かぶってはいけないマスクの恐怖、ジョン・ウィリアム・ロス監督『マスク・メーカー(原題:Mask Maker)』
ずいぶん前のことだが、まだ御大水木しげるがこの世にいる頃、奥様の布枝さんが、水木しげるが所蔵している“肉の付いた仮面”の話を何かのテレビ番組でしていたような記憶がある。
水木しげるは日本および世界の様々な民俗や言い伝えのような無形物だけではなく、民芸品などの有形物も多く蒐集していたそうだが、その蒐集品の中に、アフリカかどこかで手に入れてきた儀式用の仮面があり、その仮面の裏側、つまりかぶる際に皮膚に密着する方の面に、おそらくは人間のものであろう肉が付着している、という話だったと思う。
「こんなものばかりあるからゴキブリが湧いちゃってね。」と布枝さんはお気軽な感じで話していたように記憶しているが、ぼくとしては「肉が付着している仮面」という響きに大いに心奪われた。
よく昔話や言い伝えなどで、かぶった仮面が取れなくなってしまって顔と一体化してしまい、終いには仮面が自分の肉体の一部となってしまう、というものがある。
水木しげるが持っていたというそのアフリカの肉付き仮面の詳細はわからないが、現実的な話で考えると、トビー・フーパー(Tobe Hooper)監督の『悪魔のいけにえ』(The Texas Chain Saw Massacre)でレザーフェイスことババ・ソーヤーがかぶっているような趣のものなのかもしれない。
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敵対する部族の戦士の首を切り取ってきて、その皮や肉なんかで仮面を作る云々という話は、ちょっと昔のアフリカなら当然ありそうなものである。
ちなみにこの話を書いていて思い出したが、水木しげるはアフリカのある部族のもとを訪れた際に、儀式の際に演奏される音楽に心奪われ、「危険だから録音してはだめだ!」と言われたその音楽をこっそり録音してきて、日本に帰ってきて聞いたという話を何かの本に書いていた。いざテープを再生するとおかしな気分になってきて、再生機から小さな白い顔のようなものが無数に湧き出てきたというようなことを書いていた気がする。さすが御大である。
そういえば、ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones)の元メンバーであるブライアン・ジョーンズ(Brian Jones)も、水木しげる同様のアフリカの部族の儀礼音楽を作曲の参考にするために録音してきて、実はそれが彼の死に関係があるという話をどこかで聞いたことがある。彼は1969年にプールで溺死しているが、その時に聞いていたのだが録音した儀礼音楽だったとかなんとか・・・。
いつものように話が明々後日の方向に走り出したので本題に入りたい。
今回取り上げるのは、前述の仮面の話に関わりのあるホラーな短編作品、ジョン・ウィリアム・ロス(John William Ross)監督による『マスク・メーカー(原題:Mask Maker)』である。
image source: https://www.youtube.com/watch?v=H7Ke9Aoqy58
短編のため内容に関しては触れないが、本作品に登場するマスク職人役のレイ・トリケット(Ray Trickitt)は、ピーター・ジャクソン(Sir Peter Robert Jackson)監督の『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』(The Lord of the Rings: The Two Towers)でローハンのべレグ役を演じている人物である、という本作品とはあまり関係のない情報を付け加えておく。
というわけで、興味のある方はぜひご覧いただきたいが、一点だけ注意点を挙げておく。本作品の動画には海外の短編には珍しく日本語字幕が用意されているが、字幕をオンにしてはいけない。字幕なしで鑑賞することを強くおススメする。その理由は、表示できる日本語字幕は自動翻訳によるもので、まったく意味をなしていないどころか、作品の雰囲気をぶち壊すような素っ頓狂な日本語だからである。
ぼくは別な場所で公開されている動画で初鑑賞をしたので、気の狂った雰囲気の日本語字幕に脅かされることはなかったのが幸いである。
二度目以降に鑑賞する際には、おかしな日本語字幕を堪能していただきたい。
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