の妖怪について考察してゆきたいと思う。 ※以降、妖怪としてのサメは魚類のサメと区別して赤字で「サメ」と表記する。 ちなみに前回をお読みでない方は、以下にその道程を標すので、お暇…

中国地方の言語体系から見る妖怪名称と重言 チゲ鍋的鰐鮫考 -「影鰐」(かげわに)-

中国地方の山陰において、特に石見地方や出雲地方では昔、鮫(サメ)の大型種である「鱶(フカ)」や「撞木鮫(シュモクザメ)」のことを「ワニ」と呼んだという。 千葉幹夫編纂の『全国妖怪事典』にも、『民俗語彙』からの出典として、石見国邇摩郡温泉津町…

みるみるうちに背が伸びる!至高の妖怪体験を追う -「次第高」(しだいだか)-

山は妖怪や怪異の宝庫である。 ぼくはかつて埼玉県の秩父市にある武甲山で妖怪に出会し、危うく遭難しかけたことがある。 その時に出会したのはおそらくは「餓鬼憑き」(がきつき)、西日本で言うところの「ヒダル神」(ひだるがみ)であったと確信している…

島根県の海で遊ぶ際に知っておきたい三つの怪異 -「濡れ女」(ぬれおんな)-

ぼくの故郷には海も山もない。 実家のある場所から遥か彼方、県境まで行けばかろうじて山々が連なるが、日常的な暮らしの中で望めるのは、青白い影のように浮かび上がる手も足も届かない山の姿だけだった。 まだ若かりし頃、山は見えるのだから自転車を使え…

カッコつけて、牛鬼岩で魚釣りをしている男がいたんですよ〜。な~にぃ~!?やっちまったな!! -「牛鬼」(うしおに、ぎゅうき)-

千葉幹夫編纂の『全国妖怪事典』を軸として、今回から勝手に始める備忘録的な妖怪話、さて、まずは現在のぼくに縁の深い土地、島根県にまつわる妖怪の話からはじめてゆこう。 島根県には、もちろん妖怪に関する伝承が数多く存在するが、先ず頭に思い浮かぶも…

本書は柳田國男以来の妖怪研究の伝統を踏まえた、本格的な、また正統的な最初の妖怪事典である。 -『全国妖怪事典』(講談社学術文庫)-

先日、我が親愛なる連れが、使用期限が間近に迫る何がしかの書籍ポイントが残っているから何か欲しい本はないかと言うので、いろいろと悩んだ挙句に一冊の本を選び出して、購入してもらった。 千葉幹夫の編による「全国妖怪辞典」(講談社学術文庫)なるもの…

絵を描くのは好きだけれど、きちんと絵が描けるほどの絵心が今の自分にはないかもしれないことについての短い考察。

ぼくは子どもの頃から絵を描くのが好きで、中学生くらいまでは漫画家になりたいと思っていた。 大学進学の際に、ほんとうは美術の方へ進みたかったんだけれど、直前になって試験にデッサンというものがあることを知り、美術の授業でヘンテコな自画像を描いた…

綺麗な梅は数多にあれど、見るなら路傍の密かな花が、兎にも角にも宜しかろう

数日前の買い物の帰り道、いつも通る道端の薄汚れた古い団地の片隅で、うっすらと色付いた梅の花がひっそり咲き始めていた。 桜もそうだが梅もそうで、ぼくはわざわざその為だけに時間をとって、例えば世間で名所だと言われているような場所まで花を愛でに出…

ぼくの東京物語

先日、初対面のある人と話をしていて、ぼくが東京にずっと住んでいたことを話すと、こんなことを言っていた。 「わたしもしばらく東京で暮らしていたことがあるんですよ、ずいぶん長く。そして、こっちに帰って来て思ったけれど、 東京に比べたら田舎ってや…

どこまでも

ぼくは東京に住んでいる頃、つらいことや、やりきれないことや、どうしていいのかわからないことがあると、あてもなく、ひたすら街を歩きました。 別にその行為に、気分の浄化作用があるとか、そんなことはどうでもよくて、ただ歩きたくなるんです。 なんで…