ぼくと、むじなと、ラフカディオ。

かつて小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーン (Patrick Lafcadio Hearn)が、自らの感覚で古き日本を歩きまわって独自の感性で見聞を広めたように、遠く故郷を離れてあてどなき夢想の旅を続けるぼくが、むじなと、そしてラフカディオと一緒に、見たり聞いたり匂ったり触ったりした、ぼくと、むじなと、ラフカディオの見聞録です。

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氷人間とデヴィッドが見つめる、ワインと映画とミートボール日記。

ミートボールのトマトソース煮込みを作るのがとても好きである。

 

ぼくにとってそれは、心を癒やすための神聖な儀式にも似ていると言える。

 

ここしばらく心が荒れていて、時に混乱を極めていて、挙げ句の果てには肉体的に心臓あたりが痛いこともある。

 

そろそろ肉体が朽ち果ててもいいなあと、ふとした瞬間に思いがちな日々が続いている。

 

だから今日は、そんないろいろな苦悩や迷いを可能な限り払拭したいと願いつつ、ミートボールのトマトソース煮込みを仕込んだ。

 

ミートボールは牛豚の合い挽きで、カチカチになった食べのこしのバゲットをミルクと混ぜて柔らかくしてたっぷり加えている。ミンチはビーフだけとかポークだけとか、時にはチキンで作ることもある。個人的にはビーフが好きだが、ビーフだけなら肉オンリーで作りたいので、食べ残ったバゲットを消費するために合挽きにしてみた。フワフワのハンバーグ風想定である。

 

サラダは三種、ニンジンと卵のサラダ、柚子と大根のサラダと梅干しと大根のサラダのツーカラーのダイコンサラダ。ここしばらく葉野菜や緑の野菜が高騰しているので、野菜はありものの根菜メイン。白とオレンジと黄色とピンクの彩りである。

 

ミートボールに玄米を添えて、サラダと織り交ぜつつもぐもぐと食べて、安ワインをゴクゴク飲む。好きな映画をBGM代わりに流す。ぼくにとって無くてはならない時間。

 

強い酒を浴びるほど飲んだり、マリファナやドラッグをやったりはしないが、もし食事とワインと映画が一日の終わりになければ、ぼくは禁断症状を起こして発狂して、体中に不気味な甲虫が這い回っている幻覚を見て、絶叫して死ぬに違いない。

 

今週末に観ようと思っている映画は四本、映画館で観損ねたが満を持して、リドリー・スコット(Sir Ridley Scott)の『エイリアン:コヴェナント』(Alien: Covenant)、他にも、コーム・マッカーシー(Colm McCarthy)の『ディストピア パンドラの少女』(The Girl with All the Gifts)、ロバート・エガース(Robert Eggers)の『ウィッチ』(The Witch)、ルシール・アザリロヴィック(Lucile Hadžihalilović)の『エヴォリューション』(Évolution)、どれも楽しみにしていた作品である。

 

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もうそろそろ三月だと言うのに、未だに部屋の中で吐く息が濃厚に白い。

 

ぼくの部屋を訪れた知人が、「冷蔵庫を開けても一切冷たいと感じないから、この部屋はおそらく冷蔵庫と同じ温度なんじゃないのか?」とつぶやいていた。

 

天気予報で伝えられている気温と、部屋の中の温度の隔たりがあまりにも大きすぎる。やはりぼくの部屋にはなにか隠された異常な秘密があるに違いない。安部公房の『箱男』か、あるいは江戸川乱歩の『人間椅子』ばりに、ぼくの部屋の地下には“氷人間”でもいて、夜な夜な秘密の階段を上がって床の下にへばりついてぼくの生活音を感じながら氷結オナニーでもしているのではないだろうか。

 

さて、今日の夕飯時のBGMは予習も兼ねて、『プロメテウス』(Prometheus)でも流そうか。

 

The trick is not minding that it hurts.

 

 

 

 

月白貉