ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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本当はコワい人魚伝説ドラマシリーズ『SIREN』、アリエルでもポニョでもなく“リン”という名のヒロインだよ。

人魚と聞くと、あなたはいったい何を思い浮かべるだろうか。

 

例えばデンマーク童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセン(Hans Christian Andersen)による『人魚姫』(Den lille Havfrue)という有名な物語がある。

 

人魚の姫―アンデルセン童話集 1 (新潮文庫)

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この話は簡潔に言うと、「あたし、あの人に胸キュンかも。」という、人間の王子に恋心を抱いた半人半魚のお嬢の物語である。その詳しい内容をご存じの方は多いと思うが、決してハッピーエンドな恋物語ではない。またこの物語をベースとした派生作品は数多く存在しており、代表的なものだとディズニーのアニメーション映画『リトル・マーメイド』(The Little Mermaid)とか、あるいは宮﨑駿監督の『崖の上のポニョ』も完全なる“人魚姫”物語である。あっ、もし『崖の上のポニョ』のBlu-ray買うなら輸入盤の方が安くてオススメだよ。

 

関連記事スタジオジブリ作品の北米版Blu-rayは、本国だと1500円くらいだしジャケットもかっこいい。

 

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崖の上のポニョ』に関しては、人間の血を吸ったりハムを好んだり、後半部分の変形型ポニョに至っては人魚姫というよりは不気味な半魚人もしくは蛙人間であり、ある意味ホラー映画ばりに怖ろしい描写になっている。ぼくは本作品を劇場で鑑賞したが、恐怖のあまり泣き喚いて途中退場する子供が続出していた。基本的に宮﨑駿のアニメーションは、どう考えても子供向けの物語ではないし、いずれの作品においても怖ろしい表現が多数存在する。『となりのトトロ』などはその極みである。ちなみに『となりのトトロ』もBlu-ray買うなら輸入盤の方が絶対安くてオススメ。

 

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崖の上のポニョ』に話を戻すと、あれはおそらく諸星大二郎による漫画『栞と紙魚子』シリーズに大いに影響を受けた作品でもあることは間違いなく、同漫画の中には、ポニョの父親であるフジモト、ポニョの母あるいはフジモトの妻であるグランマンマーレ、そして御大ポニョのモデルとなっているであろうキャラクターが登場する。

 

まずポニョのモデルはどう考えても“クトルーちゃん”であり、そしてグランマンマーレは“クトルーちゃんのお母さん”あるいは“段先生の奥さん”だというのは火を見るよりも明らかである。ちなみにクトルーちゃんのお母さんはかなりのレギュラーメンバーであるにも関わらず固有の名前は物語の中では登場しない。そして流れからいってフジモトは、ホラー作家の“段一知”、この“だんいっち”という名前はハワード・フィリップス・ラヴクラフト(Howard Phillips Lovecraft)の『ダンウィッチの怪』(The Dunwich Horror)から採られていることは言うまでもない。もしまだ『栞と紙魚子』シリーズを読んだことがないという方、衝撃的におもしろいので、ぜひにもオススメしますよ。

 

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さて話を人魚に戻そう。

 

個人的には人魚と聞くと、人魚姫ではなく伝説の生き物としての人魚の存在がまず頭に浮かぶ。世界各地にその伝承が残る水中生物の話である。

 

地域によってその形状や性質は大きく異なるが、西洋における人魚は前述の人魚姫(ポニョじゃないよ)のように上半身が人、そして下半身が魚という姿をしている。その中でも特に若い女性の人魚はマーメイド(mermaid)、また男性の場合にはマーマン(merman)と呼ばれており、今日における半人半魚のヴィジュアルについては、イングランドの民話が起源だと言われている。そしてイングランドの民話では、人魚が姿を見せるのは嵐や災難の前兆だとされ恐れられていたそうである。また女性の人魚は男を水に引きずり込んで溺れさせる怖ろしい存在だと言われるが、捕まえると3つの願いを叶えてくれるという話もあるらしい。イングランド南西部のコーンウォールには、陸に取り残された人魚を海に戻してあげたお礼に、3つの特殊能力を授けてもらった男の話が残っている。その能力とは、魔女の呪文を解く力、病気を咒いで治す力、盗まれたものを見つけ出す力だそうである。

 

女性型の人魚伝説には様々あり、例えばライン川ローレライ(Loreley)だとか、ギリシア神話のセイレーン(Seirēn)などもこの類のものである。セイレーンは古くは半人半魚ではなく半人半鳥だとされているが、後に魚バージョンへと派生したものがある。いずれにしても人間に危害を加える不吉の象徴として存在している。

 

また女性型の人魚(マーメイド)が往々にして美しい姿をしていることに対して、男性型の人魚(マーマン)は概して醜いと言われているが、バルト海および北海で捕らえられた興味深い半魚人の話が残っている。

 

ドイツの作家クリスティアン・ヨハン・ハインリヒ・ハイネ(Christian Johann Heinrich Heine)の『精霊物語』には、「1531年、エルパッハ近くの北海でひとりの半魚人(メーアマン)が捕らえられた。その男はローマ教会の司教のような姿をしていた。」とか、「1433年、ポーランド付近のバルト海でひとりの半魚人(メーアマン)が見つかったが、その男は司教にたいへん似ていた。」などという記述がある。これはいわゆる“海の司教”と呼ばれるタイプの人魚伝説であり非常に興味深い。

 

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西洋以外にもこの人魚伝説は多数存在するのだが、話が本題から遠ざかってゆくばかりなので、本題である最新の人魚作品に話を移そう。

 

2018年の夏に放送開始が予定されているという『Siren』(サイレン)というTVシリーズの予告編が公開されたので、話題に取り上げてみたい。

 

Siren

image source : Siren | Official Trailer | Freeform

 

ちなみに当初のタイトルは『The Deep』というものだったらしいが、『Siren』の方が神秘的でよいね。

 

本作品は、人魚伝承が残るブリストル・コーヴという沿岸の町を舞台とした、ちょっと恐ろしい部類のマーメイド物語のようである。タイトルになっている『Siren』(サイレン)とは、警笛あるいは警報として大きい音を発する例の装置のこと、もしくはその装置が発する音のことであるが、この名称の語源とされているのは、前述にもあるギリシア神話に登場する半人半鳥から半人半魚へと派生したセイレーンだと言われている。

 

つまり本作品で描かれる人魚は、海にある岩礁に艶めいた身を横たえて、美しい歌声で船乗りを惑わし、船を難破させた後に人を喰い殺すと言い伝わる種類の人魚なのである。

 

Siren

image source : Siren | Official Trailer | Freeform

 

そして本作品に登場する人魚はリン(Ryn)という名前だそうであり、『ゲーム・オブ・スローンズ』(Game of Thrones)などで知られるエライン・パウエル(Eline Powell)がその役を演じている。

 

というわけで最後に、公開されたばかりの予告編をご覧いただきたい。

 

 

 

 

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