ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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呪われた銀貨が巻き起こす超常現象の謎とは!?アレックス・デ・ラ・イグレシア監督『30コインズ』

文部科学省の調べによれば、日本国民の約78%が、「ユダ」、と聞いてまずはじめに頭に浮かぶのが、武論尊原哲夫による199X年漫画『北斗の拳』だと答えているという。

 

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まあ確かに、ユダと聞くとぼくも、あのボーイ・ジョージ(Boy George)やら全盛期のジュリーこと沢田研二みたいなヴィジュアルをした南斗紅鶴拳の伝承者、南斗六聖拳「妖星」の男ユダが頭に浮かぶといえば浮かぶ。

 

ちなみに今のボーイ・ジョージはこんなです。

 

 

今のジュリーは・・・、ユダ感はなくなっているから触れない。

 

余談だが、TVアニメ版にはユダの影武者として田中邦衛みたいな顔のキャラクターが登場していたなあ・・・、まあどうでもよい情報であるが。

 

さて、けれどおそらく世界的に言えば、ユダと聞けばもちろんご存知、イエス・キリスト12使徒のひとり「イスカリオテのユダ」(Judas Iscariot)であろう。

 

イスカリオテのユダイスカリオテとはヘブライ語のイシュ・ケリヨト(איש קריות)に由来するとされており、「ケリヨトの人」という意味、ケリヨトというのはユダヤ地方の場所(正確な場所はわからないらしい)の名前なので、つまりケリヨト出身の人ユダということになる。なぜわざわざユダだけ出身地が名前にくっついているのかといえば、12使徒の内ユダだけ出身地が違っており、他の11人はすべてガリラヤ(הגליל)出身だからだそうである。あと、12人の中にもうひとりユダって名前の人がいるからかな、聖書に詳しくないのでそのへんはよくわからない。もうひとりのユダは「忘れられた聖人」と称されるタダイと呼ばれるユダ、あるいはユダ・タダイという人。

 

あっ、本題から話がそれてゆく匂いが漂ってきた、軌道修正をしなければいけない。

 

このイスカリオテのユダは裏切り者の代名詞としても知られているよね。師であるイエスユダヤ教の司祭に金で売ったのである。だからこのユダという言葉自体が“裏切り者”という意味で使われる場面も多い。そしてこの裏切りの中での有名な話が、ユダが受け取ったお金のこと、ユダはキリストを銀貨30枚あるいは30シェケルで売ったとされている。シェケルっていうのは古代通貨であり重さの単位、つまり当時銀貨一枚が1シェケルの重さだったってことなのかな。

 

はい、本題突入します、このイスカリオテのユダが受け取ったとされる30枚の銀貨をタイトルに掲げるドラマシリーズがHBOにより放映される。

 

アレックス・デ・ラ・イグレシア(Alex de la Iglesia)監督/脚本による『30コインズ』(30 Coins)である。

 

 

HBO Españaによる製作のようなので原題は『30 Monedas』、Monedasってのはもちろんスペイン語でコインって意味。

 

全8エピソードからなるこのドラマは、スペインのとある人里離れた町で起こり始める奇妙な現象と世界的な陰謀の物語で、その中心にあるのが前述の30枚のコインらしい。

 

監督ならびに脚本を手がけるのは、『ビースト 獣の日』(El Día de la bestia)、『気狂いピエロの決闘』(Balada triste de trompeta)、『スガラムルディの魔女』(Las brujas de Zugarramurdi)などで知られるスペイン出身のアレックス・デ・ラ・イグレシア

 

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出演者は...、

 

悪魔祓いでありボクサーであり元囚人というクセのある経歴を持つヴェルガラ神父役のエドゥアルド・フェルナンデス(Eduard Fernández)。彼はスティーブン・ソダーバーグ(Steven Soderbergh)監督の『チェ 39歳 別れの手紙』(Che Guerrila)や、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(Alejandro González Iñárritu)監督の『BIUTIFUL ビューティフル』(Biutiful)』などに出演している。

 

 

BIUTIFUL

BIUTIFUL

 

 

パコ市長役のミゲル・エンジェル・シルベストレ(Miguel Ángel Silvestre)、彼はラナ・ウォシャウスキー(Lana Wachowski)とリリー・ウォシャウスキー(Lilly Wachowski)のウォシャウスキー姉妹による制作のNETFLIXドラマ『センス8』(Sense8)や、クリス・ブランカトー(Chris Brancato)製作総指揮による同じくNETFLIXドラマの『ナルコス』(Narcos)などに出演している。カルロス・サルダーニャ(Carlos Saldanha)監督による『フェルディナンド』(Ferdinand)っていうCGアニメーションで声優をやってたりもする。

 

 

他にも、町の獣医をしているエレナ役のミーガン・モンタナー(Megan Montaner)、メルシェ役のマカレナ・ゴメス(Macarena Gómez)なんかが出演している。

 

 

 

このドラマの物語の中でどれほどユダの要素が出てくるのかはわからないが、少しだけ余談でユダの話に戻ろう。

 

ユダが吸血鬼に紐付けられることがあるのはご存知の方も多いだろう。映画で言えばパトリック・ルシエ(Patrick Lussier)監督による『ドラキュリア』(Dracula 2000)が有名である。ぼくはあの映画が割と好きで何度か鑑賞した気がする。ドラキュラ役がジェラルド・バトラー(Gerard James Butler)で、ヴァン・ヘルシング役がクリストファー・プラマー(Arthur Christopher Orme Plummer)、なかなかよい。

 

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ユダが吸血鬼になったという話について、バルカン諸島あたりには「ユダの子ら」という吸血鬼の伝承があるらしく、それはイスカリオテのユダの子孫だと言われる赤毛の吸血鬼で、たった一度噛みついたりキスをするだけで犠牲者の血を吸い取るという。さらには、殺害後にユダがキリストを裏切った際に支払われた銀貨30枚を表す“XXX”という印を傷跡として残すらしい。“XXX”・・・、シティーハンター的なことか・・・。そして“子ら”ということは、単体ではなく吸血鬼集団的な組織を形成しているのだろうか?また前述のイスカリオテという部分だが、ギリシア語の「シカリオス」に由来するとも言われているらしい。シカリオスとは「刃を持つ者」、つまり暗殺者という意味である。吸血鬼とか暗殺者とか、なんだか謎めいたユダなのである。

 

とまあそんなこんなで、本作品のトレーラーが公開されているので観てみたのだけれど、なかなかおもしろそうである。最後にトレーラー映像を取り上げておこう。

 

本作品の放送は2020年11月29日から、日本ではいつ頃になるのだろうか、ちょっと楽しみである。

 

 

 

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